【COMPUTEX 2011レポート】
【Kingston編】iPad/iPhone用ワイヤレスストレージや自動OCメモリ

発表会にはスーパーモデルが登場し製品に色を添えた

会期:5月31日~6月4日(現地時間)
会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
   Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
   Taipei International Convention Center

●iPad/iPhoneとワイヤレス接続する外部ストレージ

 メモリメーカーのKingstonはCOMPUTEX会場近くにおいて新製品発表会を開催した。特に力を入れていたのが、iPad/iPhoneで利用できる外部ストレージ「Wi-Drive」だ。

 iPad、iPhoneにはSDカードなどの外部ストレージを拡張する手段がなく、本体内にあらかじめ用意されたストレージにデータが置かれる。この容量で不足するような場合に、オンラインストレージなどを活用する人もいるだろうが、オンラインストレージへはインターネットアクセスが必要になるため、どこででも利用できるというわけではない。

 Wi-Driveはこうした制限を取り払うソリューションとして提供するものとしている。iPad、iPhone、iPod touchで利用が可能で、Wi-Drive内にはモデルにより16GBまたは32GBのフラッシュメモリを内蔵。Wi-DriveとiPadなどの間をダイレクトにWi-Fiで接続。Wi-Drive内のデータを無線LANを使って読み出すことができる。Wi-Drive自体にもバッテリを内蔵しており、最大4時間のバッテリ駆動が可能だ。

 Wi-Driveへの接続は、まずiOSの通常の無線LAN接続を行なう。無線LANアクセスポイントとなる機能を実装しているので、別途APが必要になることはない。また、最大で3台までのクライアントを接続できる。

 Wi-Fi接続が確立したら、専用のアプリケーションを利用して、画像・音声・動画などを読み出す。アプリケーションはApp Storeからダウンロードできる。

 発売は7月4日を予定。価格は16GBモデルが130ドル、32GBモデルが175ドルとしている。

 ちなみに、現状ではWi-Driveへデータを書き込むことができるのはPCのみで、iPadなどの上で動作するWi-Driveのアプリケーションからは読み出ししかできない。これについては、書き出しが可能になるようアプリの機能拡張を検討しているという。

 また、Androidなどその他のデバイスでのサポートについては未定。特にAndroidについてはmicroSDなどを装着できる端末が多いのでニーズが少ないのではないかとしているが、要望があれば提供するかもしれないとした。

7月発売予定のWi-DriveUSBコネクタは充電用。左側にあるボタンがコネクトボタンで、これを押すことで接続準備状態になるWi-Driveの利用方法。PCからWi-Driveへコンテンツを転送。iPadなどからは、専用アプリを使って、Wi-Fi経由でデータを読み出す
Wi-DriveにAP機能が内蔵されているので、インターネットアクセスや独立したAPは不要データの読み出しは専用のアプリから行なう。このアプリはApp Storeで提供されるアプリ上では接続先Wi-Driveの選択、Wi-Drive上のコンテンツ再生が行なえる

●SSDやメモリモジュールの新製品

 PCパーツ系の新製品では、Kingstonとしては初めてとなるSATA 6Gbps転送対応のSSD「HyperX SSD」が発表された。120GBモデルと240GBモデルが提供される。

 ハードウェア仕様は他社のSATA 6Gbps対応SSDで多く採用されている、SandForceのSF-2281をコントローラに利用し、NANDフラッシュはIntelの25nm品を使っている。このIntel製NANDは5,000 Program/Erase Cycleのものを利用しており、現行の製品で3,000 Program/Erase CycleのNANDを用いたSSDが多い中で高い耐久性を持つことを1つのポイントに挙げている。

 転送速度は両モデルとも、リードが最高525MB/sec、ライトが最高480MB/sec。4Kランダムリードは両モデルとも最高95,000IOPS、4Kランダムライトは120GBモデルが最高70,000IOPS、240GBが60,000IOPSを公称している。

 パッケージは通常のSSDのみのパッケージのほか、2.5-3.5マウンタやマルチ(3種類)のビットを取り替えられるドライバー、SATAケーブルなどを同梱した「Upgrade Kit」も提供される。

SandForce SF-2281をコントローラに採用するSATA 6Gbps対応SSD「HyperX SSD」。Upgrade KitにはSSDのデザインにマッチするマウンタが付属するデモでは500MB/sec近い実効速度を示すことをアピールしたパッケージは2種類を提供。Upgrade Kitにはマルチビットドライバーも付属する

 DRAMモジュールでは、担当者が「自動オーバークロックを意味するPlug and Play Memory」メモリと説明する「HyperX PnP」のデモも実施されていた。展示機では、装着して起動するだけで、BIOSで設定することなくDDR3-2133で動作する製品のデモが行なわれた。

 ただ、自動オーバークロックという表現はやや誤解を招くかも知れない。仕組みは、JEDEC準拠のSPDの1番目にオーバークロック設定のプロファイルを書き込んでおき、起動時にBIOSがそれを呼び出すことで、DDR-2133といったオーバークロック状態で動作する。

 こうした仕組みであることから、メモリコントローラの耐性によっては装着しても起動しない可能性があることは認めている。そのため、本製品はこのクロックで動作する可能性が高いSandy Bridge用として展開している。

自動的にDDR3-2133相当で起動する“Plug and Plug”の仕組みを盛り込んだ「HyperX PnP DDR3-2133」SPDの最初のプロファイルにDDR3-2133相当の設定が書き込まれている。より高クロックのプロファイルも書き込まれており、これらはBIOSから指定することで選択される

●USBメモリ用プリロードアプリでSymantecなどと提携

 このほか、Kingstonでは「urDrive」という、USBメモリ上で動作するプリロードアプリを提供している。これはUSBメモリをPCに装着することで起動し、独自のフレームワーク内でコンテンツ再生やアプリケーションを実行できるというもの。例えばネットカフェや共有PCにおいて、利用したいアプリケーションを実行したり、履歴を残さずにWebブラウズを行なうなどの活用が可能だ。

 このurDriveは2010年に最初のバージョンがリリースされているが、2011年第3四半期末にはユーザーインターフェイスを変更したVersion 2をリリースすることをアナウンス。

 また、urDrive上ではWindows上で動作する汎用アプリを実行できる、urDrive用のアプリが必要になる。このアプリの充実がurDrive普及の鍵になるといえるが、今回の発表会では、Symantecによるアンチウイルスソフト、Electronic ArtsやPopCapによるゲーム、MaxthonによるWebブラウザの提供に向けた、協力関係の構築が発表された。

 これらの企業によるアプリは、Version 2リリースのタイミングで提供を開始される見込みとしている。また、Version 2をインストールした状態で出荷されるKingston製USBメモリには、Symantecのアンチウイルスソフトや、MaxthonのWebブラウザなどもインストール済みで提供される予定としている。

USBメモリのプリロードアプリケーション「urDrive」は、今年第3四半期末にVersion 2の提供を開始するVersion 2の大きな変更点はユーザーインタフェースで、Version 1とは様変わりしたダッシュボードとなる
Version 2上で動作するアプリの開発で、Symantec、Electronic Arts、PopCap、Maxthonとのパートナーシップを発表したSymantecのアンチウイルスソフトの画面。インターネットカフェでの利用が想定されている

(2011年 6月 3日)

[Reported by 多和田 新也]