イベントレポート
Intel、「コンピュータは人を感じられるデバイスへと進化する」
~ASUS、Dell、Lenovoの試作PCを公開
(2014/1/8 09:11)
Intelは、International CESが開催されているLas Vegas市内のホテルで記者会見を行ない、同社が研究開発を続けてきたPerceptual Computing(パーセプチャルコンピューティング、知覚利用したコンピュータの利用環境)関連の製品を、「Intel RealSense(リアルセンス)」のブランド名で、2014年にOEMメーカーの製品などに搭載して展開していくことを明らかにした。既にIntelは、Creative Technologyの3Dカメラを開発者向けなどに販売し、対応アプリケーションの作成を呼びかけているが、2014年にはOEMメーカーの具体的な製品に搭載されることで、実際の利用環境が整うことになる。
Perceptual Computingとは、いわゆるNUI(Natural User Interface)として知られている、より人間に取って自然なコンピュータの操作・通信方法のことで、音声認識、ジェスチャー、視線認識などの方法により人間とコンピュータが自然にやりとりができるようにした仕組みのこと。Intelはその第1弾として、2014年にOEMメーカーから出荷されるノートPC、タブレットなどの端末にRealSenseブランドの3Dカメラを搭載し、それを利用したアプリケーションの普及を目指すことで、IntelベースのノートPCやタブレットの魅力を増進させる戦略だ。Intelの上級副社長兼Perceptual Computing事業本部 事業本部長のムーリー・イーデン氏は、このRealSenseを搭載したPCやタブレットが、ASUS、Dell、LenovoなどのOEMメーカーから2014年に登場する予定であることを明らかにした。
Intelが本気で普及を目指しているPerceptual Computing
Intelのムーリー・イーデン氏は、かつてはPCクライアント事業本部の事業本部長として、IntelのPC事業全般に責任を持つ立場だったが、2012年の人事異動のタイミングで、故国となるイスラエルのIntel現地法人の社長に異動。現在は2015年に登場が予定されている次世代プロセッサ「Skylake(スカイレイク)」の開発を担当するなど、依然としてIntelで要職を占めている。そのイーデン氏は、Intelイスラエルの社長とともに担当しているのが、Perceptual Computing事業本部の事業本部長で、OEMメーカーに対するPerceptual Computingのビジョンの説明や戦略立案などを担当している。そのイーデン氏が久々にIntelの記者会見に登場し、Perceptual Computingのビジョンについて説明した。
「ムーアの法則によりプロセッサの処理能力は大きく進化した、数え方によるとは思うが、人間の脳を超えていると言ってもよい。しかし、コンピュータのセンサーの能力はどうだろうか。30年前とほとんど変わっていないと言っても良い。言ってみれば、コンピュータは目や耳などがない状態と言ってもよい。そのギャップを埋める必要がある」と述べた。
「ではタッチが正解なのだろうか? そうではないと思う。なぜなら人と人とのコミュニケーションでも、恋人同士は別にしてもずっとタッチしている人はいないだろう。もっと自然なインターフェイスがあるはずだ」と述べ、スマートフォンやタブレットの普及で進んだタッチUIは過渡期のUIに過ぎないのだと指摘した。その上で、今後はより自然なユーザーインターフェイスとして、音声認識、画像認識、ジェスチャーなど、人と人の間で行なわれているようなコミュニケーションの方法が、コンピュータと人間のコミュニケーションになるべきだと述べた。
その具体的な例として、Intelが2013年のCOMPUTEX TAIPEIで発表した3Dカメラ搭載クラムシェル型ノートPCや、2-in-1デバイス、タブレットなどに組み込んでいく取り組みについて説明した。IntelはPerceptual Computingの取り組みを積極的に行なっており、Intel自らがその要素技術(3Dカメラやセンサーなど)を開発し、OEMメーカーに採用を呼びかけると同時に、ソフトウェア開発者に対してPerceptual Computingに対応したソフトウェアの開発を呼びかけることで、こうした新しい技術の普及で起こりがちな「鶏が先か、卵が先か」という問題を起こすことなく普及を目指すという戦略をとっている。このため、IntelはOEMメーカーに対しては、プロセッサのロードマップと同じように、Perceptual Computingのロードマップというのを作って説明しているほどだ。つまり、Intelは本気でPerceptual Computingを普及させようとしているのだ。
ASUS、Dell、LenovoのノートPCなどに3Dカメラを内蔵した試作機を公開
イーデン氏はそうしたIntelが開発したノートPCやタブレットに内蔵できるほど小型の3Dカメラを紹介し、ASUS、Lenovo、Dellの3社が開発している3Dカメラ内蔵ノートPC、Ultrabook、2-in-1デバイスを紹介した。
イーデン氏は「我々はOEMメーカーと密接にやりとりしており、3Dカメラの機能を標準機能として実装していきたい」と述べ、こうした機能の普及にIntelとして真剣に取り組んでいることを強調した。イーデン氏が公開した3Dカメラモジュールには、2つのレンズと1つのレーザーセンサーが用意されており、XY(縦横)方向だけでなく、Z(奥行き)方向も測ることができることが特徴になっている。ちょうど、MicrosoftがXbox向けに展開しているKinectが、ノートPCに標準で入ってしまうと言えば分かりやすいだろうか。イーデン氏によれば、前出の3社以外にも、Acer、NEC、HP、富士通がこの取り組みに賛同しており、今度対応製品を投入する予定であることが明らかにされた。
イーデン氏は「Perceptual Computingは用語としてちょっと難しすぎる。そこで我々はこれをIntel RealSenseと名付けることにした。最初の製品は3Dカメラになるが、それだけで終わるわけではない。今後、それに続く多数の製品を投入する予定だ」と、今後はさまざまなセンサーをPCにどんどん投入していく意向を表明した。
これまではSF映画の中でしか見られなかったコンピュータと人の関係が現実になる
その具体的な製品についてイーデン氏は特に言及しなかったが、そのヒントをデモの中にちりばめた。今後IntelがRealSenseで目指していく方向性について「5つの方向性がある。それが認識と共有、共同作業、自然で双方向な操作、娯楽、学習と教育の5つだ」と述べ、人間同士で普通に行なわれているコミュニケーションをコンピュータと人の間でもできるように開発をしていくという。
その方向で多数のデモが行なわれ、認識と共有という分野であれば、フィルターで個人を特定し、それ以外は背景として扱う技術、3Dプリンタ、MicrosoftのSkypeを利用している時に背景を他の場所に切り替える技術、アプリケーションの操作をジェスチャーで行なう技術、視線でGoogle Mapsを操作する技術、さらにはNuanceのDragon Assistantという技術を利用した自然音声認識、ARを利用したゲーム、母親が読む本に連動してAR表示が変わる技術などを紹介した。
最後にイーデン氏は「こうした技術はこれまではスタートレックみたいなSFの世界の中での話だけだった。だが、それは今後リアルになるだろう」と述べ、Intelが本気でRealSenseの普及に努め、コンピュータと人間の関わり方を変えていくのだと強い決意を表明して記者会見を終了した。