【Microsoft Open House 2009レポート】Bing/Office 2010/周辺機器編
Microsoftのコンシューマ製品が一堂に会する展示イベント

イベントが行なわれたPark Avenue Armory

10月6日(現地時間)開催



 米Microsoftは6日(現地時間)、同社のコンシューマ向け製品/サービスを一堂に披露する「Open House 2009」をニューヨークマンハッタンにあるPark Avenue Armoryで開催した。

 このイベントは今回初めて催されるもので、この年末商戦に向けて発売されるコンシューマ向け製品を一堂に集め、製品担当者立ち会いのもと、製品に触れたり、説明を受けることができる。基本的には同社が招待した報道関係者が参加できるが、家族や友達を同伴することができ、このあたりが「Open House」という名前の意味を示している。

 Microsoftがこういった製品発表会や説明会を行なうことは珍しいことではない。しかし、従来は製品分野ごとに分割され、マウスだけ、OSだけといった形で開催されるのが常だった。このあたりは、2008年に組織変更でコンシューマとオンライン関連が1つの事業部にまとめられたことの表われと言え、報道関係者、ひいてはユーザーにとっても歓迎できる変化と言えるだろう。

 イベントのオープニングスピーチを行なった、同社Entertainment & Divices事業部担当社長のRobbie Bach氏によると、来年以降もこの時期にOpen Houseを開催していく予定だという。

会場内部の様子オープニングスピーチを行なったRobbie Bach氏

 今回は、Windows、Zune、Windows phone、周辺機器/Office/Bing、Xbox、Auto(自動車)の6つの分野に焦点が当てられ、それぞれのブースが設けられた。本稿では、ハードウェア/Office/Bingについて紹介する。

●意志決定を支援するための検索エンジンBing

 まずはBing。Bingは同社が2009年に公開した新しい検索エンジン。基本的に検索エンジンは、Web上の情報を探すために用いるものだが、Bingは同社が「意志決定エンジン」と呼んでいることが示す通り、ユーザーの検索の意図を読み取り、それに即した結果を返すことを目的としており、従来の検索エンジンにはない先進的な機能が盛り込まれている。なお、以下に紹介する機能の多くは、現時点で米国のみで利用可能となっており、日本にも順次展開予定だが、全てが実現するとは限らない。

 では、そのトップページから見てみよう。Bingにアクセスすると、日替わりで背景に写真が表示される。これは無視して検索に飛んでも構わないのだが、写真のどこかしらにマウスカーソルを持って行くと、その写真に関連する豆知識のようなものが表示される。例えば、イタリアのグリンザーネ・カヴール城の場合だと、「この城の名前は、ある貴族の名前にちなんで付けられました。その城の名前は、やがて「賞」の名前となりました」といった具合。そして、そこをクリックすると「グリンザーネ・カヴール賞」についての検索結果画面にジャンプする。これは、何かしらの新しい発見を促すための、ちょっとした仕掛けだ。

日替わりで背景が変わるトップページ何気ない場所にカーソルを持って行くと豆知識が表示され、関連検索もできる今では珍しくないオートフィル機能だが、これも日本語版には実装されてない

「amazon」で検索した場合の画面

 続いて、検索結果の画面を見てみよう。「amazon」で検索すると、そのベストマッチとして、当然のごとく「Amazon.com」のトップページへのリンクがもっとも上に表示される。だが、それ以外にもいくつかのリンクがあることに気づく。

 まず、Amazon.comへのリンクの直下には、同サイトの中で一番クリックされるリンク先がリストアップされる。この場合は、アカウントや、ヘルプ、ウィッシュリストなどだ。

 その下には、Amazon.comの中で検索を行なうための検索フォームがあり、ここから直接、任意のキーワードに対するAmazon.comでの検索結果のページに飛ぶことができる。その下には、Amazon.comのカスタマーサービスの電話番号が表示されている。ここまで見ただけでも、Bingは、Amazon.comの利用者が商品検索や問い合わせを頻繁に行なっているという実態を元に、その行動を支持するような検索結果を表示しているのが分かる。ただし、これは似たような機能はGoogleも実装している。

 独自の機能の1つとして、ページ左側に「Explore Pane」と呼ばれるエリアがある。ここには、検索結果に応じたカテゴリや関連検索へのリンクが表示される。Amazon.comの場合だと、「Catalogue」、「Reviews」、「Movies」といった頻繁に利用されるカテゴリへのリンクが上部に、その下には関連検索として「Products」、「DVD」といったものが表示される。キーワードが人物名なら、カテゴリは「Images」や「Movies」などに変わる。これにより、より少ないクリック、入力で希望する場所に飛ぶことができる。ちなみに、さらに下には、Bingにおける検索の履歴も表示される。

 また、右側には検索キーワードと似たサイトが提示される。Amazon.comの場合だと、eBay、Best Buyといった具合だ。

左側のExplore Paneの上部にあるカテゴリはキーワードに応じて中身が変わる右側には似たサイトも提示される

 続いて、動画検索。「Michael Jackson」で検索を行なうと、Explore Paneのカテゴリの1つに「Videos」が表示されるので、これをクリックすると、動画の検索結果がサムネールで表示される。ここで、サムネールにマウスカーソルを合わせると、サムネールのまま、その動画の冒頭30秒が再生される。

 Explore Paneの左下には、絞り込み検索を行なうための項目が表示される。具体的には長さ(5分未満、5~20分、20分超)、スクリーンタイプ(4:3、16:9)、解像度(低、中、高)、ソース(MSN、AOL、MTV、YouTubeなど)といった具合。このほか、関連人物としてマドンナ、スティービー・ワンダーなどの動画へのリンクも表示される。

