イベントレポート

IntelのSDカード型コンピュータ「Edison」の詳細が判明

〜512KBメモリ、2GBストレージ、無線機能などを詰め込む

LVCCの中央ホールに設置されたIntelブース
会期:1月7日〜10日(現地時間)

会場:Las Vegas Convention and World Trade Center(LVCC)、LVH、The Venetian

 PC Watchの読者にとってのIntelと言えば、世界最大の半導体メーカー、PC向けのCoreプロセッサを製造販売し、最近ではWindowsタブレット向けのAtomプロセッサを製造するメーカーというのが一般的な認識だろう。Intel自身が主催するイベントであれば、そうした製品が話題の中心になることが多いが、International CESは“Consumer”Electronics Showの名前の通り、一般消費者向けの製品が話題の中心になる。

 今回Intelは、CESで大きく2つのトピックを押し出している。1つはいわゆるNUI(Natual User Interface)やPerceptual Computingなどと呼ばれる、人間の知覚を利用してコンピュータとのやりとりを行なう取り組みで、ブランドとして「Intel RealSense」(インテルリアルセンス)と命名。3Dカメラを搭載したUltrabook、2-in-1デバイス、液晶一体型デスクトップPC(AIO)などを公開して大きな注目を集めた(詳しくは別記事参照)。

 そしてもう1つが、IoT(Internet Of Things)という言葉で括られることが多い、インターネットに接続する機能を持つ組み込みデバイス向けのソリューションだ。IoTは今年のInternational CESの最大のトピックと言ってもいい。多くのベンダーがIoTへの取り組みを明らかにしており、Intel自身も開幕前日夜に行なわれた、CEOのブライアン・クルザニッチ氏の基調講演(別記事参照)で最も時間が割かれたのがこのIoTに関する話題だった。

 そのIoT関連で、Intelから発表された新しい製品が、開発コードネーム「Edison」(エジソン)と呼ばれるSDカードのコンピュータだ。このEdisonにはIntelが9月のIDFで発表した「Quark」という新しい低消費電力IA SoC、メモリ、フラッシュ、Wi-Fi/Bluetooth通信モジュールなどが入っており、それ単体でコンピュータとして充分動作する性能を持つ。本レポートでは、Intelブースで取材して分かった、Edisonの詳細についてお伝えしていきたい。

SDカードにSoC、メモリ、ストレージ、Wi-Fi/BTモジュールなどをすべて実装

 LVCC(Las Vegas Convention Center)の中央ホールという例年と同じ場所に設置されていたIntelブースでは、Edisonの実物、およびEdisonを利用して試作された各種のデバイスが展示されていた。

Edisonの各部分(Intelへの取材より筆者作成)

【20時35分訂正】記事初出時、図中の説明でメモリ容量が512MBとなっておりましたが、正しくは512KBです。お詫びして訂正します。

 写真を見ると分かるように、Edisonは標準的なSDカードのフォームファクタを備えており、SDカード用のコネクタ部分は電気的にSDIOと互換性がある。かつ、ユニークなことに、SDIOのスレーブ(つまりSDカードとして動作するモード)だけでなく、ホスト側(つまりPCのような本体側になり、別のSDカードを接続して読み書きができるという意味)になることもできる。システム全体の電力はSDカードスロットから供給される電圧3.3Vの電流で供給されており、システム全体でピーク時で1W、低消費電力モードで動かすと250mWと、非常に低消費電力で動くのが特徴になっている。

 表面には、Quark SoC、メモリ、フラッシュメモリ、Wi-Fi/Bluetoothが実装されている。搭載されているQuarkは、2013年9月のサンフランシスコで発表されたQuarkよりもさらに進んだバージョンになっており、22nmプロセスルールで製造され、PentiumクラスでデュアルコアのIAプロセッサが内蔵されている。すでに開発向けのキットとして販売されている「Galileo」(ガリレオ)に搭載されていたQuarkは32nmプロセスルールで、シングルコアとなっていたのに比べると大きく進化している。より本格的に利用できるSoCに近づいた印象だ。

