イベントレポート

Intel、Haswellを搭載したリファレンスハイブリッドPCを公開

~13型で10mm厚/850g/10時間駆動を実現

Intel副社長兼モバイルコミュニケーション事業本部 本部長 マイク・ベル氏。手に持つのはAtom Z2420搭載スマートフォン
会期:1月8日~11日(現地時間)

会場:Las Vegas Convention Center/The Venetian/Pallazo

 米Intelは、International CES開幕前日のプレスデーに記者会見を開催し、同社の低価格スマートフォン向けSoCとなる「Atom Z2420 with XMM6265」(開発コードネーム:Lexington)、およびTDP 13W/SDP 7Wの第3世代Core Yプロセッサを正式に発表した。

 この中でIntelは、Lenovoの「IdeaPad Yoga 11S」など、Yプロセッサを搭載した超薄型のUltrabookを公開したほか、2013年半ばに投入を計画している次世代プロセッサHaswell(ハスウェル、開発コードネーム)を搭載したリファレンスデザインのタブレットを公開した。

 Intel副社長兼PCクライアント事業本部 本部長 カーク・スコーゲン氏は「Haswell搭載のタブレットは850g、10mm厚、10時間のバッテリ駆動を実現する」と具体的な数字を挙げ、現在より薄く、軽く、長時間バッテリ駆動が可能なWindows 8搭載タブレットやUltrabookが実現するとアピールした。

 また、「Atom Z2760」の後継として開発している22nmプロセスの「Bay Trail」(ベイトレイル、開発コードネーム)を搭載したODMメーカーのタブレットを初めて公開し、2013年の年末商戦に出荷できるスケジュールで開発を進めていることを明らかにした。

順調に立ち上がりつつあるMedfieldベースのスマートフォン、低価格版を追加

 記者会見で最初にステージに立ったのはIntel副社長兼モバイルコミュニケーション事業本部 本部長のマイク・ベル氏。ベル氏は2012年のモバイル向け製品を振り返り、「2012年に我々はスマートフォン向けビジネスで前に進むことができた。Motorola、Lenovo、ZTEなどのOEMメーカーを獲得し、市場にIAベースのスマートフォンを出荷できた。そして実際に登場した製品は、ARMのSoCを搭載したスマートフォンに比べて高い性能を持ち、バッテリ駆動時間も長いという評価を受けている」とし、スマートフォン向けSoCである「Medfield」(開発コードネーム)が一定の成功を収めたと評価した。

 ベル氏は「我々はこの成功を次に繋げていかなければならない。今日新しいスマートフォン向けSoCとなるAtom Z2420を発表する。これは成長市場で注目を集めている低価格スマートフォン向け製品となる」と述べ、これまで同社が開発コードネーム「Lexington」(レキシントン)で開発してきたSoCを発表した。

 Atom Z2420は同社の通信部門が販売する3Gモデムチップ「XMM6255」とセットで提供され、CPUは1.2GHz動作のシングルコアx86プロセッサ(Hyper-Threadingテクノロジ対応)、GPUはPower VR SGX 540などの仕様となっている。さらに、デュアルSIM、FM放送、microSDカード、WiDiになどに対応することが説明された。

 ベル氏はAtom Z2420を搭載したスマートフォンを販売するOEMメーカーとして、台湾のAcer、ケニアのSafaricom、インドのLava Internationalの3社を挙げ、「2013年第1四半期に各社から発表、販売されることになるだろう」と述べた。

 次いでベル氏は、今後のスマートフォン向けSoCのロードマップについて触れ、間もなく「Clover Trail+」と呼ばれる、デュアルコアのタブレット向けClover Trailをベースにスマートフォンにもマッチするように改良した製品を投入すると説明した。さらに、「2013年の末には次世代の製品となる22nmプロセスルールのスマートフォン向けSoCを投入する」とし、スマートフォン市場を拡大する意向を示した。

