イベントレポート
NFC/FeliCaの日本での実用例からスマホのコンセプトモデルまで
(2013/3/4 12:07)
NTTドコモ
NTTドコモブースでは、日本で販売している端末の展示に加えて、NTTドコモのスマートフォン・タブレット向けコンテンツサービス「dマーケット」や、Felica/NFCを利用したさまざまなサービスの紹介が行なわれていた。
FeliCa/NFC関連の展示では、韓国の通信事業者KTと提携した電子決済サービスの相互利用を実現する事例や、日本で実際に商用利用されている電子チケットサービスなどが紹介されていた。
電子決済サービスの相互利用に関しては、実際に韓国で利用される電子決済用の端末が置かれ、NTTドコモのNFC対応スマートフォンを利用した決済の実演が行なわれていたが、その様子を見る限り、日本でFeliCaを利用した電子決済と同等の感覚で利用できるシステムとなっていた。決済のスピードはタッチから1秒もかからずに終了し、利用するスマートフォンがスリープの状態でも全く問題なく決済が行なえていた。実際に、サービスが開始される場合には、日本国内と全く変わらない感覚で利用できるよう現地の事業者に働きかけるとともに、NTTドコモがノウハウを提供することも想定しているという。また、これと同様に、2013年6月以降にグアムなどで開始が予定されている、電子決済サービス「iD」の海外利用について、実際に海外利用時に使うPayPass対応版のiDアプリも展示されていた。
電子チケットサービスについては、NTTドコモが出資する「BOARDWALK」が開発した電子チケットサービスの事例が紹介されていた。オンラインで購入したコンサートなどのチケットを携帯電話やスマートフォンにダウンロードし、入場時に専用の機械にかざすだけで入場できるというものだ。2012年だけで、このサービスを利用する電子チケットが140万枚ほど販売されているという。このシステムを利用することで、入場時のチケットの確認やチケットを切る作業を大幅に省力化できるとともに、それらにかかる時間を短縮でき、来場者をスムーズに入場させられるとしている。ところで、端末はNFC/FeliCaに加えてQRコードにも対応しているが、これはNFC/FeliCaに対応しないiPhoneユーザーが多いからだという。また、海外のユーザーがネットを通してチケットを購入し、来日してコンサートに参加する、という運用も実現されているという。
加えて、NFCチップにFeliCaのセキュアエレメントを統合した、ワンチップ型のNFCチップ「SiP」も展示されていた。今回はSamsung製の統合チップのみが展示されていたが、NXP Semiconductorsも開発を進めており、これら統合型チップが実際に利用されるようになれば、今のような国内向けモデルとグローバルモデルの垣根がなくなることになり、NFC/FeliCa関連機能がどの端末でも利用できるようになる可能性がある。
今回のMWCでは、「NFC Experience」と銘打ち、NFCを利用した入場パスや、会場内での電子決済などが行なわれていたが、利用時にアプリが起動していなければならなかったり、認識まで時間がかかるなど、非常に使い勝手が悪かった。また、一歩会場を後にすると、NFCを利用した電子決済サービスが利用できる店舗は数えるほどしかなく、まだまだ実験段階といった様子だ。そういったこともあってか、NTTドコモブースの来場者の多くが、日本で電子決済サービスが実際に商用利用で広く普及していることや、使い勝手の良さに驚いていたそうだ。
NEC
NECブースでは、日本で4月に発売を予定している、液晶を2画面搭載する折りたたみ型スマートフォン「MEDIAS W N-05E」のグローバルモデルが展示されていた。スペックは、日本向けモデルと同等で、2画面同時利用時の仕様などについてもほとんど違いはない。ただ、日本向けモデルではボディカラーがブラックとなるのに対し、グローバルモデルでは鮮やかなレッドを採用している。見た目に非常に鮮やかで、質感もブラックより優れるように見える。なぜ日本ではブラックではなくレッドを発売しないのか、疑問に感じるほどだ。
もともとは、非常に個性の強い端末ということもあって、カラーも個性が強い方がいいということで、日本向けもレッドで開発を進めていたという。ただ、最終的に日本ではブラックとなったそうだが、機会があればレッドも販売したいとしている。
このMEDIAS Wのグローバルモデルは、会場でも非常に注目度が高く、連日非常に多くの来場者で埋め尽くされていたそうだ。それも、特殊な端末として注目が集まっていたのではなく、使い勝手に優れる端末として高く評価されていたそうだ。国内メーカーのスマートフォンは、なかなか海外で成功できていないが、MEDIAS Wを足がかりに、海外展開も積極的に取り組んでいきたいとしている。
京セラ
京セラブースでは、優れた耐衝撃性を有するLTE対応スマートフォン「Torque」が展示されていた。
Torqueの耐衝撃性能は、アメリカ国防総省軍事規格(Military Standard 810G)に準拠。4フィート(約122cm)の高さから26回におよぶ落下試験をクリアする優れた耐衝撃性能を有している。また、IPX7/IP6X準拠の防水/防塵機能にも対応。その他にも、耐振動性能、防湿性、耐日射性能、低圧環境への対応、塩水への耐久性なども確保されており、まさにアウトドアでの利用に最適な端末となっている。
