【IDF 2010レポート】
ダディ・パルムッター氏基調講演
~Sandy Bridgeが持つ可能性をデモを交えてアピール

主席副社長兼Intel・アーキテクチャー事業本部長のダディ・パルムッター氏

会期:9月13日~15日(現地時間)
会場:米国サンフランシスコ モスコーンセンター



 9月13日に開幕したIntel Developer Forum 2010の初日基調講演は、社長のポール・オッテリーニ氏に続き、主席副社長のダディ・パルムッター氏が登壇した。アーキテクチャ事業本部長の肩書きを持つ同氏は、今回のIDFのトピックである「Sandy Bridge」の話題が中心ではあるが、内容はもっと広い視野を持ったものとなった。

 同氏は冒頭、実現不可能だと思われたことををさまざまなアイディアで乗り越え、実現してきた人類の歴史をコンピュータになぞらえた。当初はパンチカードで数値入力していたものがGUIになり、現在では写真やビデオといったさまざまなデータタイプが処理されている。そしてパルムッター氏は、時代はデータをトランスコードして格納、再生するだけでなく、そのデータを分析/解析するなど、もっと能動的に使いこなしていく時代になっていると考えていると述べた。

 UIにしても、コンピュータをもっと直感的に使えるようにしたいという。例えば、自然入力をするにあたり、同じ文章を表現する方法は人によって身振り手振り、声色、表情などが異なる。しかし、将来のコンピューティングでは、ジェスチャーや感情を認識できる時代になるとした。

黄色い部分が3Dカメラで認識した人の映像で、すべてのモーションをトラッキングする

 ここで、GestureTekが20年以上に渡って開発を続けてきたというジェスチャー認識のデモが行なわれた。3D(深度と思われる)カメラを用いて人間の動きをトラッキングするというもので、人間のすべてのモーションをトラッキングしているという。現在ではCPUですべてを処理できるので、センサーのついた衣装などを着る必要もなく、3Dカメラを1万ドルから約150ドルまで低価格化。将来もっとプロセッサパワーが上がり、3Dカメラが安くなればなるほど使いやすいシステムになると期待を寄せた。

 またOracleのプロダクトマネージメント副社長も登壇し、同社のデータ分析ソリューションの紹介を行なった。現在は小売り業界を中心にユーザーが増えており、同時処理するユーザー数が爆発的に増えているという。OracleではIntelの「Westmere-EX」のサーバーを活用して、優れたパフォーマンスとスケーラビリティを提供していくとした。

 このWestmere-EXはパルムッター氏の基調講演で最初に紹介された新製品だ。Nehalem-EXの後継となる32nmプロセスのサーバー向け10コアプロセッサで、Hyper-Threadingテクノロジにより、20スレッドを並列実行可能。メモリ容量はNehalem-EXの2倍相当となり、1DIMMあたり32GBに対応。4CPU/64DIMMソケットのシステムで最大2TBのメモリ容量を実現する。このプロセッサは来年前半に登場するという。

ディスプレイの下に設置されたカメラプロセッサパワーが増したことで普通の衣装を来た人間の動きを解析できるようになった今では、センサーをつけた衣装などは不要であることを強調
32nmプロセスで製造される10コアCPUのWestmere-EX。メモリ容量はNehalem-EXの2倍にWestmere-EXを搭載したサーバーボックス

【動画】GestureTekのデモ。両手の動きで画像ビューワを操作

【動画】レースゲームのデモ。両手の間隔を広げることでスピードアップするなどの操作も可能

●TDP枠を超えてTurboがかかるSandy Bridge

 続いてパルムッター氏は「性能」について言及。多くの人は、高速な反応と接続性、ビジュアル性豊かな体験を望んでいるとし、そうしたことをシンプルに実現することがIntelの使命であるとした。そして、紹介したのが、Sandy Bridgeである。IntelではSandy Bridgeを、そのような新しいステージのビジュアル体験を提供する「Visibly Smart」(目に見えてスマート)なソリューションと位置づけている。

 Sandy Bridgeは第2世代のHigh-kゲートを用いた32nmプロセスで、10億個のトランジスタを集積。グラフィックスを含む機能をシングルダイに統合したのが特徴となる。この製品を来年前半にリリースすると予告した。

 CPUとグラフィックスを統合したことによるメリットとして、キャッシュを用いてCPUとグラフィックスの通信スループットを向上できる。その接続にはリング型のインターフェイスを採用。スループットは4~5倍に高速化されるという。そして、CPU、メディアプロセッサ、グラフィックス機能を含めて電力管理も統合することで、電力効率も改善した。

 Nehalem世代から組み込まれたTurbo Boostも強化。これまでは熱設計の予備の部分を使ってオーバークロックしていたものを、熱設計の限界を超えてオーバークロックすることを可能にしている。また、モバイル向けのArrandaleのように、CPUとグラフィックスの双方をクロックアップできる。これにより高速なレスポンスが実現されるとしている。

 また、Sandy BridgeはPCだけでなく、来年前半のエントリーサーバー向けを皮切りに、サーバー分野にも広げていくロードマップを示した。

スライドのような反応時間に収まることが多くの人に望まれているというIntelではSandy Bridgeを「Visibly Smart」なビジュアル体験を実現するものとしているSandy BridgeはCPUとグラフィックス機能を1つのダイに統合。リングバスを通じてキャッシュやシステムエージェントなどと通信する
Turbo BoostはTDP枠を超えてオーバークロックできるよう強化。写真の白い部分がそのことを示している同じようにグラフィックスプロセッサもオーバークロックが可能新しいCore iシリーズのロゴ
XeonのラインナップにもSandy Bridgeが投入されていく。ロードマップでは次世代のIvy Bridgeの計画も示されている

 最後にパルムッター氏が基調講演中に示した、Sandy Bridgeを使ったデモを紹介しておく。内容は、ハイダイナミックレンジ(HDR)の画像生成、ビデオトランスコード、住宅インテリアのレンダリングの3つ。また、SIXENSE Entertainmentを招いて行なったスマートセンサーとコンピューティングを組み合わせたというデモでは、手に持った2つのコントローラを動かすことで、画面内のオブジェクトを自由自在に操作できるというもの。浮動小数点演算を多用したアプリケーションとのことで、AVXを含めてCPUとGPUのベクトル演算をフル活用しているという。

 このようなスマートセンサーとコンピューティングパワーを統合させて活用することのビジネス機会は、限りないものであるパルムッター氏は述べており、デベロッパに向けて、こうした活用を行なってプロセッサのコンピューティング能力を最大限に活用してほしいと訴えた。

Sandy Bridgeのデモで使用されたノートPC同じくSandy Bridgeを搭載するAcerのオールインワンPC。TDP45WのCPUを用いているという

【動画】HDR画像生成のデモ

【動画】CyberlinkのMediaShowEspressoを用いた1080p→iPod用動画へのトランスコードデモ

【動画】内装のレンダリングデモ。最下部のプログレスバーの動きで進捗が分かる。左のNehalemはSSE、右のSandy BridgeはAVXを用いている

【動画】SIXENSE Entertainmentが行ったセンサー内蔵のコントローラでオブジェクトの操作を行なうデモ。浮動小数点演算を多用したアプリケーションとのことで、ここでもAVXが活用される

(2010年 9月 15日)

[Reported by 多和田 新也]