Medfieldベースのスマートフォンを発売したOEMメーカー
IAベースのスマートフォンは他社のSoCを搭載したスマートフォンを性能で上回っていると評価されている
同じ筐体、同じバッテリサイズのMotorola Razr i(Medfield搭載)と同Razr M(Qualcomm Snapdragon S4搭載)を比較すると、Intel版の方が長時間駆動が可能
低価格向けとなるLexingtonことAtom Z2420を発表。低価格スマートフォン向け
Atom Z2420は1.2GHz(HT対応)でAndroid OSをサポート
GPUはPowerVR SGX 540を搭載
デュアルSIM、FM放送、microSD、WiDiに対応
製品は台湾のAcer、ケニアのSafaricom、インドのLava Internationalから発売予定
スマートフォン向けAtom SoCのロードマップ

Bay Trailを搭載したWindows 8タブレットを公開、製品は年末商戦に登場へ

 また、昨年の9月に発表したClover Trailに関しては、Acer、HP、Dell、ASUS、Samsung Electronics、Lenovo、富士通、LG Electronicsなどに採用され、タブレット市場で大きく盛り返していることをアピールした。ベル氏は「Clover Trailには4つの大きなメリットがある。優れたユーザー体験、10時間を超える長時間バッテリ駆動、高性能、ソフトウェアの互換性だ」とし、実際にClover Trailが搭載されているWindows 8タブレットで、PC用のiTunesやPicasa、Adobe Photoshopなどを実行してみせ、互換性が大きなメリットであると説明した。

 そして、IntelがClover Trailの後継として計画しているBay Trailについて触れ、COMPAL、PEGATRON、WistronなどのODMメーカーが開発中のタブレットを公開した。「Bay Trailは新しいマイクロアーキテクチャのAtomになり、クアッドコアで現行世代の2倍以上の性能を発揮する。2013年の年末商戦には市場に製品が投入されるだろう」と述べ、Bay Trailの投入時期を正式に表明した。

Clover Trail搭載Windows 8タブレットのメーカーリスト
Clover TrailではいわゆるMetro Appsだけでなく、Windowsデスクトップアプリケーションも使えるとアピール
次世代製品のBay Trailをアピール、22nmで製造される新しいマイクロアーキテクチャのクアッドコアで、現行製品に比べて2倍のパフォーマンスを実現。今年の年末商戦に投入予定
COMPAL、PEGATRON、Wistronの3社が試作したBay Trail搭載タブレット

SDP 7Wを実現するIvy BridgeベースのYプロセッサを正式発表

Intel副社長兼PCクライアント事業本部 本部長 カーク・スコーゲン氏

 続いて登場したのはIntel副社長兼PCクライアント事業本部 本部長 カーク・スコーゲン氏。スコーゲン氏は、第3世代Coreプロセッサをベースとし、従来より低消費電力を実現した「Yプロセッサ」を正式に発表した。

 スコーゲン氏は「この新しい低消費電力のCoreプロセッサは、フル機能を持っているが、7Wという従来よりも低い消費電力を実現している。さらにタブレットに採用されているTegra 3と比較して処理能力は5倍高速だ。これを利用することでOEMメーカーはさらに薄くて、軽くて、高速なタブレットやUltrabookを製造できる」と述べ、新たに導入するSDP(Scenario Design Power)という新しい消費電力の指標で7Wになり、ARM系SoCと比べて圧倒的に高性能だとアピールした。

 スコーゲン氏は「新しい製品はすでに大量出荷を開始している。OEMメーカーはさらに薄くて軽いノートPCの設計を始めており、AcerのAspireやLenovoのIdeaPad Yoga 11Sなど、すでにOEMメーカーのデザインが済んでいる」と語った。

