Ultrabookの無線給電やHaswellでのSkyrimの動作デモなど
IDF 2012は、その名の通り開発者向けの会議であるため、展示会場などには設計や分析を行なうための高価な機材などが所狭しと並ぶ。本稿では、その中からコンシューマに関連するもので、おもしろかったものについてご紹介する。
●Haswellの実動デモ今回のIDFでは、2013年上半期に投入予定の第4世代Coreプロセッサこと「Haswell」について、さまざまな情報が開示された。詳細は後藤氏の関連記事に譲るが、Haswellは現行のIvy Bridgeと同じ22nmプロセスを利用しながら、命令セットや同時発行数の拡張および細かな電力制御などにより、消費電力を下げながら、性能を引き上げている。
グラフィックス性能については、基調講演でIvy Bridgeと同じTDPなら2倍、性能を同等に保てば消費電力を半減できるという説明があったものの、まだまだ詳細はベールに覆われている。
そういった中、展示会場でおそらく唯一Haswellに関して行なっていたのが、RPG「Skyrim」の実動デモだった。このデモ機について明らかにされていたのは、CPUがモバイル向けのHaswellであることと、グラフィックコアがGT3であるということ。Haswellでは、グラフィックコアにGT1、GT2、GT3の3種類のバリエーションがあり、GT3が最も高性能となる。
ゲーム側の設定は、解像度が1,920×1,080ドット、アンチエイリアスがなし、異方性フィルタリングが8サンプル、テクスチャがハイ、ラジアルブラーがミディアム、シャドーがハイ、ディカルがハイといった感じで、そこそこの高負荷となっている。
画面にフレームレートが出ないので、あくまでも見た目での感想となるが、この状態で、30fpsに近いスムーズさが得られていた。つまり、Haswell世代になると、ノートPCでもハイエンドクラスのゲームが快適に動作する可能性がある(UltrabookでGT3が搭載できるのかはまだ分からないので)ということで、期待が高まる。
基調講演でデモされたHaswellの開発基板 | Skyrimのデモ機。左はIvy Bridge、右がHaswell。 | Haswell機のSkyrimの設定。ちなみにIvy Bridge側は、WXGAで低品質設定となっていたので、同じ設定での比較はできなかった |
【動画】HaswellでのSkyrimのデモの様子 |
●2013年は無線給電と4Kが普及か
このほかIntelは「次世代的」展示を2つほどしていた。1つは、Ultrabookによる無線給電だ。これは、PC本体を給電するものではなく、PCから周辺機器を無線で充電するものだ。
試作機のUltrabookにはHDDのスペースの部分を利用してIDT製の無線電力トランスミッタを内蔵。充電させる端末として、専用のレシーバを内蔵したケースに入れたスマートフォンを用意していた。ケースはプロトタイプではあるものの、それほど仰々しくはなく、ちょっとした出っ張りを除けば、普通のケースと言っても通じる程度の大きさ。これで、トランスミッタの真横に置くと、3Wの出力で充電できる。Intelでは、現時点で対象端末としてスマートフォンのほか、液晶一体型でキーボード、マウスあたりを想定しているという。
市場投入は2013年の第1四半期と、そこそこ早いのは、この技術がIntelのCPUやチップセットには依存しないため。
ただ、まだはっきりしないのが、Intelがこの技術をどうやって訴求、展開していくかだ。現時点での説明を聞く限り、Intelが規格化を行なって、先導していくわけではないらしい。規格が乱立すると、端末側の対応(例えば、場所によってケースを使い分けるなど)が難しくなるため、既存の技術を使ってくれた方がユーザーとしてはありがたい。
だが、IDTはIDFに先だってWireless Power ConsortiumのQi規格に準拠した製品を発表しているが、IntelとしてQiを推している様子も見られない(実際IntelはWPCには加盟していない)。技術としては誰にとっても便利なものなので、Intelには、市場を混乱させずにうまく立ち上げていって欲しい。
無線給電対応Ultrabookとスマートフォンのプロトタイプ。両者をくっつけるとスマートフォンへの充電が始まる | スマートフォンはこのカバーの中にレシーバを内蔵 | UltrabookはHDDのスペースに無理矢理トランスミッタキットをつけていたが、実際の製品ではきちんと内蔵できる |
もう1つの技術は4Kだ。4Kディスプレイは、PCよりも先行して民生品が出始めているTV業界でもほんの一握りしか製品が出ていない状況。PC業界では、国内ではナナオが2011年9月に36.4型の製品を発売したが、その価格は300万円近く、需要があってもまだまだ一般ユーザーが購入できるような代物ではない。
しかし、Appleが「Retina」というキーワードで超高解像度製品を投入し始めたこともあり、PC/IT業界における4Kディスプレイへの関心は、興味本位の範囲を超えて、徐々に高まりつつある。実際、4Kディスプレイの先駆けである東芝ではすでに2013年にもdynabookに4K出力機能を搭載させることを検討しているという。
そういった中Intelは、現行の第3世代CoreプロセッサのIntel HD Graphics 3000を使った4K表示のデモを行なった。
デモは2種類あり、1つはナナオの4K対応ディスプレイとHPのノートの組み合わせ。HPノートのドッキングステーションにある、DisplayPortを2つ使ってディスプレイに接続。もう1つはフルHDディスプレイ4台を組み合わせて仮想的に4Kとしたもので、こちらも小型PCのDisplayPortを2基使い、それぞれをスプリッタで2つのDVIに分配。計4つのDVIから4台のディスプレイに接続していた。
ナナオのディスプレイの方では4K動画を再生していたが、Intel HD Graphicsのデコード機能で十分事足りるため、CPU負荷は2%程度に留まっていた。4台構成の方は、もう少し手の込んだ複数動画表示を行なっていたが、それでもCPU負荷は2割前後だった。
もちろん4K表示にあたっては、対応のディスプレイドライバが必要となるのだが、これは10月にも一般公開の予定という。後は、PCにDisplayPortが2基あれば、4K出力ができるようになる。
なお、HaswellではDisplayPort 1.2に対応する。1.2ではバンド幅が拡張されるため、ケーブル1本で4K出力ができるようになる。
ナナオの4Kディスプレイ | つないでいるのはHPのノート1台 | このノートのドッキングステーションにはDisplayPortが2基あり、これを使って4K出力している |
Ivy Bridgeでの4K動画再生時のCPU負荷はほぼゼロ | こちらはフルHD×4を使った4K表示 | DisplayPort×2からスプリッタでDVI×4に分岐させ、つないでいる |
●そのほか
Intel以外の展示では台湾Genesys LogicのUSB 3.0コントローラを紹介しよう。
「GL3620」はUSB 3.0接続に対応するWebカメラコントローラ。USB 3.0に対応することで、1080pで90fpsという高速撮影ができる。また、2つのカメラセンサーに対応するのも特徴で、これによって1080p 30fpsでの3D撮影ができる。コントローラもサンプル基板も十分小さく、従来のWebカメラと同じ大きさで製品化できそうだ。出荷開始は2013年の上半期。Windows 7/8に対応する。
このほか、同社はUSB 3.0対応のHubコントローラ、カードリーダコントローラ、SATA 6Gbps変換コントローラなども展示。Hubコントローラの「GL3520」は低消費電力をウリとしており、USBメモリ3本とSSDをつないでもバスパワーだけで駆動できる様子をデモしていた。
会場ではこのほかに、未発売のものを含めた各社のUltrabookが展示。ただし、この場で初お披露目のものはなく、過去のIFAやCOMPUTEXなどで公開済みのものなので、写真にて紹介する。
(2012年 9月 14日)
[Reported by 若杉 紀彦]