イベントレポート

POLAROID、インスタント写真とSNSを繋ぐカメラ

~撮影後に自由にピントをずらせるLYTROも新製品を発表

Photokina 2014の会場「ケルンメッセ」。こちらは南側の入り口で、北側、東側にも入場口を持つ巨大なコンベンション施設

 前回のレポートに続いて、Photokina 2014の展示ホールからスマートフォンやタブレット、ソーシャルネットワークなどに関連するカメラ機器を紹介する。

「Polaroid Socialmatic」。かなり大型だがいかにもPOLAROIDというデザイン。スマートフォンデビューの人にとっては、Instagramのアイコンにも見える正方形のデザイン

 米POLALOIDは、インスタント写真がその場で出力でき、インスタント写真から写真のソーシャルネットワークサービスへと連携可能なカメラ「Polaroid Socialmatic」と、関連サービスを同社ブース内に展示している。

 正面から見ればInstagramのアイコンにも見えるPolaroid Socialmaticだが、デザインとしてはこちらが元祖的な存在。その仕組みから、あえてスマートフォンのアイコンのようなデザインを狙ったものと思われる。OSにAndroidを採用するデジタルカメラである。サイズは132mm四方の正方形で、厚さは30mm。重量は570g。

 Androidを搭載するスマートデバイスであることから、基本的にカメラは個人と結びついていて、利用には関連写真サービスの「Socialmatic Photonetwork」への登録とログインが必要。同時にカメラにも、いわゆる固有IDが設定される。ファインダーはなく、Androidのホーム画面から専用のカメラ機能を起動して、背面の4.5型液晶をプレビュー画面として撮影を行なう。モバイル通信機能は搭載されていないが、無線LANとBluetooth、GPS機能を内蔵している。

 Androidのバージョンは公表されていないが、カメラ機能向けにカスタマイズされている模様。SNSサービスのFacebook、Twitter、Instagramなどのアプリケーションを利用できるが、Google Playのフルサービスが使えるかは不明。ホーム画面にStoreのアイコンは存在する。本体内のストレージサイズは4GB。microSDカードスロットも用意され、撮影した写真は主にmicroSDカード側に保存すると考えていい。

本体色が白のモデルも用意される。レンズの上にはLEDフラッシュも搭載。右上のLCDパネルは、雰囲気などのメッセージのほか、個体IDのQRコードも表示できる
背面にもカメラを搭載。カスタマイズされたAndroidを搭載している。モバイル通信機能はないが、無線LAN、Bluetooth、GPS機能を搭載する
本体側面にはインスタントフィルム排出用のスリットと、本体の開閉ボタンがある
本体内にZinkと呼ばれる、横7.6cm×縦5.1cmのサイズのインスタントフイルムのセットが可能
こちらの側面には、microSDカードスロット、Micro USBコネクタなどを装備。開閉時のヒンジ部分もこちらにある
本体天面には物理的なシャッターのほか、電源スイッチ、リセットスイッチなどがある

 カメラ機能は1,400万画素。プレビュー画面側にも200万画素のカメラ機能が付いている。もちろんPOLAROIDなのでインスタント写真に対応。本体内にZinkと呼ばれる規格のインスタントフイルムをセットして、横76mm×縦51mmのサイズの写真をその場でプリント可能だ。撮影ごとに出力するのではなく、デジタルカメラとして撮影したデータから出力したい写真を選択して使用する。

 こうして出力した写真には、GPSデータをもとにした撮影位置や撮影したカメラの固有ID、そしてSocialmatic Photonetworkへのリンクを記載したQRコードが同時に表示される。正確にはアップロードされた写真に固有IDとGPSデータのExifが含まれているので、そのリンクをQRコードで出力していることになる。

