イベントレポート

ASUS、Atom Z3740搭載2-in-1 PC「Transformer Book T100」を発表

~米国ではOffice付きで349ドルから

ASUS会長のジョニー・シー氏、手に持つのがTransformer Book T100
会期:9月10日~12日(現地時間)

会場:米国カリフォルニア州サンフランシスコ Moscone Center

 台湾ASUSTeK Computer(以下ASUS)は、IDF会場近くのホテルで記者会見を開催し、Intelが発表したばかりの「Atom Z3000」シリーズ(開発コードネーム:Bay Trail-T)を搭載した2-in-1 PCを発表した。

 2-in-1デバイスは、タブレットとクラムシェル型ノートPCなど、2つのフォームファクタを1つのデバイスで利用できる形状の製品で、今後タブレットとPCの発展系として成長が見込まれることから大きな注目を集めている。

 ASUSが発表した2-in-1 PCは「Transformer Book T100」で、以前はARMアーキテクチャのSoCを採用していたTransformerシリーズの直接の後継と言ってよい製品となっている。

 発表会でASUS会長のジョニー・シー氏は、「Transformer Book T100の32GBモデルはOffice 2013が付属しながら、349ドルという低価格で提供する」と発表。64GBも399ドルで、それぞれ10月18日から発売する。

タブレットの重量は550g
Transformer Book T100
タブレットの右側面、ヘッドフォン端子、Micro HDMI端子、Micro USB端子。充電はMicro USB端子を利用して行う
従来のTransformerシリーズのように分離してタブレットだけで利用できる

TF100、TF200などAndroid変形タブレットのデザインを受け継ぐT100

発表会にはIDFをホストしているIntel 上級副社長兼セールス&マーケティング事業本部 事業部長 トム・キルロイ氏が駆けつけてスピーチをした

 今回のIDFでは、クライアント向けではAtom Z3000シリーズ(Bay TrailーT)の発表や、Ultrabookから2-in-1デバイスへの進化、14nmプロセスルールで製造される次世代プロセッサのBroadwellなどが話題の中心となっている。特に2-in-1デバイスへの進化は、スマートフォンやタブレットの成長といった中で、劣勢が伝えられるPCの行く末を決めると見られていることもあり、注目が集まっている。そうした2-in-1デバイスに、ある意味で古くから取り組んできたメーカーの1つがASUSであることは誰も否定しないだろう。

 NVIDIAのTegra 2、Tegra 3を搭載したAndroidタブレットとなるTransformerシリーズは、いわゆる脱着型のデバイスで、キーボードドックから外した時にはピュアタブレットとして、キーボードドックに取り付けたときにはクラムシェル型のノートPCのように使えるということもあり、大きな注目を集めた。Android 3.0と共に導入された、初代のTF100(Tegra 2搭載)、2代目のTF200(Tegra 3搭載)、さらには廉価版として導入されたTF300(Tegra 3搭載)などが日本でも発売されたのは記憶に新しいところだろう。

 今回ASUSが発表したTransformer Book T100はそうしたTransformerシリーズの形状を受け継ぎ、キーボードドックに、ピュアタブレットを脱着できるという機構は同様で、採用されているSoCがAtom Z3000シリーズ(Bay Trail-T)へと進化していることが最大の特徴になる。ASUSは、Atom Z3000シリーズの前身であるAtom Z2760(Clover Trail)を搭載したタブレット“VivoTab Smart ME400C”を販売しているので、搭載されているSoC的にはそちらの後継という意味合いもある。

Windows 8.1の正式発表に合わせて発売、32GB版が349ドル、64GB版が399ドル

 IDFの会場近くのホテルで行なわれた発表会には、ASUSの幹部や、Intelの関係者などが詰めかける中、ASUS会長であるジョニー・シー氏が製品のコンセプトなどについて説明した。

 シー氏は「ASUSは仕事、余暇、SNSがこうしたデバイスでは重要だと訴えてきた。歴史を振り返ると、ASUSは変形機構を備えたTF100、電話がタブレットになるPadFone、デュアルディスプレイのUltrabookとなるTaichiなどユニークな形状のPCに取り組んできた。そして、今年(2013年)に入ってからも、Transformer Book Trioのようなユニークな2-in-1デバイスを発表してきた。だが、思いだして欲しいのは、我々のイノベーションの最初の製品は、お求めやすい価格で人気を集めたEee PCだったということだ」と述べ、こうした2-in-1デバイスでも価格設定が非常に重要だと指摘した。

 その上で、シー氏はT100の価格について触れ、「我々はT100をお客様がお求めやすい価格で提供する。32GBモデルが349ドル、64GBが399ドルという価格設定にし、10月18日に販売開始する予定だ」と述べ、今回発表したT100の価格設定をできるだけ安価にして、普及を目指すと強調した。発売日が10月18日となっているのは、もちろんWindows 8.1のリリース日だからだ。