ビデオ検索の例。サムネールにカーソルを合わせるとそのままプレビューが表示Explore Paneでは絞り込み検索の指定ができる

 ユーザーの意志を汲み取った検索を的確に示す例としてデモされたのが、著名人、天気、交通といった検索。例えば、「Ichiro」で検索すると、一番上には、所属チーム、直近のゲームの結果、シーズンの通算結果などが写真と表組みにまとめられて表示される。「Weather」(天気)とだけ入力すると、IPアドレスを元に自分のいる地域の天気予報がグラフィカルに表示される。「Traffic」(交通)と入れた場合も、最寄りの幹線道路の渋滞情報が地図で表示される。もちろんこのあたりのサービスは、Microsoftが他社と提携することで提供しているものであり、それが単に翻訳するだけでは他国への展開が実現しない理由でもある。

「Ichiro」での検索結果「Weather」での検索結果「Traffic」での検索結果

 Bingの特徴はこれだけではない。同社がBingを提供するにあたり、もっとも重視している点の1つが、買い物と旅行である。

 Microsftの調査によると、米国では63%のユーザーがオンラインショッピングするにあたり、3~5のサイトで価格を比較し、24%がユーザーレビューを読み、89%が購入の決定に約1日をかけているという。

 そこで、Bingのトップページから「Shopping」を選び、商品検索を行なうと、商品写真と概要とともに、ユーザーのレビュー数、満足度、最低価格なども表示される。リンクをクリックすると、詳細ページが表示され、各ショップでの価格や、レビューの内容などを確認できる。ここで、ユニークなのがキャッシュバック機能で、ここから購入をすると、明示されたパーセンテージ分の小切手が後日Microsoftから送られてくるのだ。つまり、Microsoftに対するアフィリエイトがユーザーに還元されるような形だ。

 ユーザーレビューは通販サイトの口コミによるものだが、商品によっては、これとは別にエキスパートレビューとして、レビューサイトによるレビューへのリンクも用意されている。ちなみに、人気商品や定番商品については、通常のトップページから検索しても、ショッピングへの誘導が最上位に表示される。

「nikon d60」での検索結果。写真があるのがショッピングカテゴリへの誘導クリックすると、サイトごとの価格やキャッシュバックレートが表示各サイトでのユーザーレビューの概要も読める

 旅行についても買い物同様、「Travel」というカテゴリが用意されているが、トップページから「sea to san francisco」(シアトルからサンフランシスコ)と入れただけでも、飛行機チケットの価格比較への誘導リンクが表示される。

 これをクリックすると、カレンダーが表示され、往路と復路の日ごとに価格が表示される。日程が決まっているなら、その先の画面へと飛ぶが、そうでない場合は、画面を下にずらすと、価格推移のグラフが見える。

 これは、過去の実績を元に予測を行なう「Price Predictor」と呼ばれる機能を使っているもので、同じ場所に同じ航空会社でいくにしても、いつが買い時かを知らせてくれる。これはホテルの価格検索にも使え、お得ではない時は、黄色や赤のマークで知らせてくれる。

「sea to san francisco」での検索結果。ここですでに最安値が分かる。またオレンジの右向き矢印は直後の7日間は価格が変動しないことを示すクリックすると、カレンダーが表示され、詳細を詰めることができる
その下には過去の実績から予測される価格の変動チャートが表示ホテルの場合も、その日の価格がお得かどうかをアイコンで示してくれる

ビジュアル検索の様子

 ビジュアル検索も特筆すべき機能の1つ。トップページのカテゴリで「Visual Search」を押すと、書籍、DVD、政治家、各種スポーツなどのジャンルがサムネールで表示される。ここで、「U.S. Politicians」(米国政治家)を選ぶと、それに適合する顔写真がずらりと並ぶ。いずれかの顔写真にカーソルを合わせると、自動的に入力フォームにその氏名が入力され、その下には所属党や年齢なども表示され、クリックすると、その氏名での検索結果が表示される。つまり、ビジュアル検索は、「ビジュアルを」検索するのではなく、「ビジュアルで」検索する機能なのだ。

 ちなみに、この機能はSilverlightを使っているようで、スクロールや絞り込みを行なうと、アニメーションでサムネールが並び変わる。余談だが、ジャンルの中に「FBI指名手配犯」というのがあるのはいかにも米国らしい。

 このほか、Twitter検索機能もあり、5分前までのつぶやきを検索できる。

 なお、ここに挙げた米国版の機能は、日本でも画面右上の「(United States)」をクリックすると利用できる。天気予報や交通など場所が絡むものについては、IPアドレスによる判定はできないので、明示的に地域を指定する。興味を持ったユーザーはいろいろ試してみると良いだろう。

●Office 2010とキーボード、マウス

 Bingの裏手ではOffice 2010のデモを行なっていた。Office 2010は現在テクニカルプレビューの段階で、まだベータにすら至っていない。そのためデモ内容も限定的だった。また、周辺機器についてもすでに日本でも発表/発売されているものなので、写真で紹介する。

Excel 2010Windows Live SkyDriveでファイルをWeb共有するとブラウザ上で共有した人と同時編集できる
ブラウザはIE以外に、FirefoxとSafariも対応するのでMacからも編集できる貼り付ける写真や動画周りの機能も強化。写真では背景を自動的に切り抜ける。画面はWord 2010動画では色やコントラスト、枠などを変更しインライン再生できる。画面はPowerPoint 2010
Bluetooth Mobile Keyboard 6000薄型軽量で、キーボード、テンキーともBluetoothで繋がる折りたたみ可能な「Arc Mouse」各色
720p撮影が可能なWebカメラ「LifeCam Cinema」試作段階の本体も展示こちらはデザインスケッチ

(2009年 10月 7日)

[Reported by 若杉 紀彦]