 例えば旅先でこうした写真をピンボードなどに留め置くと、それを見たほかのユーザーが後からQRコードを読み取ることができ、Socialmatic Photonetworkにアクセスしてその写真はもちろんのこと、撮影者が撮ったその他の写真やコメントなども閲覧できる。Polaroid Socialmaticがあれば、同じ写真をほかのユーザーが出力することも可能になる。この部分がPolaroid Socialmaticのポイントで、インスタントフィルムをきっかけにした写真ソーシャルネットワークへの導線を狙っている。

 出展された製品はプロトタイプということで、製品は2014年末から2015年初頭の発売を目指す。まず欧州エリア、北米エリアからの展開。価格は現時点で明らかにされていない。

専用カメラアプリケーションの「Socialmatic」。撮影機能のほか、SNSへのシェア、インスタントフイルムへの出力などもこのアプリケーションから行なう
アプリケーションにはフィルター機能なども搭載。ただプロトタイプのためか、低コスト製品のためか、4.5型のパネルはさほど色再現性の良くないパネルが使われていた
QRコードのスキャン。Polaroid Socialmaticにより生成されたQRコードであれば、撮影者のSocialmatic Photonetworkタイムラインを参照したりすることが可能
出力したインスタントフイルムにはQRコードが付属。これをきっかけにして写真ソーシャルネットワークへの導線にする
Socialmatic Photonetwork。スマートフォンやPCなど他のデバイスからでもアクセスが可能。投稿された写真には、撮影したカメラの固有情報や撮影位置も記録される
カメラ正面のLCDには、固有のQRコードのほか、雰囲気や天候なども表示可能
撮影サンプル。インスタントフイルムで出力できることがポイントで、旅先で知り合った人に渡したり、ピンボードに留め置いて将来的な出会いにも繋がるという
使用するZinkは、3×2インチ(横76mm×縦51mm)のインスタントフイルム
専用革ケースなどのアクセサリも用意される予定
従来モデルの筒型から一転、いかにもカメラらしいデザインになった「Lytro Illum」

 撮影後にピントが変更できるカメラ「Lytro」の新製品「Lytro Illum」。いかにもデジタルガジェットらしい筒型だった前モデルに対して、Lytro Illumは一眼レフカメラに近いデザインになっている。すでに出荷済みで、米国における価格は1,499ドル。

 Lytroの最大の特徴は、撮影したフレーム内の全ての位置に後からフォーカスを設定できるところ。これがいかなるものかはサンプルを見てもらうのが早い。

Lytroの撮影画像。ここではモデルの女の子の顔にピントが合っている
これは、花火の部分をタッチして花火にピントを合わせたところ
さらに、指先にタッチすることで花火にもややボケが加わる

 すでに撮影済みで、1つのファイルとして参照している写真だが、ピントを合わせたい位置をタップすることで、その位置にフォーカスが移動するという仕組みだ。後処理によって、全体をいわゆるパンフォーカスにすることも可能。

 Lytro Illumは35mm換算で30~250mmの光学式ズームレンズを一体化。F値は全域でF2.0。撮影後の後処理でF16まで調整が行なえる。撮像素子は同社がMEGARAY SENSORと呼ぶ40メガピクセル。本体サイズは、166×145×86mm(奥行×幅×高さ)。重量は940g。操作部とプレビュー表示を兼ねる液晶パネルも搭載する。

撮影時の様子。被写界深度を含めた膨大な画像情報を記録する。ここでは手持ちだが、より緻密な撮影には三脚などで固定できる環境が推奨される
プレビュースクリーンはチルトにも対応。上部にはホットシューも設けられている
側面。搭載されるのは35mm換算で、30~250mm相当の光学ズームレンズ。F値は全域でF2.0。後処理を行なうことでF16まで調整をすることができる
プレビュースクリーンが斜めの独自のデザイン。1kg弱の本体をしっかりグリップするため、目線より低い位置に構えることが前提になっていると思われる
ブースの様子。搭載される撮像素子は同社がMEGARAY SENSORと呼ぶ4,000万画素
カメラ単体でもデータの簡易的なプレビューは行なえるが、編集を含む後処理はPCを使って行なうことになる

(矢作 晃)