イベントレポート
【Mobile Focus Global/展示ホール編】雰囲気メガネ、iPhone用サーマルセンサー
~コンシューマ向け面白ガジェットからNFC、フィットネスまで
(2014/3/4 13:21)
恒例の併催イベントとなる「Mobile Focus Global」は、会期前日にあたる2月23日の夜にPalau de Congressos de Catalunyaを会場にして開催された。CESやIFAなどの併催イベントとして米Pepcomが開催するこのイベントは何らかのテーマをもって会場の演出を行なっているが、今回はフラメンコだった。ステージにはダンサーも登場して、会場を盛り上げた。
Logitech(日本ではLogicool:ロジクール)は、iPhone 5/5s用のケース「Tilt」を出展した。もとはKickstarterによるクラウドファンディングから生まれたプロダクトで、iPhone用の折りたたみスタンドである。「Tidy Tilt」の名称で出資を募集したところ、なんと22万ドルを集めて製品化にこぎ着けた経緯がある。さらに元をたどると、美大の課題をそのままKickstarterへと出したそうだ。その後「TT Design Labs」として起業。Tidy Tiltをはじめとするスマートフォンアクセサリを開発していたが、2013年にLogitechが買収した。会社はLogitechに吸収され、創業者はそのままLogitechにデザイナーとして入社したという。ちなみに買収金額は公表されていない。
こうしてTidy Tiltは、Logitechの製品となって再び登場した。構造は簡単で、3つ折りのカバーに磁石が仕込んである。スタンドにするときには三角形にして、使わないときには平面にして貼り付けておくといった仕掛けだ。iPhone側にはスチール製のケースを付けて利用する。三角形の筒状にすることで、イヤフォンのケーブルマネジメントにも使える。米国での販売価格は34.95ドル。同様に磁石の力を利用した車載用のマウンタも用意されている。日本国内での発売は現時点で未定。
展示ホールには、「パリミキ」のブランドでメガネ販売チェーンを展開する三城ホールディングスによるウェアラブルデバイスの出展もあった。出展された「雰囲気メガネ」は名称の通り、メガネ型のデバイス。Google GlassなどがIT側の視点で情報機器をメガネ型に近づけているのに対して、雰囲気メガネはメガネ側から情報を付加するアプローチなのが特徴だ。
情報の伝達は現時点で通知機能に特化。フレームに搭載されたフルカラーのLEDを任意に点灯させて通知を行なう。フレームからレンズ側面にLED光を照射することで、左右3個ずつのLEDだがレンズ周囲に光が行き渡る。色以外の情報を表示させないことからレンズは自由に選択でき、度入りレンズなどを使えば普段使いのメガネとして利用できるメリットもある。
プロトタイプはiPhoneに対応。iPhoneとはBluetooth 4.0LEで接続する。iPhoneの通知センターに通知があったら、そのまま雰囲気メガネに伝達。レンズが光る雰囲気で電話の着信、メール、SNSの受信、スケジュールの通知、株価の変動、天候の変化などを知らせる。フレームのツルの部分にはスピーカーも内蔵しており、周囲に気付かれにくい、ごく小音量で通知音を出すことも可能。
本体となるフレーム部分にはリチウムイオンバッテリを内蔵。通常利用であれば、フル充電で約1日の動作が可能。充電はMicro USB端子から行なえる。1日の目安は、就寝時にメガネを外し充電することで、翌朝また装着することを想定しているという。ちなみにプロトタイプは常時点滅を繰り返すデモンストレーション用のパーティモードも搭載。このモードだと稼働時間は2時間前後になるとのこと。
照度センサーと加速度センサーも内蔵している。前者は環境光に応じてLEDの光量を自動調整するのに利用する。後者は実装してはいるものの、利用途については検討の段階だという。プロトタイプの重量は38.5g。製品化の時期や価格については未定。Mobile World Congressのようなイベントなどで、一般来場者からのフィードバックをもとに今後も開発を進めていくとしている。公式サイトもすでに公開されている。
産業用機器として高性能な赤外線サーモグラフィを開発するFLIRによるコンシューマ向け製品「FLIR ONE」。iPhone 5/5sをサーマルセンサーにするケースだ。iPhone本体とはLightning端子経由で接続。専用アプリケーションを使って、対象物の温度を視覚化する。静止画および動画での撮影も可能。
ケースには赤外線センサーとイメージセンサーが並んで搭載されており、前者で温度を、後者でイメージを取得してアプリケーション上で合成表示する仕組み。iPhoneのケースという形状をとっているため本体リアカメラ部分に穴は空けられているが、サーマルセンサーとして利用する際には本体カメラは利用されていない。
測定可能な温度は約0~100℃。ケースにはバッテリも内蔵されているほか、電源のON/OFFとスライド操作でシャッターが切れる物理的なスイッチが搭載されている。一部のAPIを公開し、サードパーティ製のアプリケーションからもサーマルセンサー機能を利用できるようにするSDKも公開予定。予定価格は350ドルで、今春以降に出荷の見通し。具体的な対応製品は明らかにしなかったが、今後Android向けの製品も開発する意向とのこと。