この優れた耐衝撃、防水/防塵性能を実現できた理由の1つが、京セラ独自の「スマートソニックレシーバー」を採用していることにある。スマートソニックレシーバーは、液晶面を振動させることによって、受話音声を鼓膜と内耳に伝える技術だが、これによって受話用のスピーカを省け、液晶面の穴が不要となり、水やホコリの侵入も防げることになる。
本体サイズは、68.4×128.5×12.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約168.5g。液晶は800×480ドット表示対応の4型液晶を採用。また、NFCにも対応している。アメリカの通信事業者Sprintから、4月以降の発売が予定されている。
また、実際の製品だけでなく、次世代を見すえたスマートフォンやタブレットのコンセプトモデルも4種類展示されていたので、それらは写真で紹介する。
JETRO Japanパビリオン
日本貿易振興機構(JETRO)は、2013年もMWCにJapanパビリオンを設置し、日本の優れたコンテンツや技術を紹介していた。
まず、最も大きなスペースを割いて紹介されていたのが、フェリカネットワークスによる、NFC/FeliCaに関する技術やサービスについてだ。マクドナルドで展開されているおサイフケータイ関連サービスや、日本で販売されているNFC/FeliCa両対応スマートフォンの展示といったものから、NFCを利用したソリューションなどが展示されていた。
その中で特に面白かったのが、「NFC Active Tag Solution」というものだ。これは、セキュアエレメントに依存しないNFCのソリューションで、乱暴に言うと、セキュアエレメントをクラウド側に持っていき、さまざまなサービスを提供するというものだ。
例えば、電子ペーパーが付属するNFCタグを、専用アプリを起動したNFC対応スマートフォンにかざすと、NFCタグと端末の情報をもとに、必要な情報をクラウドからダウンロードし、電子ペーパーに転送して表示する、といったことが可能となる。さまざまな店舗が用意している会員証をこのソリューションに置き換えれば、ユーザーはスマートフォンのみを持ち、各店舗が用意する電子ペーパー付きNFCタグにスマートフォンをかざせば会員証が表示される、といった運用が可能となり、ユーザーは会員証の束を持ち歩く必要がなくなる。さらに、ワンタイムのQRコードを発行し、電子ペーパーなど表示させるといった手法を利用することで、NFCタグを決済用途で利用する、といった応用も可能だそうだ。
Japanパビリオンでは、このほかにも多くの展示が行なわれていたので、その中からいくつかを写真で紹介する。
FULLER
スマートフォン用のアプリ管理ソフトを提供する「FULLER」。そのアプリ管理ソフトでは、ユーザーの許可のもと、利用しているアプリに関する情報を収集できるようになっている。その情報をもとに、地域や性別、年齢の違いでどういったアプリが使われているのか、市場の動向を把握し、アプリ開発会社にその情報を提供する、といったソリューションを展開したいとしている。現在収集している情報からは、スマートフォンの画面サイズの違いと利用されているアプリの種類の関係や、Google Playでの課金伸び率ナンバーワンが日本である、といったことが判明しているという。
宮城モバイルビジネス研究会
宮城県の支援を受け、IT企業が集まって作られた団体で、いくつかのアプリやソリューションを紹介していた。
「手書き電話」というアプリは、2台のiPadをP2Pで接続し、筆談でコミュニケーションが行なえる、主に難聴の方に向けた障碍者支援アプリだ。一方のiPadに手書きした文字や絵が、相手のiPadにリアルタイムに反映される。もちろん、手書きの内容は双方向に反映される。取材した時には、会場内のネットワーク状況が悪く、実演は見られなかったが、非常に有用なアプリと感じた。また、東北地方の農家を支援するソリューションも展示。センサーを利用して農地の状態をモニタリングし、情報をクラウドで収集。そして、農家がその情報を好きな時に参照できる。津波で塩害被害を受けている農家へ向けたものだそうだ
ブリリアントサービス
ジェスチャー操作に対応したHMD「Viking」の試作機を展示。HMDに、HMD向けとして独自に開発した「Viking OS」を組み合わせることによって実現している。HMDを装着した状態で上を見上げたり下を見たりすることで、表示される内容を切り替え、その状態で手を前後左右に動かすジェスチャー操作で各種操作が行なえる。HMDには、手の位置を赤外線で計測するセンサーとカメラが取り付けられており、それでさまざまなジェスチャー操作を可能にしている。また、カメラには顔認識機能もあり、目の前にいる人の識別もできるという。実際に展示されていた試作機では、ジェスチャーなどの各種処理はPCで行なわれていたが、将来は全てHMDだけで実現したいとしている。
ブリリアントサービスは、OSなどソフトウェアの開発メーカーであり、ハードウェアを手がけているわけではない。今回の展示の目的も、より小型化したり、画質を高めたHMDを製作するハードウェアベンダーを探すためだそうだ。