イベントレポート

CEATEC JAPAN 2015レポート【センサー/部品/その他編】

~かつて光学メディアを手掛けていたメーカーの今

BOEの世界初の10Kディスプレイ

 既報の通り、CEATEC JAPAN 2015が現在開催中だ。会場では特に、中国のBOEの10K液晶ディスプレイと、世界初の洗濯物を自動でたたんでくれる「laundroid(ランドロイド)」に注目が集まったのだが、これらの詳細は僚誌を見てもらうとして、ここではIoT関連や、それの下支えとなっている部品について、写真を中心にかいつまんで紹介して行こう。

 IoTは、やはり低消費電力で通信できるBluetooth Smartが外せない。太陽誘電、ROHM、村田製作所、アルプス電気など、大手部品メーカーはこぞってBluetoothモジュールを用意している。つまり、それだけ活発な市場であるということだ。

太陽誘電の無線モジュール。BluetoothのほかにWi-Fiも用意している
ROHMのBluetoothモジュールや各種センサーが入ったデバイスの例
プロセッサ、圧力センサー、磁気センサー、加速度センサー、Bluetoothモジュールなどが、直径33mmのサイズに収まっている
村田製作所のセンサーキットの例。光による心拍計、気圧センサー、温度センサーを集約。特に気圧センサーの精度は高く、腕を上げた程度だけでも差異を検出する
アルプス電気のBluetooth Smartモジュール。アンテナ付きで、4.7mm四方、高さ2mmとコンパクトにまとまっている

 ちなみに太陽誘電は6月に光記録メディア事業からの撤退を発表したのだが、既に同社の事業の主力は電子部品に移行している。しかし光記録メディアで培ったノウハウを駆使した部品が存在するのが特徴だ。

 例えば可視光を用いた近接通信モジュールは、双方向全二重で100Mbpsの通信が可能。光を用いた通信は、法制上の制限が少なく、なおかつ指向性があるため秘匿性が高い。これを無接点給電と組み合わせることで、ケーブルのねじれに制限されず、無制限回転の監視カメラやロボットアームが実現できる。

 一方で被測定物の変位検出を簡便かつ低コストで実現する「光変位センサー」も、新たに±5nmという非常に高い精度で検出できるモデルを用意した。難しい言葉を並べたが、簡単に言うと被測定物の変位を検出するセンサーである。センサーは2つのブロックからなり、1つは発光素子、もう1つは受光素子となっている。この2つのブロックで、光学素子を挟む。発光ブロックが変位すると、その移動量に合わせて受光ブロックに入る光の量が変化する。その明暗を距離に置き換えて数値化を行なうのが、光変位センサーである。

 例えば重量計では、天板に物を載せると、天板に歪みが生じる。太陽誘電のセンサーは、1,000μmの検出レンジを持つので、1μmを1g分の重量に置き換えて換算(というより、1gで1μm歪むよう天板を設計)し、精度が±0.1μmであった場合、0.1g単位での計測が可能な計算だ。今回は±5nmの精度を実現できたので、これに当てはめると0.005g単位での計量が可能、となるわけだ。

 もっとも、いくらIoTが来ると言っても、コンシューマにとってこれだけの精度が必要になることはまず考えられない。どちらかと言えば、手術ロボットのアームのワイヤー移動量や張力を測定し、精密な位置決めを行なうと言った、精密さを求められる医療分野で応用されていくだろう。

太陽誘電の可視光を用いた通信。無接点給電と組み合わせれば、無制限回転を行ないつつデータ転送できる
可視光を用いた通信を採用した監視カメラの例
±5nmを検出する超高精度光変位センサー
光変位センサーを用いた重量測定の例

 光メディア繋がりで言えば、TSST(東芝サムスンストレージテクノロジー)も出展をしていた。ご存知のように近年は光メディア市場が大幅にシュリンクしているので、同社の主力は既に光学ドライブではなく、スマートフォンアクセサリに移りつつある。と言ってもこれらはOEM生産に委託して、TSSTのブランドを冠しているだけで“本業”ではない。

 では“本業”は何かと言うと、これまた光学ドライブの技術で培った光学技術を駆使した超小型のプロジェクタモジュールである。CEATECの会場では、このモジュールを内蔵した超小型Androidプロジェクタのプロトタイプを展示していた。なお、このプロトタイプは世界で2つしかないという。

 純粋な超小型プロジェクタならば他社でもあるのだが、本プロトタイプはAndroid内蔵のため、Google Playのアプリなどが利用可能なほか、本体上部にタッチパッドを備えており、マウスポインタで操作できる。また別途マウスを繋げての操作も可能だ。スピーカーやMiracast機能、バッテリも内蔵しており、まさに1台でなんでもできるといった感じだ。同様の製品はソフトバンクの「モバイルシアター」が挙げられるが、モバイルシアターからディスプレイやLTE通信機能を省いたものだと思えば良いだろう。

