イベントレポート

東芝、腕時計型のスマートデバイスやUSB/microSD型TransferJet製品などを展示

会期:1月8日~11日(現地時間)

会場:Las Vegas Convention Center/The Venetian/Pallazo

 東芝ブースでは、CES 2013開幕に合わせて発表された、58型/65型/84型の4K2K対応液晶TVを中心としたAV関連機器の展示がメインとなっていた。それに対し、ノートPCのdynabookシリーズやAndroidタブレットのREGZAタブレットなどの新製品はCES 2013に合わせては発表されなかった。一部dynabookでは日本未発売の北米モデルも展示されていたが、残念ながら既存製品の展示のみとなっていた。そういった中で、IT関連の技術デモや、企業向けのセキュリティツールなどの参考展示が行なわれていたので、ここではそれらを紹介したいと思う。

腕時計型スマートデバイス「Computer Graphic Watch」

 「Computer Graphic Watch」は、100×320ドット表示対応の有機ELパネルを採用した腕時計型のスマートデバイスだ。通常は腕時計として利用しつつ、Bluetoothを利用してスマートフォンと連携し、さまざまな情報を表示する。スマートフォンと連携できる小型のスマートデバイスは各種登場しているが、Computer Graphic Watchはそれらよりも信頼性を高めるとともに、より高度な活用が行なえるように進化させたものとしている。

 例えば、スマートフォンの着信やメール着信などの情報を表示して知らせたり、再生している音楽などの情報を表示するといったものはもちろん、カレンダーと連携してスケジュール情報の表示などが可能。また、スマートフォンのアプリと連携し、ナビゲーションアプリのナビ画面を表示することもできる。さらに、Webサイトやクラウドサービスと連携し、Webサイトにデータをリンクさせて各種情報をクラウドで管理しつつ、その情報を表示することも可能だそうだ。腕時計として使う場合には、表示部が有機ELパネルとなっているため、文字盤のデザインを自由に変更して利用できる。

 腕時計型のように常に身につけて利用するデバイスということから、より生活に密着した機能の実現も想定している。例えば、GPSを利用して周辺の天気や位置情報を表示するのはもちろん、Webサービスと連携し、通勤経路を登録することで通勤経路の交通情報をリアルタイムで表示したり、TV番組の好きなジャンルを登録しておけば、その好みに合った番組の情報を表示するというように、生活に密着した情報を自動的に表示する機能も盛り込まれる。

 加えて、心電計や加速度センサーなどのセンサーも内蔵しており、心拍数を計測したり活動量計としての活用にも対応。心電計を利用した生体認証機能も盛り込まれ、オーナー以外が装着した場合には時計以外のスマート機能の利用を自動で停止することも可能という。

 内部にはARMベースのSoCが搭載され、Linuxベースで動作する。バッテリ駆動時間は約2~3日を想定しており、週に2回の充電でまかなえるように考慮している。充電は専用のクレードルを利用。また、センサーを利用して、腕を下げている場合には画面表示を消し、腕を上げて表示面が水平に近付いた場合のみ画面を表示させることでバッテリ消費を抑える仕組みも盛り込む予定としている。

 このようなデバイスは、単なるスマートフォンに付随するガジェット的な存在のものが多いが、Computer Graphic Watchは、単なるガジェットで終わらせるのではなく、これをベースとして、幅広い用途に活用できるように育てていきたいとしている。今回は参考展示という形ではあったが、製品化も予定しており、6カ月以内には販売したいそうだ。

腕時計型のスマートデバイス「Computer Graphic Watch」。スマートフォンとBluetoothで連携し、さまざまな情報を表示する
画面は100×320ドットの有機ELパネルを採用。通常は時計として利用するが、文字盤のデザインは自由に変更可能となっている
スマートフォンへの着信などの通知機能はもちろん、ナビゲーションなどのスマートフォンのアプリの画面を表示したり、WebサービスやGPSなどを利用し、今必要な情報を自動で表示する機能が盛り込まれる。充電は専用のクレードルに取り付けて行なう
心電計や加速度センサーなどのセンサーを内蔵。心拍数を記録したり、活動量計としての活用も可能。また、センサーを利用した生体認証機能によって、ユーザー以外が利用する場合にスマート関連機能の動作を制限することも可能
裏面には端子が2つあり、充電および心電計の電極として利用される

USB接続のTransferJetアダプタを利用したデータ転送デモ

 東芝は、昨年(2012年)10月に開催された「CEATEC JAPAN 2012」において、近接無線通信技術「TransferJet」に関するデモ展示を行なったが、同様の展示がCES 2013でも行なわれた。CES 2013では、CEATECで展示されていたTransferJet内蔵microSDIOカードに加えて、PCのUSBポートに取り付けて利用できるUSB型のTransferJetアダプタ、スマートフォンのMicro USBポートに取り付けて利用できるMicro USB型のTransferJetアダプタも展示していた。

 また、実際にTransferJet内蔵microSDIOカードを取り付けたタブレットと、USB型のTransferJetアダプタを取り付けたPCとの間でデータを送受信するデモも行なわれた。タブレット側で送信したい写真を選択し、PCのTransferJet USBアダプタに近づけると、短時間でPCに写真が転送され表示される。転送速度は約560Mbpsと高速のため、写真もほぼ一瞬で転送される。

 また、2013年中頃を目処に、TransferJetとNFC双方に対応する、NFC+TransferJetコンボICチップの開発も予定されている。現在TransferJetを利用するには、今回デモが行なわれていたように、TransferJet内蔵のmicroSDIOカードやUSBアダプタなどを利用する必要があるが、NFC+TransferJetコンボICチップが登場すれば、ノートPCやスマートフォンにTransferJetが直接搭載される可能性も大きく高まることになる。

