イベントレポート

AMD、Richlandのデスクトップ版を発表

~Kaveriのパッケージや実働デモを初公開

AMD 上席副社長兼グローバルビジネス本部 本部長 リサ・スー氏
会期:6月4日~8日(現地時間)

会場:

Taipei World Trade Center NANGANG Exhibition Hall

Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1

Taipei World Trade Center Exhibition Hall 3

Taipei International Convention Center

 米AMDは5日(台湾時間)、COMPUTEX TAIPEI近くの会場で記者会見を開催し、3月に披露したRichlandを正式発表した。Richlandの最高SKUとなるA10-6800Kは、クロック周波数が4GHzを超えるなど、自作PCユーザーにとっては注目の製品となっている。

 また、同社の戦略について説明したAMD 上席副社長兼グローバルビジネス本部 本部長 リサ・スー氏は、Trinity/Richlandの後継となるメインストリーム市場向けのAPU「Kaveri」の実製品を公開し、実際に動作している様子を公開した。

 さらに、5月に発表済みのTemashを搭載したタブレットの上で、Windows 8.1が動作する様子をデモした。

RichlandことElite AシリーズAPUのデスクトップPC版を発表

 Richlandのデスクトップ版は、AMD 2013 Elite AシリーズAPUという製品名で呼ばれ、Trinityのメインストリーム向けAPUの後継製品となる。詳しいSKU構成などは別記事に詳しいのでそちらを参照して頂きたいが、最上位SKUとなるA10-6800Kは、ベースとなるクロック周波数が4.1GHzと4GHzを超えており、ターボモード時には4.4GHzに達する。CPUソケットは従来と同じくFM2が利用されており、現状のTrinity用のマザーボードとして販売されているSocket FM2マザーボードで(BIOSアップデートなどの必要性はあるが)利用できる。

 Richlandはダイそのものに関してはTrinityと同じ。より高いクロック周波数で動作できるように改良されているのが大きな違いで、機能面での違いはない。しかし、AMDが「エリートソフトウェア」と呼んでいるソフトウェアがバンドルされ、利用できるようになっている。

 AMDのスー氏によれば「総合的な性能を計測するPCMark 8ではCore i5-4430を上回っており、3DMarkのFire StrikeではCore i5-4670Kも上回る性能を発揮する。我々のAPUは、競合他社よりもGPUに割いているダイのサイズが大きく、そもそも単純にGPUを内蔵させただけの製品とは異なっている」と述べ、AMDのAPUのIntelに対するアドバンテージがGPUの性能にあるとアピールした。

 なお、スー氏は、このRichlandデスクトップ版の発表に併せて行なわれる新しい自作PCユーザー向けのキャンペーンサイトを公開し、そのキャンペーンサイトで使われる予定のビデオ(4つのCPUコアが悪と戦い、苦戦するが最後には赤い応援団が来て……というストーリーのSFモノ)を公開した。

RichlandはTrinityと同じプラットフォームを利用することができる
PCMark 8ではCore i5-4430を上回る性能を発揮する。
3DMark Fire StrikeではCore i5-4670Kも上回る性能を発揮する。GPUに強みがある
自作PCユーザー向けにBe Invincibleというキャンペーンが行なわれる。そのビデオはキャンペーンサイトで確認できる
クアッドコアなので、戦士は4人という設定のようだ
最後に赤い仲間(赤=旧ATIのカラー=GPU)が登場して、戦いは圧倒的なモノになるというストーリーが展開されている

Kaveriは今後数カ月のうちにOEMへサンプル出荷され、年末までに投入

 続いてスー氏は、2013年の末までにAMDが発表を予定しているRichlandの後継APUとなるKaveriについて言及した。Kaveriは、AMDがARMなどと共に推進しているGPUコンピューティングの新しいプログラミングモデルとなるHSA(Heterogeneous System Architecture)に対応した初めてのAPUとなり、hUMAと呼ばれるCPUとGPUがメモリアドレスを共有する仕組みが導入される。