過去にASUSがリリースした変形マシンの先祖となるTransformer TF100
スマートフォンがタブレットになるPadFone
デュアルスクリーンになるUltrabookのTaichi
2013年のCOMPUTEXで発表されたTransformer Book Trio
ASUSがノートブックPCベンダとして飛躍するきっかけになったEee PC
価格は32GB版が349ドル、64GB版が399ドルになる

HDの10型IPS液晶を搭載して本体重量は550g、ドッキング時1kg

 シー氏によれば、T100の特徴はいくつかあるが、デザイン、軽量、長時間バッテリ駆動、Atom Z3000シリーズを採用した事によるx86互換性によるWindowsデスクトップアプリケーションが利用できること、Office Home and Student 2013を標準搭載していることなどにあるという。

 デザイン面では、Transformerシリーズのらしい背面のヘアライン加工を受け継いでいる。タブレット部分の取り外し(アンドック)は、ヒンジ部分の中央にあるボタンを押し込むことできるようになっている。TF100/200などでは、スライド式のスイッチとなっていたが、プッシュ式のボタンになっていることが若干の違いになる。キーボードは、TF100/200シリーズにかなり近いデザインのアイソレーション型キーボード+タッチパッドという構成になっており、キーボードドックに取り付けた状態ではWindowsアプリケーションを快適に利用できそうだ。

 本体重量の軽さも1つの特徴といえる。本体の重量は550gと10型液晶を搭載したタブレットとしては軽量の部類となる。10型タブレットの多くの製品(例えば第4世代のiPadやSurface RTなど)は600gを超える重量になっており、それらと比べても軽量というのがT100だ。なお、ドッキングステーションを取り付けた時の重量は約1kgとなる。バッテリは31Whの容量が内蔵されており、最大11時間のバッテリ駆動が可能だという。

 ディスプレイはHD(1,366×768ドット)解像度で、10点マルチタッチに対応したIPS液晶。T100の液晶のサイズは10型になるが、別のモデルとして液晶が13.3型フルHDになっている「Transformer Book T300」も用意される予定だ。T300は第4世代Coreプロセッサ(Haswell)のCore i5-4200UないしはCore i7-4500Uを搭載し、最大8GBのDDR3L、最大256MBのSSDなどで、バッテリで8時間駆動が可能だ。

 T100に採用されているSoCはAtom Z3740(クアッドコア、最大1.8GHz)。メインメモリは2GB、ストレージはeMCCで32GBと64GBの2つのモデルが用意されている。なお、本体にmicroSDカードリーダが用意されているので、microSDXCカードなどを利用すると、64GBを増設して利用することなどが可能だ。このほか、Micro USB、Micro HDMI、ヘッドフォンジャックなどが本体側に用意されており、充電は付属のUSBチャージャー(10W)を利用してMicro USB経由で行なう。

 キーボードドック側にはUSB 3.0ポートが1つ用意されており、ドッキングした時には普通のクラムシェル型ノートPCとして利用できるようになっている。なお、無線については説明されなかったが、デバイスマネージャなどで確認した限りは、Wi-FiとBluetoothが実装されていた。

 OSは前述の通りWindows 8.1で、32bit版が搭載されている。米国向けのモデルにはOffice Home and Student 2013が標準で搭載されており、それを含んで32GBモデルが349ドル、64GBモデルが399ドルという安価な価格設定がされている。なお、Office Home and Student 2013は、用途を家庭用に絞ったバージョンで安価に設定されているのだが、日本では提供されていない。このため、日本でOfficeがバンドルされるモデルがどういう価格帯になるのかは、現時点では不明。ASUSの関係者によれば、日本を含む米国以外の地域での発売予定はあるが、それがいつになるのか、どの地域で販売するのか、価格などの点に関しては未定とのことだった。

アンドックすると、このようにキーボードドックとタブレットに分離して、スレート型タブレットとして利用できる
液晶は10型IPS液晶で、10点マルチタッチ対応。解像度はHD(1,366×768ドット)。
キーボードドック。アイソレーション型で薄型だが、比較的入力はやりやすい
ドッキング部、ヒンジの中央にあるボタンを押し込むことでタブレットを分離できる
ドッキングすると、普通のクラムシェル型ノートPCとして利用できる
天板部分
CPUはAtom Z3740、OSは32bitのWindows 8.1、メモリは2GB
デバイスマネージャの表示。なぜか展示機にはWi-Fiが入っていなかったが、これは試作機であるためということだった
キーボードドック側に用意されているUSB 3.0ポート

(笠原 一輝)