【IDF 2009レポート】
2009年後半から2010年にかけてのプロセッサ・ロードマップを公開

Intelアーキテクチャ事業本部 オペレーションディレクター兼副社長のスティーブ・スミス氏

会期:9月22日~24日(現地時間)

会場:米サンフランシスコ モスコーンセンター



 Intel Developer Forum(IDF)は、基調講演などの総合的なイベントのほかにも、テクニカルセッションと呼ばれる、Intelのエンジニアが同社の技術や戦略を説明する場などが用意されており、Intelの技術に関してさまざまな情報を入手することができる。また報道関係者向けにも専用のイベントが用意されており、テクニカルセッションの内容で報道関係者が興味ありそうな内容をまとめて見せてくれたりもする。

 今回紹介するIntelのプロセッサ・ロードマップを説明するセッションもそうしたものの1つで、2009年後半から2010年、そして2011年にかけてのIntelのプロセッサ・ロードマップを、Intelアーキテクチャ事業本部 オペレーションディレクター兼副社長のスティーブ・スミス氏が説明した。


●2010年に32nmのWestmereを、2011年には新MAのSandy Bridgeを投入へ

 スミス氏はIntelのロードマップを3つの分野に分けて説明した。それがサーバー、クライアント、そしてネットブック/ネットトップだ。

 サーバーのロードマップに関してはItanium、4P以上のXeon、DP(デュアル)、UP(シングル)のそれぞれの製品に関して説明した。Itaniumに関しては、マローニ氏の基調講演で説明されたとおり、来年の前半にNehalem系とプラットフォームを共通化したTukwila(タクウィラ)がリリースされ、その後32nmプロセスルールで製造されるPoulson(ポールソン)へと移行することになる。その後2011年以降にKittson(キットソン)という開発コードネームで知られる新しいマイクロアーキテクチャの製品がItaniumブランドの分野に投入されることになる。

 4P以上に関してもマローニ氏の基調講演で触れられたとおり、まずNehalemの大規模サーバー版となるNehalem-EXが投入され、2010年以降にその32nmプロセス版となるWestmere-EXが投入される。DPに関しては現在のXeon 5500番台の後継として、32nmのWestmere-EPが2010年に投入され、UPに関してはすでにLynnfieldコアのCore i7/i5が投入済み。また、2010年の第1四半期にはGPUを内蔵したClarkdaleが投入されることになる。

 Xeon系に関しては2011年以降に次世代マイクロアーキテクチャを採用したSandy Bridge(サンディブリッジ)を採用した製品が、4P以上、DP、UPの各市場に採用されることになる。

IntelのサーバープロセッサロードマップNehalem-EXは4P以上の大規模サーバー向けとなるNehalem-EPの後継として投入されるWestmere-EP

●デュアルコアのClarkdale 3.3GHzはクアッドコアのCore2 Quad Q9400 2.66GHzを上回る

 クライアントに関しては、エンスージアストセグメント向けのCore i7 9xx+X58の後継として、Gulftown(ガルフタウン)の開発コードネームで知られる製品を2010年の半ばに投入する。32nmプロセスを採用しており、スミス氏によれば「すでにGulftownはこのように動いている。現行のチップセットとも互換性があり、BIOSのパラメータ調節程度で対応させることができる」とし、基本的には現行のX58マザーボードで利用可能だという認識を明らかにした。もっとも、実際の製品で対応可能かどうかは、マザーボードベンダ次第ということになると、スミス氏は付け加えた。

 メインストリームのデスクトップ向けとしては、すでにクアッドコアのLynnfieldを今月リリースしたが、来年の第1四半期に、デュアルコア版となるClarkdaleが投入される。

 一方、モバイル向けにはまもなくClarksfieldで知られるクアッドコア製品が投入され、2010年の第1四半期にArrandaleで知られるデュアルコア版が投入される。

 そして公式で初めて、デュアルコア版NehalemとなるClarkdaleの性能データを公開した。スミス氏によればClarkdaleの3.3GHzはSPEC int_rate2008でクアッドコアのCore2 Quad Q9400(2.66GHz)と同じ程度の性能で、SPEC fp_rate2008ではCore2 Quad Q9400を上回る性能を発揮するとのことだ。

Intelのクライアント向けプロセッサロードマップ今後NehalemをクライアントPCの各セグメントに落とし込んでいく
Gulftownは6P/12Tという超ハイエンドな製品となるClarkdaleの製品を説明するスライド実働するGulftownのデモ。論理プロセッサが12個存在している。デモには現行のX58マザーボードが利用されている

●Sandy Bridgeの実物チップを公開、ノートPC用パッケージはシングルダイ

 スミス氏はClarkdale/Arrandaleに内蔵されているGPUについても説明した。

 Clarkdale/Arradaleに内蔵されているGPUは、コードネームでIronlakeと呼ばれており、45nmプロセスルールで製造される。GPUのほか、メモリコントローラやPCI Expressコントローラなども内蔵されており、基本的には従来のノースブリッジのチップが、CPUパッケージの中に実装されていると考えて間違いない。

 Ironlakeは基本的に現行のIntel G45/GM45 Expressに内蔵されているGMA4500シリーズの発展系となる。GMA4500からの強化点としては、動画のハードウェアデコーダが2つのHDストリームに対応したこと、プレミアムオーディオに対応したこと、CPUのTurbo Boostのように熱設計の仕様よりも余裕がある発熱量である場合にGPUコアのクロックをオーバークロックする機能が追加されたことなどが挙げられる。

 Sandy BridgeでもGPUは内蔵されるが、Sandy Bridgeではさらに機能が強化され、動画の高画質化/ハードウェアデコーダとなるIntel Clear Video Technologyの機能強化が行なわれるほか、前述のオーバークロック機能が強化される予定だという。

 なお、スミス氏によれば、Clarkdale/Arrandaleに内蔵されているGPUはDirect3D 11(いわゆるDirectX11)には対応していないとのこと(Direct3D 10には対応)で、Direct3D 11にいつ対応するかは「現時点では明らかにできない」とのことだった。

 続いて、Sandy Bridgeの実チップも公開し、デスクトップPC用のヒートスプレッダがついたものと、ノートPC用のヒートスプレッダがない2つのバージョンを見せた。ノートPCのパッケージはダイが露出しているためか、すぐ隠されてしまったが、Clarkdaleとは異なり、1チップであると確認できたので、Sandy Bridgeに関してはなんちゃってGPU統合型CPUではなく、“本物”の統合型CPUである可能性が高い。

 デスクトップ用のSandy Bridgeに関しては、じっくり見せてくれた。スミス氏によれば、外見上の形状は、現行のLGA1156用のものと一緒で、同じCPUソケットで利用することができるのだという(もちろん、実際には対応チップセットが必要になるかもしれないので、現行のマザーボードで利用できるという意味ではない)。

 なお、ネットブック、ネットトップに関しては統合型CPUのPineviewとTiger Pointから構成されるPinetrailプラットフォームが2010年に投入されるという従来の説明が行われたが、特に新しい内容は公開されなかった。

内蔵GPUの進化ロードマップ。Direct3D 11への対応時期は明らかにはされなかったネットブック、ネットトップロードマップ。Pinetrailプラットフォームについて説明されているだけで特に新しい内容はなかった
スミス氏が左手に持つのがSandy Bridgeのデスクトップ版、左手に持つのがモバイル版。このあとモバイル版は隠されてしまったSandy Bridgeのデスクトップ版、形状は現状のLGA1156のMPUとほぼ同じ

(2009年 9月 24日)

[Reported by 笠原 一輝]