 なお、Pentiumクラスと書いたが、その根拠はISA(命令セットアーキテクチャ)がPentiumクラスという意味で、性能がPentiumクラスというわけではないという。Edisonに搭載されているQuarkの性能は現時点で明らかにされていないが、Pentiumを上回る性能が実現されているという。ただ、ISAはPentiumクラスとなるので、MMX Pentium以降のプロセッサが対応しているMMX、SSEなどの拡張命令はEdisonでは対応していない。つまり、プログラマーがプログラムを書くときにはターゲットとなる命令セットを586(Pentium)に設定してコンパイルなりプログラミングをする必要がある。

 メモリは512KBのLPDDR2が搭載されているが、パッケージ内に封入される形になっている。フラッシュメモリは2GBを搭載。SDカードのインターフェイスを通して読み書きできるようになっており、プログラムのロードはPCのSDカードスロットに挿すだけで簡単にできるメリットがある。また、Quarkのプログラムを利用して、Eye-FiやFlashAirのようなフラッシュメモリの内容をWi-Fiで転送するようなアプリケーションを作ることも可能という。

IntelのEdison。SDカードの中にコンピュータの必要な機能が入っている
赤く光っているスティックはモーションセンサーになっており、そこにもEdisonが入っており、やはりEdisonが入っている青い車をWi-Fiで動かすというデモ
基調講演でも利用されていた赤ちゃんの体温センサー。こうした子守や高齢者介護などの用途の機器もIoTの有望市場として考えられている
こちらは従来の開発キットとなるGalileo、Edisonもこのような形で開発キットとして提供される可能性が高い

裏面にはI2C、I2S、UART、GPIO、PWMを割り当てられるプログラマブルな端子

 フォームファクタでもう1つユニークなことは、裏側にSDIOでは規定されていないEdison独自の信号線が出ていることだ(外見では14個見えるが、全てが使えるかは不明)。この信号線をどのように使うかはアプリケーションによりプログラムすることが可能で、I2C、I2S、UART、GPIO、PWMなどの業界標準のプロトコルを利用して外部とのI/Oに利用できる。つまり、デバイスメーカーはEdisonを利用して製品を作るときの自由度が大幅に上がる。例えば、今回Intelが出展していた赤ちゃんの体温を測るネットワーク体温計などであれば、この信号線を利用して温度センサーと接続しているものと考えられる。

 Intelの説明員によれば、EdisonをGalileoと同じように開発キットとして販売する計画があるという。つまり、IoTデバイスを製造するエンジニアが、Edisonの開発キットを購入して、プログラミングできる予定だという。現時点では、Edisonの開発キットの提供時期や価格などに関しては公表していないが、Galileoの開発キットと同じ程度のコストで配布される可能性が高そうだ。

 ブースでは、Edisonの具体的な開発例として、赤ちゃんの体温をモニターするネットワーク体温計、温度計を組み込んだカップなどを展示していたが、Intelとしてはウェアラブル(身に付ける機器)や高齢者介護などの用途に活用できればとのことだった。

 なお、Intelは新しいIoT向けのソリューションに合わせて事業部を立ち上げている。それがNew Device Group(新型機器事業本部)だ。その事業部長に就任したのは、以前はモバイル通信事業本部をハーマン・ユール氏と共に率いていたマイク・ベル副社長だ。ベル氏は、Intelに入社する以前はPalmでやはり携帯端末ビジネスを率いており、それ以前はAppleで副社長を務めていた人材だ。つまり、携帯端末のビジネスに精通しており、IoTのビジネスを率いていくには最適な人材だと言っていいだろう。

 そうした体制を見ても、IntelがIoTに本気で取り組んでいることは疑いの余地はなく、EdisonはIoTビジネスで先行するARMを追いかけるのに、強力な武器の1つとなるだろう。

(笠原 一輝)