公開イベントして実施された「Fitbit Challenge」。Mobile World Congress会期中の歩数を競うものだ。「Fitbit Flex」が59ユーロ(通常価格99ユーロ)で希望者に割り引き販売された。日本のFitbit FlexはSoftbank Mobileによる月額契約モデルで提供されており、Fitbit製のアプリを使う形での販売は行なわれていない。「Fitbit One」と「Fitbit Zip」はソフトバンクBBから販売されており、こちらはFitbit製のアプリケーションを利用する買い切り型の製品になっている。
今回のFitbit Challengeでは前述の優待販売もあったものの、Flex、One、Zipを所有していれば、誰でもブースでメールアドレスを登録することで参加ができた。実際、優待販売されたものは市販のパッケージではなく、本体と充電用のケーブルなどが裸で用意された言わばバルク製品のようなもので、さほど購入者からの評判はよくなかった。
順位は、前述の通りメールアドレスをブースで登録することで、そのメールアドレスに紐付けされたFitbitアカウントが非公開のアクティビティグループに追加される。アクティビティグループはFitbitの標準機能で、公開あるいは非公開のグループをユーザーが任意に作成して、グループ内でスコアなどをシェアする仕組みだ。今回は、その非公開グループを使って、参加者を一覧にしている。
さて、こうしてFitbit Challengeは行なわれたが、必ずしも運営がスマートだったとは言いがたい。今ひとつルールが不明瞭だった。優待販売で買った人は、新たに期間中にアカウントを作ったわけだが、既存のユーザーは累積の歩数が月初からあった。期間を区切ることなくグループ化したせいか、結果的にカウントは2月1日~27日までの人と、24日~27日までの人が混在した。さらにグループは3月になっても存在している。グループ内には掲示板も用意されているが、主な書き込みは「誰が勝ったんだ? 」といったものばかりで、主催者側からの公式な見解や結果はまだ見つけることができない。
筆者は日本でも日常的にFitbit Oneを使っていたこともあって、不健康な生活ながらも開始時点ではその貯金を活かして上位5%内に位置していた。ところが会期初日に服を着替えた際に付け替えを忘れるという痛恨のミスを犯す。さらに3日目には、あまりの忙しさに充電を忘れていて途中で電池切れになるというグダグダな結果になった。
ということで現時点で表示されている順位を紹介しておこう。ちなみにリーダーボードは3月1日をもって更新されており、これは3月以降の結果というMobile World Congressとは関係ない期間が表示されている。Mobile World Congrssの来場者は85,000人を超えたそうだが、うち1,300人以上がFitbit Challengeに参加しているというのは、かなり高いアタッチレートだと思うので、運営はそれなりにしっかりやって欲しかったところである。
さて、iPhoneでもNFC体験をということで配布されたincipioのNFC対応ケースだが、Mobile World Congress期間を通じてそれなりの活用はできた。主目的であるNFC Badgeとしての入場管理も、少なくとも4日間を通じて筆者は1度もトラブルなくゲートを通過することができている。山田氏のコラムにもある通り、会期初日にはシステム障害が起きて、Androidユーザーの端末では顔写真が表示されなくなっていたのだが、iPhoneの方は写真の一時消失はなく、そのまま利用できていた。また、Androidとは違いAndroidビームの操作をすることなく、タッチしてそのまま待つだけで認識が行なわれたので、使い勝手という点ではかえってよかった。もちろん、入場プロセスとしてはタッチしてひと呼吸置くとゲートの手前と向こう側に顔写真が表示され、それを係員が視認して同一人物と確認されれば入場できるので、日本の自動改札機のようなスムーズさはない。
ケースの機能とはまったく関係ないが、このケースで重宝したのはストラップが付けられることだった。この時期のバルセロナにおけるスリなどの犯罪被害は深刻で、知人でも何らかの被害に遭ったという人が毎年のように発生する。もちろん自衛するしかないのだが、それなりの有効手段の1つとも言える首からストラップでさげておく、というのがなかなかiPhoneでは難しい。もちろんこのケースにもストラップホールは付いていないのだが、構造的にマイクの穴の部分とヘッドホン端子の部分に連結した空間があったことで、ここに紐を通してストラップ化できた。紐が見えていればスリやひったくりをする側も警戒するので、わずかばかりではあるが安心を手に入れた気がした。
話が逸れたが、NFCの機能としては、そのほか1日1回のグラスビールの無料抽選や、NFCタグによる会場インフォメーションなどもひと通りはAndroidのそれと変わりなく利用できていた。incipioによるとこのケースは米国ではまだ限定的ながら決済での利用も見据えている。Verizon Wireless、AT&T、T-Mobileなどがモバイル決済のジョイントベンチャー「ISIS」を起ち上げて、11月からサービスを開始した。現在はNFCを内蔵するAndroid端末から利用でき、決済に対応した専用のSIMカードも利用する必要があるが、NFC内蔵の部分はiPhoneにおいてはこのケースで置き換えられるという。こうした後付けのNFCソリューションとして、incipioはAndroid用のケースなども参考展示している。ケースにはPowerMatのロゴも付いており、PowerMat方式のワイヤレス充電にも対応する模様だ。