第3世代Coreプロセッサ(Ivy Bridge)ベースの低消費電力版が発表された。通称Yプロセッサと呼ばれ、プロセッサナンバーの末尾にYのアルファベットが入る。TDPは13W/10W(LFM、低クロックモード時)で、SDPが7Wというスペックになる
SDP 7Wというスペックをアピール
IdeaPad Yoga 11s、Yプロセッサを採用している。日本ではNECが「LaVie Y」として販売しているIdeaPad Yoga 11はTegra 3ベースなので、11sはIntel版の11型Yogaということになる
AcerのAspireシリーズのタブレット、Yプロセッサを採用している

 Ultrabookについては、今後もラインナップの拡充を実現していくとした。その1つの例として、日本のNECが2012年末に発表した「LaVie X」が紹介された。LaVie Xは15.6型の液晶ディスプレイでありながら12.8mmという群を抜いた薄さを実現している。従来の15型サイズ液晶搭載フルサイズノートPCと厚さを比較してみせ、IntelとしてもこうしたイノベーティブなUltrabookを推進していくと述べた。

NECのLaVie Xを15型搭載Ultrabookとして紹介し、従来の15型搭載ノートPCと比較して見せた

Haswellのタブレットは13型液晶、10mm厚、850gで10時間駆動が可能に

 スコーゲン氏は、Intelが今年の半ば以降に出荷することを予定している第4世代Coreプロセッサ(開発コードネーム:Haswell)についても言及し、「第4世代CoreプロセッサのUltrabookではタッチ機能が必須の機能となる」と説明。その上で、Intelはタッチ機能の低価格化に取り組んでおり、2013年の末にはタッチ機能が搭載されたUltrabookの価格レンジが599ドルまで下落するだろうと予想した。

 「第4世代Coreプロセッサはゲームチェンジの製品になる。IntelはUltrabookのためにHaswellを開発してきた。この製品はIntelの歴史上で最もバッテリ駆動時間が長い製品になる」と述べ、IntelがOEM/ODMメーカーに対してリファレンスデザインとして提供しているタブレット「North Cape」(ノース・ケープ、開発コードネーム)を公開した。

 スコーゲン氏が公開したリファレンスデザインのタブレットは、ワンボタンで着脱できるキーボードドックを備えており、タブレット部の重量は850gで厚さは10mm。Core i5クラスのHaswellを搭載しており、タブレット単体で10時間、ドックに付けた時には13時間のバッテリ駆動が可能になるほか、Windows 8のConnected Standby機能に対応する。

 液晶ディスプレイは13型だが、ディスプレイドライバーの機能を利用して11.6型に縮少して利用することもできるという。液晶の解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)。スコーゲン氏は「現在ハイブリッドPCはやや高めの価格帯になっているが、今後は799~899ドルあたりの価格帯に落ち着いてくるだろう」と述べ、今後ラインナップが増えていけばハイブリッドPCの価格も現在のUltrabook並みの価格になるだろうとした。

 このほかにもスコーゲン氏はOEMメーカーなどと共同で、液晶一体型PCの普及を目指していくことや、Intelが研究している「Perceptual Computing」と呼ばれるジェスチャーや目の動きなどでさまざまな操作を行なうデモなどを見せ、今後PCにそうしたイノベーションを持ち込むことで、PCをもっと便利なモノにしていきたいとした。

第4世代Coreプロセッサ(Haswell)の特徴を説明
着脱式のハイブリッドPCとなるNorth Cape
このように分離して利用することができる。タブレット部は850gで厚さは10mm、Core i5クラスのHaswellを搭載、タブレット単体で10時間、ドックにつけたときには13時間のバッテリ駆動可能。Windows 8のConnected Standby機能にも対応している。
液晶ディスプレイは13型だが、ディスプレイドライバーの機能を利用して11.6型に縮少して利用可能。縁がギリギリなので持ちやすくしたいときに利用する
裏側
横から見ると、PCとしてのコンポーネントが入っているとは思えないぐらい薄くなっている

(笠原 一輝)