 現在のAPUやGPU統合型CPUでは、CPUとGPUがそれぞれ別のメモリアドレス空間を利用する仕組みになっており、ソフトウェアを作るプログラマはそれぞれ別のメモリ空間を意識して利用する必要がある。これに対してhUMAを利用できるようになると、プログラマはそうしたことを意識しなくても、1つのメモリアドレスを指定するだけで簡単にソフトウェアを作成できるようになる。

 KaveriはPGAとBGAの2つのパッケージで、PGAに関してはFM2+と呼ばれるソケットに対応する。このPGA、BGAのどちらが使われたのかはわからないが、今回のデモでKaveriが実際に動作する様子が確認できた。スー氏「Kaveriは今後数カ月のうちにOEMメーカーに対してサンプル出荷され、今年の末までに出荷する予定だ」としており、Kaveriの開発が順調に進んでいることをアピールした。

 また、Temashを搭載したMSIの11.6型タブレットを公開し、その上でMicrosoftが今月(6月)末に開催する開発者向けイベント“Build”で公開する予定のWindows 8.1が動作する様子などを公開した。

KaveriではCPUとGPUの両方を利用して演算するソフトウェアのプログラミングがもっと楽になる。それにより魅力的なソフトウェアが登場する可能性がある
スー氏が右手(写真左)に持っているのがBGAパッケージ、左手(写真右)に持っているのがPGAパッケージ
上がPGAパッケージ、下がBGAパッケージ
Kaveriのシステムでゲームを動かしている様子
Temashを搭載したMSIのタブレット。Windows 8.1が動作していた

Radeon HDのマスコットガール「Ruby」のデモを久々に公開

 次いでステージに登場したAMD 副社長兼グラフィックスビジネス本部 本部長のマット・スキナー氏は、AMDのグラフィックス製品に関しての紹介を行なった。スキナー氏は「Microsoft、任天堂、ソニー、いずれの企業もコンソールゲーム機のグラフィックスに我々の製品を利用している。我々のアドバンテージは、そうしたコンソールゲーム機、PCのようなクロスプラットフォームで利用されていることだ」と述べ、MicrosoftがXbox Oneで、ソニーがPlayStation 4で同社のグラフィックス製品を採用したことなどを例に挙げながら同社のグラフィックス技術の優位性をアピールした。

 その上で、最近発表したGPU製品として、Radeon HD 7990、Radeon HD 8970Mなどを挙げ、搭載製品などを紹介した。また、スキナー氏は3Dゲームを提供するゲームベンダーとの関係について触れ、「我々はコンテンツホルダーとの関係を重視しており、積極的に協力していきたい」と述べ、ゲームベンダのNIXXESのCEOを壇上に呼び、AMDのGPUへの最適化について語ってもらうなどした。

 また、AMDのRadeon HDシリーズの女性キャラクターとして知られるRuby(ルビー)の最新作となるデモを公開した。AMDなどのGPUベンダーは新しいGPUの持つポテンシャルをアピールするのに、特別な3Dアプリケーションを作成して、それを新しい技術のデモンストレーション目的で公開することがある。

 スキナー氏によれば「デモはCrytekのCryEngine 3を利用されて作られており、GCNの機能をフルに利用している」とのことで、TressFX Hair、Mesh TessellationなどGCNでサポートされている技術を利用してレンダリングされているということだった。

AMD 副社長兼グラフィックスビジネス本部 本部長のマット・スキナー氏、手に持っているのはRadeon HD 7990搭載ビデオカード
Radeon HD 7990とRadeon HD 8970Mが最新製品として紹介されたが特に新製品は無かった
10年前に最初のデモにRubyが登場してから10年経ったことを記念して作られたデモ
新しいRubyのデモに利用されている技術
【動画】Rubyのデモムービー

(笠原 一輝)