イベントレポート

iOSデバイス編は、アメリカ発の王様のアイディア

会期:3月27日~3月29日(現地時間)

会場:米国カリフォルニア州サンフランシスコ Moscone Center North

 2014年のMacworld | iWorld展示会場レポートはiPhoneをはじめとするiOSデバイス向けの製品で締めくくる。昨年(2013年)末やInternationl CESのタイミングで発表された製品もあるので、必ずしもMacworld | iWorldが初出というわけではないが、展示会場の雰囲気の1つとして、眺めていただきたい。

 iOSデバイス関連は、ありとあらゆるグッズが雨後の竹の子のごとく出てくる印象がある。もちろん最初はスタンダードなものが中心だったが、すでにアイデアは一回りしたところで、昨今はいわゆる「王様のアイディア」や、古き秋葉原デパートのアイデアグッズ対面販売のような雰囲気も漂いつつある。今どきの読者の皆さんに王様のアイディアという言葉にピンときてもらえるか自信がないが、王様のアイディアを経営していた会社は、今では三城ホールディングスの子会社になっているそうだ。Mobile World Congressのレポートでは「雰囲気メガネ」を紹介したが、こちらもパリミキで三城ホールディングスの子会社。なるほど、世の中はわりとうまくできているものである。

 International CESでも出展されていたが、iPhone 5/5s用のケースにボールペンをはじめとして、ドライバーやハサミ、ピンセット、爪やすり、爪楊枝などを収納する「IN1 Case」。米国で44.95ドルで販売されているほか、日本でもすでに購入できる。意外なポイントは、ハサミを含んではいるもののTSA(アメリカ国土安全保障省の運輸保安庁)の規準を満たした製品だということ。つまりこのケースは航空機内に手荷物として持ち込むことがルール上では可能となっている。とは言え、保安検査の現場にまでそのことが徹底されているわけでもなく、場合によっては持ち込みを拒否されて没収となることもあり得るので、くれぐれも自己責任で利用していただきたい。

「IN1 Case」。キックスタンドも含めると、全部で9つの機能をiPhone 5/5s用のケースに収納する。写真のスケルトンモデルのほか白か黒のケース色と、ツールのグリップになる部分を6色から選択してカスタマイズできる

 速報でも紹介した「OCDock」と「OCDock Mini」はKickstarterから出た製品の1つ。フレキシブルタイプの薄いケーブルを利用することで、ケーブルをiMacのスタンド下から通してLightningコネクタ対応のドックをiMacと一体化したデザインにする仕組み。価格はいずれも79.99ドルで、会場価格としては59.99ドルで販売されていた。Miniのほうは左右の縁がないため、iPad miniもドックインさせることができるそうだが、それだとiMacの画面に重なって邪魔でしようがないと思うのは無粋な突っ込みだろうか。

「OCDock」と「OCDock Mini」。Kickstarter発のApple向け製品が一覧されている「bitemyapple.co」によると、OCDockが集めた出資者は1,540件で、総額は107,000ドル超

 やはりKickstarter発の製品でiPhoneのスタンドにできるのが「Pocket Tripod」。クレジットカードサイズで、厚みはプラスチックカード2枚分ほど。展開するとスタンドになるほか、角度の調整が可能。標準では裸のiPhoneに合わせた溝になっているが、この部分はオプションで使っているケースの幅に合わせたパーツへと変更することができる。そのための計測ツールも付属して、販売価格は26.99ドル。

「Pocket Tripod」。中央を軸にして180度回すことで点対称のパーツが面対称の状態に変わる。傾きをつける部分はスライドして任意の角度にiPhone 5/5sを固定できる

 銃のグリップを模した形状のシャッター機能付きiPhoneケース「GRIP&SHOOT」は、iPhoneとはBluetoothで接続して、リモートでカメラのシャッターが切れる。専用のappを利用することで、親指部分にある「+」と「-」のボタンでデジタルズームを動かし、人差し指は文字通りのトリガーでシャッターをきる仕組みだ。

 動画撮影ではトリガーを引いている間だけ撮影するといった使い方ができる。試用したところ、手持ち撮影であれば両手持ちよりも安定するイメージ。前述のとおり、Bluetoothでの接続なので、GRIP&SHOOTとiPhone自体は離れていても構わない。記念写真の際などは、リモコンシャッターとしても機能する。グリップの下部には分離して使う際にiPhoneの台となるパーツも付属している。

「GRIP&SHOOT」。価格は99.95ドルで、iPhone 4/4s用とiPhone 5/5s用のケースがともに付属する。開発元はAPIを公開することで、トリガーとして使用できる対応アプリケーションを増やしていきたい考え
見たまま、全部で8個のUSB充電ポートを備える充電器。合計で最大16.8A、84Wのアダプターとなる。充電するデバイスを認識して、適切な電流を流す仕組みも搭載している。Macworld | iWorldの期間中は公式サイトで55ドルで販売していた

