イベントレポート

IDF基調講演、「Edison」アップデート版や新スマホSoC「SoFIA 3G」をデモ

Intel CEO ブライアン・クルザニッチ氏
会期:4月2日〜3日

会場:Sheraton Shenzhen Futian Hotel

 Intelは、中国・深セン(Shenzhen)市内にあるホテルにおいて開発者向けイベント「Intel Developer Forum」(IDF)を、4月2日〜3日(現地時間)の2日間に渡り開催している。

 IDFは春に中国で、初秋に米国で開催されるのが恒例になっており、今回もその例に沿った形になる。2013年までは中国でも北京市において開催されていたが、2014年はODMメーカーやEMSメーカーなど、IT製品を実際に製造する工場が集中する深セン市に場所を移して開催され、招待制に変更されるなど、よりハードウェアを設計するエンジニアなどにフォーカスした内容になっている。

 初日となる4月2日には、同社CEOのブライアン・クルザニッチ氏、上席副社長兼データセンター事業本部 事業本部長ダイアン・ブライアント氏による基調講演が行なわれた。

 この中でクルザニッチ氏は2013年11月に初めて計画を明らかにした、メインストリーム向けスマートフォンSoC「SoFIA」(ソフィア)の実働デモを初めて公開した。クルザニッチ氏は「11月に計画を発表してから、わずか4カ月でここまでこぎ着けた」と述べ、Intelがこれまでとは違ったスピード感でスマートフォン向けSoCに本格的に取り組んでいることをアピールした。このほか、1月のInternational CESで公開したQuark搭載のSDカード大コンピューター「Edison」の改良版も公開した。

チップ数などが変更されたEdison

 冒頭ではIntel China社長のイアン・ヤン氏が登場し、地元深センの副市長らと挨拶するなど、ちょっとしたセレモニーが行なわれた後、クルザニッチ氏が登壇した。「Intelは中国に30年に渡りかかわってきた。これまでトータルで45億ドルの投資を行ない、現在では7,500人もの社員を雇用している」と中国での取り組みについて説明。現在中国の多数の企業と取引をしているほか、投資部門であるIntel Capitalも中国の企業に投資しており、そのいくつかはすでに株式の公開を行なうまでになっていると説明した。その上で「パートナーが成功すれば、我々も成功する」と、今回で何回か繰り返したこのフレーズで、詰めかけたODM、EMS関係者を前に協力を呼びかけた。

 続けて、「我々の戦略はシンプルで、すべてのセグメントで、Intelアーキテクチャ(IA)の製品がベストになることだ」とデータセンター、PC、モバイル、ウェアラブル/IoTなどすべてのセグメントで、他社製品を上回る製品を投入することで、競争に打ち勝っていくと説明した。

 その例としてデータセンターやPCなどで、IAが市場を独占していることを挙げ、そうした成功を収めている市場でも、新しいイノベーションを投入していくことで、引き続き拡大を目指していくとした。そして、IntelアーキテクチャのSoCを搭載したタブレットの市場規模を4倍にするという同社の戦略について触れ、2014年の末までにIAベースのタブレットが4,000万台出荷できるようになる見通しであると明らかにした。

 ついで、IoT(Internet of Things、何らかのネット接続機能を持った小型デジタル機器)/ウェアラブルについて触れ「我々はIoTやウェアラブルを扱う新しい事業部を設立して取り組んでいる」と述べ、注力分野を強調。その上で、1月のCESで発表したEdisonについて触れ、Edisonが1月のCES後に寄せられたフィードバックを元に改良が行なわれたと説明した。

 今回のEdisonは1月に公開されたものと比較すると、CPUがQuarkからAtom(Silvermont)になり、I/Oポート数も13から30以上に増やされ、別物になっている。クルザニッチ氏は、Edisonを2014年の半ばまでにOEMメーカーなどに出荷し、それを搭載した製品は2014年後半に登場する予定だと説明した。

【お詫びと訂正】初出時に、今回のEdisonを「Quark」ベースとしておりましたが、正しくは「Silvermont」ベースとなります。お詫びして訂正させて頂きます。

Intel China社長 イアン・ヤン氏
地元深セン市政府副市長 陳彪氏
Intelと中国の関わり
中国で多数のメーカーや投資先との協力を行なっている
Intelの戦略は、すべてのセグメントでベストな半導体をIAで押さえていく
Intelの今年のターゲットはタブレットの出荷台数を昨年の1,000万台から4,000万台へと一挙に4倍にすること。実現可能だとクルザニッチ氏
Bay Trail Entryという謎のコードネームもさりげなく入っていた。ローコスト版パッケージを採用したBay Trailのことを意味しているのだと思われる
IoTやウェアラブルには新しい事業部を設立して積極的に展開していく
SDカード大のコンピューター「Edison」の最新バージョン。従来版(リンク参照)と比較してチップが減っていることがわかる

11月に計画を明らかにした3G版SoFIAを実働

 続いてクルザニッチ氏が公開したのは、Intelが昨年の11月に行なった投資家向けの説明会の中でその計画を明らかにした、SoFIA(ソフィア)だ(別記事参照)。SoFIAはIntelが普及価格帯のスマートフォンに向けて開発しているSoC。現行製品になる「Merrifield」や「Clover Trail+」といった製品が、どちらかと言えばハイエンド向けの製品であるのに比べると、より低価格帯向けのSoCになる。