 それに加え、NFCとの組み合わせにより、より多くの用途への対応も想定している。中でも、NFCを利用して決済を行ない、そのままTransferJetで高速に購入したアプリや映像などのデジタルコンテンツをダウンロードするという用途が特に有望としている。さらに、今後普及が高まると予想されている無接点充電機能とも組み合わせ、3種類の近接技術を同時に利用できるようにすることも考えているそうだ。例えば、スマートフォンを台に置くだけで、充電と内蔵データの転送が自動で行ないつつ、PCでのオンライン決済をスマートフォンで行なう、といったことも実現可能となる。

 現時点では、まだ普及が少なく利用シーンも限られるTransferJetだが、microSDIOカードやUSBアダプタなどの提供によって対応機器やアプリケーションを増やしつつ、NFCとのコンボICの実現によって搭載機器も充実させ、発展させていきたいと考えているそうだ。

TransferJet内蔵のUSBアダプタやmicroSDIOカードなどを展示。ロードマップでは、今年中頃にNFCを追加したNFC+TransferJetコンボICの開発を予定している
USB接続のTransferJetアダプタをPCに取り付けることで、PCでTransferJetを簡単に利用できるようになる
こちらは、TransferJet内蔵microSDIOを取り付けたタブレット。ブースでは、タブレットからPCにTransferJetで写真を高速に転送するデモが行なわれていた
【動画】タブレットからPCにTransferJetで写真を転送する様子

企業向けのHDD診断ツールとタブレットセキュリティツール

 IBMのIT管理およびセキュリティ管理ソフトウェア「IBM Tivoli Endpoint Manager」と、東芝の省電力技術およびセキュリティ技術を連携させた、企業向けのクライアント管理ツール「東芝スマートクライアントマネージャー」を利用し、クライアントのHDDを診断する機能や、タブレットのセキュリティを高める機能のデモも行なわれていた。

 HDD診断機能は、クライアントに搭載されているHDDのS.M.A.R.T.情報をもとに、クライアントのHDDの健康状況をサーバー側でチェックし、健康状況に応じてバックアップなどの指示を出せる機能だ。サーバー側で一括管理となるため、クライアント個別にチェックする必要がなく、効率良くハードウェアの管理が行なえるのが大きな利点。HDDの健康状況の把握は、基本的にはS.M.A.R.T.の情報を利用しているそうだが、それに加えて東芝が蓄積しているHDDごとの傾向をベースとした解析技術を組み合わせることで、より信頼性の高い健康状況の把握が可能としている。

 ブースでは、分かりやすくするために、外付けのHDDを接続して、そのHDDの状態をサーバー側が確認し、画面に情報を表示するというデモが行なわれていた。接続後しばらくすると、サーバーがHDDを認識し、状態をチェックして情報が表示される。また、この情報をもとに、クライアントにアラートを表示させたり、自動的にデータのバックアップを実行することも想定しているそうだ。さらに今後は、HDDだけでなくSSDへの対応も進める予定という。

 タブレットのセキュリティツールも、東芝スマートクライアントマネージャーに追加される機能の1つで、クライアントとして使われているタブレットを監視し、アプリのインストールや削除、USBやmicroSDカードなどの周辺機器の利用を制限できるものだ。

 用意されている主なセキュリティ機能は、ソフトウェアマネージメントとデータプロテクションの2つ。ソフトウェアマネージメントでは、許可したアプリ以外はインストールができないようにしたり、特定のインストール済みのアプリを削除できないようにする機能。許可されていないアプリを起動したりインストールしようとしても、端末にアラートが表示されて起動やインストールが停止するようになっている。また、データプロテクションでは、SDカードスロットやUSBポートの使用制限を施すことで周辺機器を接続しても利用できなくでき、データコピーなどを制限できる。制限をかけられる機能は、SDカードスロットやUSBポートに加え、Bluetoothや無線LANなど、タブレットが持つ機能のほとんどに及ぶ。無線LANでは、特定のアクセスポイントにのみ接続できるようするといった運用も行なえる。

 このようなセキュリティ機能は、クライアントOSにも搭載されてはいるが、サーバーで一括管理できるのが最大の利点となる。設定内容はサーバー側で動的に変更できるため、クライアントのタブレットを操作して個別に設定を行なう必要がなく、効率良く管理が行なえる。

 今回展示されていたものは企業向けのシステムではあるが、一般ユーザーにとっても有用な技術といえる。例えば、複数のPCを利用したりサーバーを運用しているユーザーなら、HDDの集中診断機能は非常に有用だし、子供のいる家庭ではタブレットの利用制限を簡単にかけられるという意味で魅力がある。今後、一般ユーザー向けへの展開も検討したいとしているが、家庭内でのPCやタブレットのセキュリティを高める手段として、実現を期待したい。

東芝スマートクライアントマネージャーを利用した、クライアントPCのHDD診断機能のデモの様子
サーバーでクライアントPCのHDDの健康状態を一括管理し、故障のリスクを事前に把握できる
基本的には、クライアント側にはアラートを表示する必要はないが、このようにメッセージを表示することも可能
HDDに問題が確認されると、クライアントにバックアップ指示のメッセージを表示させたり、自動でバックアップソフトを起動してバックアップを行なうことも可能
タブレットセキュリティツールを利用することで、指定以外のアプリの起動やインストール、ソフトの削除などの制限がかけられる。指定以外のアプリを起動しようとしても、このようにアラートが表示された起動しない
アプリの管理は、ホワイトリストおよびブラックリストにより行なえる
アプリだけでなく、デバイスの制限も可能。USBやSDカードスロット、Bluetooth、無線LANなどに対応
SDカードスロットに制限をかけると、SDカードの利用が行なえなくなり、データコピーを抑制できる

(平澤 寿康)