 「sDock Air」は、iPad Airサイズで充電機能、ロック機能、90度回転機能を備えるウォールマウントキット。Lightning端子は一体化しており、MFi認証も取得している。単なるウォールマウントとしてだけではなく、デジタルサイネージをはじめとする書き換えの必要な案内板などに応用していきたい考え。

 iPad Airをはずした時にも、パネルで演出ができる。Lightning端子はバネ式のカバーの影に隠れており、iPadでカバーを押し込むことで接続できる仕掛け。第4世代iPadとiPad Airに適した「sDock Air」と、iPad 2および第3世代iPadに対応する「sDock Pro」がある。サイズ的にはこれらの機種が対応製品だが、充電機能として利用するならLightningコネクタ、30ピンコネクタ対応の各機種で利用ができる。充電機能の利用には壁面の工事を伴う。

「sDock Air」。デジタルサイネージやインタラクティブな案内板としての役割をiPadにもたせるウォールマウントキット。iPadをはずした状態でも、演出が可能な工夫が加えられている
ArcSoftによるWebカメラソリューション「Closeli」。広角のWebカメラで連続してビデオ撮影を続けてクラウドに映像を保存する。サブスクリプションモデルで、契約すると24時間前までの映像が常に記録され続け、さまざまなデバイスからプレイバックが行なえるとしている。解像度は720p。オプションで保存するシーンを増やしたり、顔認識による通知などを行なうこともできるという。すでに日本語サイトも用意されている
さまざまな製品が繰り返し登場するiPad用のグリップ。今度の製品はコンパクトながら、なかなかしっかりと固定される。固定したままで360度の回転が可能

 スマートフォンと連携する機能を多数備えた「Glowdeck」。Qiによるワイヤレス充電、Bluetoothスピーカー&ハンズフリーマイク、Wi-Fiストリーミング機能によりスマートフォンへのSMS着信やメール着信、RSSなどをGlowdeck側に表示させることができる。底面に付いているLEDライトの設定で通知の種類に応じたカラーで点灯させることもできるという。

 Wi-Fiストリーミングによって通知できるのは、電話、SMS、メールの着信、天気、ニュース、Twitter、Facebookなど。ほかにInstagramやLinkedinへの対応も予定している。これもまたKickstarterのプロジェクトで、製品の入手に必要な出資額は200ドルから。製品出荷は2014年8月を予定している。

展示されているウッドタイプは250ドルの出資で入手できる可能性がある(プロジェクト段階のKickstarter発製品はあくまで出資なので、確実とは言えない)。200ドルの出資では本体がアクリル製になる。目標額は3万ドルだが、現時点で倍にあたる約6万ドルを集めている
円筒形のBluetoothスピーカー「HiddenRadio2」。3カ月後に出荷を予定しているとのことだが、アクリルケースの中でMagicLiftの昇降デモだけというやや残念な状態。とりあえず動画でカバーが開く様子を見て欲しい

 Bluetoothスピーカーの「HiddenRadio2」は、単体でもBluetoothスピーカーとして機能するほか、2基を運用することでステレオ再生にも自動的に対応する。NFCによるスマートフォンとのペアリングも可能。Apt-Xコーデックにも対応している。ユニークなのはMagicLiftと名付けられた稼働時のカバー昇降機能。使わないときにはカバーが閉じているが、使用時はカバーがせりあがる仕組み。バッテリ駆動でも動作し、最大連続稼働時間は25時間とのこと。2014年6月の出荷を予定しており、現在は179ドルで予約を受け付けている。2台セットで購入する場合の価格は1台あたり129ドル。

【動画】HiddenRadio2の動き
徐々に注目が高まりつつあるiBeacon。今回のMacworld | iWorldでも公式アプリがPassbookと連携していて、会場に近づくことで通知を送ってくる仕様になっている。事前に送られてくる登録メールから認証すると、配布される入場パスと同じQRコードがPassbookからも表示できる。ただし周知が足りないのか、なかなか使っている人は見かけない。iBeacon自体もまだ普及前ということで会場では開発キットなども紹介されている。開発キットは3個のアダプタと、対応アプリケーションの開発に必要な数カ月のトレーニングを含めた内容とのこと
AirDisplay2。MacとiOSデバイスの双方にアプリケーションを導入することで、iOSデバイスをWi-Fi接続の外部ディスプレイとして利用できる。Wi-Fi接続なので、フレームレートは低いものの、動かないもの、動きの少ないものの表示であれば簡易的なマルチディスプレイ環境として利用できる
iPhoneのカメラで抵抗を映すことで、抵抗値を表示する「ResistorVision」。すでに読み方を忘れつつある元電子工作少年や面倒くさがりの現電子工作者には便利なアプリ。現在はβテストを行なっている。メールアドレスを登録すると、正式版のリリースにあわせて案内メールを送付してくれるとのこと
単純な仕組みながら秀逸なアイデアだった「MirrorCase」。そのケースをより便利に使うことができるアプリがリリースされた

 王様のアイディアにおけるヒット作と言えば、ごろ寝メガネ。プリズムを使ったメガネで文字どおり仰向けに寝たままTVを見ることができるという自堕落な製品。経験者なら分かるが、期待したわりには見にくいのはお約束だ。さて、こちらは2013年のCESレポートでも紹介した、RHP MultiMediaによるアプリの「Noteologist」。同社が発売した講義やプレゼンテーション記録が可能な「MirrorCase」をより便利に使うためのアプリで、ビデオ撮影に合わせて、メモや重要なシーンでのフラグ設定などが行なえる。現在はイベント特別価格として値下げしており、App Storeから2.99ドル(日本でも300円)で購入できる。

(矢作 晃)