 モデムも標準でSoCに統合されているなどの特徴を持っているほか、ARMアーキテクチャの競合他社の製品に対抗するために、高コストにならざるをえない自社ファブでの生産ではなく、外部のファブを利用して生産するのが特徴だ。Intelは年末までに3Gモデムを内蔵したSoFIAを出荷し、2015年にLTEモデムを統合したSoFIAを出荷する計画を持っている。

 今回公開されたのは3G版SoFIAで、Intelのリファレンスボードに搭載された状態のパッケージが公開されたほか、実際にスマートフォンに実装された状態でAndroidと見られるOSが動いている様子が公開された。「我々は4カ月前の11月にこのプランを明らかにし、そして今それが実際に動かせる」と説明し、従来のIntelのSoCが開発に数年単位を要したのに対して、SoFIAは速いスピードで開発しているとアピールした。

 また、2月のMWCで発表したLTE-AdvancedのCAT6に対応したLTEモデムとなる「XMM7260」についても説明し、実際にデモを行なった。デモに登場したのは、中国LenovoのCEOであるヤン・ユァンチン氏。ユァンチン氏、中国では誰一人知らない者はいないほどの有名人で、会場は大いに盛り上がった。クルザニッチ氏は「XMM7260は中国を含むワールドワイドのLTEに対応し、すでにフィールドテストも行なわれている。複数のOEMメーカーに、Q2には出荷を開始する」と述べ、開発が順調に進んでおり、間もなく出荷が開始されるとした。

 このほか、IoT機器を制御するためのゲートウェイやその開発キット、1月のCESで発表した「RealSense」などの紹介とデモを行なった。

 その上で、地元である深セン向けの発表として、深センに本拠地を置く製造メーカーのサポートなどを対象とした「スマートデバイスイノベーションセンター」の設立、さらに、Intel Capitalが1億ドルを投じてIAベースのスマートデバイス向けのエコシステムを開発するメーカーに資金を提供する「スマートデバイスイノベーションファンド」を設立したことなどを明らかにした。

 最後のクルザニッチ氏はこの公演で何度も繰り返した「パートナーが成功すれば、Intelも成功する」をもう一度繰り返し、詰めかけた深センのOEMメーカー、ODMメーカー、EMSメーカーなどにIntelアーキテクチャの採用を呼びかけた。

SoFIAは外部ファウンダリで製造されるエントリー向けのSoC、3Gモデムが統合されている
SoFIAの開発ボード
開発ボードに搭載されているSoFIA、ロードマップを発表してから約4ヶ月でここまでこぎ着けたというのはIntelとしてはかなり異例なこと
SoFIAを搭載したスマートフォンをデモするクルザニッチ氏
CESで発表したIntel RealSenseを再びデモ
LTE-Advancedに対応したXMM7260
XMM7260を搭載したスマートフォンのデモでは中国Lenovo社CEOのヤン・ユァンチン氏と電話会議。XMM7260を搭載したスマートフォンをLenovoが発売するという示唆なのだろうか
汽車のスケールモデルでIoTのゲートウェイのデモをする予定だったのだが、トラブルで動作しなかった……
ジェスチャーで操作できるクレーンゲームのデモはきっちり動作した。Intelの開発キットを使って開発されたクレーンゲームは、3人のエンジニアが3日で作ることができたという
深セン市にスマートデバイスイノベーションセンターを設立し、OEM/ODM/EMSメーカーなどを支援
Intel Capitalが、スマートフォン、ウェアラブル、IoTなどのコンポーネントなど開発するメーカーを資金面で支援する。総額1億ドル(日本円で100億円)規模になるという

今年後半にHaswell-EPことXeon E5 v3の量産を開始

 クルザニッチ氏の後を受けた登場したのは、上席副社長兼データセンター事業本部 事業本部長ダイアン・ブライアント氏。「現在のデータセンタービジネスは、スマートフォンなどが売れる毎に需要が高まっている状態」と述べた。現在、スマートフォンの需要でサーバーへのニーズも高まり、サーバーの増加により性能に余裕ができると新しいアプリケーションが生まれ、そして新たなスマートフォンの需要へ繋がる……と好循環の中にあると述べた。

 続いて、クラウド、ビッグデータ、HPCの3つの分野についてそれぞれ現状と、それぞれの分野にどのようなIntel製品があるのかというアウトラインを説明した。特にHPCのエリアでは力を入れており、最新のTOP500で1位になっている広州スーパーコンピューティング・センターの「天河二号(Milky Way 2)」を開発したディレクターのXuefeng Yoan氏を壇上に呼び、XeonやXeon Phiなどを搭載していることをアピールした。

 なお、ブライアント氏は今年の後半にHaswellベースのデュアルソケットサーバー向けのプロセッサXeon E5 v3(開発コードネームHaswell EP)を量産開始することを明らかにし、今後も同社のサーバー向けラインナップを拡充していくことで、競合他社との競争に打ち勝つとアピールした。

Intel 上席副社長兼データセンター事業本部 事業本部長ダイアン・ブライアント氏
現在のデータセンタービジネスは、好循環で順調に発展している
スマートデバイスの増加とともに、Intelのデータセンター向け売り上げも増えている
TOP500で1位になっているのは、XeonやXeon Phiを搭載している広州スーパーコンピューティング・センターの天河二号(Milky Way 2)
広州スーパーコンピューティング・センター 中心主任 袁学峰氏
過去15年でRISCベースのサーバープロセッサはほぼ市場シェアが無くなり、x86で97%を占めているのが現状
スライドには特に書かれていないが、HaswellベースのXeon E5 v3を今年後半に量産開始

(笠原 一輝)