 プロジェクタモジュールは、200ルーメンという明るさを実現している。このためデモではわざとカーテンを開けた状態でデモを行なっていた。解像度はHDクラスだとしているが、「現在フルHDモデルも準備している」という。

TSSTの超小型プロジェクタモジュール
これを組み込んだAndroidプロジェクタのデモ
プロジェクタの上部にはタッチパッドを装備しており、これによる操作も可能だ
TSSTブランドのモバイルバッテリ。ボタンを押すと、残量が1%刻みで、7セグメントLEDによって表示される
TSSTブランドのBluetoothキーボード。世界最薄を実現しているという

 そのほか会場ではいくつか面白い展示があったので、写真でまとめて紹介しよう。

CerevoのBluetooth/各種センサー入りスノーボード。体重移動などのデータをロギングし、それを可視化することで、スキル向上に役立てられる。今度新たにアクションカムもリリースする予定で、スノーボードの可視化データをオーバーレイで連動させる。これによりより詳しい分析が可能になる
また、骨伝導のBluetoothヘッドセットも現在開発中。スポーツ中耳が塞がれ、周囲の音が聞こえなくなるとさまざまな危険性が増す。骨伝導方式を採用することでその問題を回避する
こちらはソニーのBluetoothスピーカー付き電球
一般的な電球ソケットに装着でき、そこから給電を行なう。Bluetoothスピーカーとして動作するほか、光量もスマートフォンから専用アプリを介して調節できる
太陽誘電の超薄型/超小型コンデンサ。息で簡単に吹っ飛んでしまう小ささ。写真に写っているのは筆者の小指である
アルプス電気のスティックポインタ。ノートPCに搭載されているので、なじみ深いだろう
アルプス電気の超小型/薄型microSDカードスロット
こちらはNano SIM用スロット
さまざまな独自技術によって薄型/小型化を実現している
これだけ小さいにもかかわらず、複雑な機構を盛り込んでいる
富士通のセンサー入りシューズ
シューズに内蔵されているセンサー群
シューズを履いている間、軌跡などのデータをトレースし、それを可視化できる
富士通も指輪型のウェアラブルデバイスを展示していた
指輪は現時点では3Dプリンタで印刷されたもののようだ
GIGABYTEのマザーボードではケミコンのコンデンサを採用している
Super Flowerの電源もケミコン製コンデンサを採用しているようだ
こちらはルビコンのブースにて。コンデンサの違いによって音の違いを体験できるデモ。音は個人それぞれ好みがあるのだが、新開発のPMLCAPは従来のMLCCと比較して特性が良くなっているという
こちらはニチコンのブースにて。ASUSやASRockのハイエンドマザーボードで採用実績があるという
ちなみにASUSではガンメタル色、ASRockのマザーボードは金色のコンデンサを採用しているのだが……
実はピンクや青、緑などの色も再現可能
つまりFPCAPはコーティングによって自由に色が選べる、というわけだ
名古屋工業大学 星研究室が開発した、超音波による空中感覚インターフェイス。超音波を集束させることで、空中の何もないところに感触を生み出す
こちらはH2LがKickstarterで展開しているプロジェクト。腕にセンサーをまくり、筋変位センサーによって指の動きを検出し、3軸ジャイロスコープと3軸加速度センサーによって腕の位置を検出する。一方で筋電刺激およびバイブレーションによるフィードバックを与えるという、双方向のコントローラである
民間による月面調査機を開発している「HAKUTO」。プロジェクトの詳細についてはこちらの記事を参照されたい
Arduinoボードを内蔵でき、それによってプログラミングできるロボットのキット「RAPIRO」
Arduinoの代わりにRaspberry Piを載せて、それによる制御を行なうこともできる
シミュレータを多く手掛けるソフトウェア会社フォーラムエイトのブース。Oculus Riftによるドライブシミュレータを体験できる
圧力センサーを内蔵しており、ユーザーが触ることで反応する抱き枕「痛すぽ」。Bluetoothでスマートフォンと連携しており、枕のセンサーがある部分を触ると、専用アプリ側でキャラクターが反応する。枕内部にはスマートフォンを収納するスペースもあり、それによってあたかもキャラクターが声を発しているように見せかけることもできる。センサーは3つで、標準ではキャラクターのおでこと胸(左右2つ)に内蔵されている。将来的にはAPIを公開し、ユーザーが好きなキャラクターをかぶせて好きなところにセンサーを入れる……といったことも可能になる

(劉 尭)