イベントレポート

Mobile World Congress 2013が25日から開幕

~プレイベントが続々とスタート。市内各所でNFC体験も実施

会場:Fira Gran Via

会期:2013年2月25日~28日(現地時間)

 スペインのバルセロナにおいて、モバイルサービスにおける世界規模の展示会「Mobile World Congress 2013」が、2月25日(現地時間)に開幕する。展示会場は2012年まで使われていたモンジュイックの丘の裾野にある「Fira de Bercelona」から、2013年より同じバルセロナ市内で最大22万平方mのより広い展示スペースが確保できるコンベンション施設「Fira Gran Via」へと移動した。Mobile World Congressの2012年開催実績は1,500を超える出展企業、67,176人の来場者となっているが、主催者であるGSMAはモバイル関連市場の拡大を背景に、2013年の来場者を7万人以上と見込んでいる。

 Mobile World Congressでは、端末メーカー、回線キャリア、部品メーカー、ソリューション企業、ソフトウェア企業など、モバイルに関するありとあらゆる各国の企業が一堂に会してブース展示や基調講演そしてカンファレンスなどが4日間にわたり開催される。

新会場となる「Fira Gran Via」のメイントランス付近の様子。全部の8つの大型ホールで構成される新会場は、従来よりも展示規模を大幅に拡張できる
参加者はリピーターが多く、また新会場へのアクセスは旧会場の最寄り駅だったEspanya駅でFGC路線への乗り換えが基本になるので、地下鉄構内のいたるところに乗り換え誘導の案内標識が設置されていた

NFCの本格普及に向けた大規模な試験サービス「NFC Experience」を実施

 2013年の新たな試みとしては、NFC技術の積極的な採用が注目の1つとなる。日本市場においては、FeliCaを使った決済ソリューションとしておサイフケータイはすっかり定着したサービスだが、世界的に見ればNFCの普及はまだまだこれからというのが実情だ。そこでMobile World Congerss 2013(以下、MWC 2013)では「NFC Experience」として、さまざまな取り組みが行なわれる。

個人情報は隠させてもらったが、NFC搭載のGalaxy Nexusに「NFC Badge」をインストールして登録した様子。下段にBadge Activeの文字が見え、有効化された。これを入り口で読み取り機にタッチして入場する

 まず、入場バッジをNFC対応のスマートフォンに置き換えることができるようになった。従来は来場者登録の証である非接触式のICタグが内蔵されたバッジが提供され、パスポートなどの顔写真の付いた公的身分証明提示を組み合わせた入場管理を行なっていたが、2013年には専用のMobile端末向けアプリケーションを配布している。NFCを搭載するAndroid 4.x、Windows Phone 8、Brackberry 7.1のいずれかの対応端末にこのアプリケーションをインストールして、チケットおよびインカメラなどで撮影した自身の写真を登録して紐づけることで、従来の方法に変わってスマートフォンをかざすだけで本人認証を行ない、よりスムーズな入場手続きが行なえる仕組みになった。

会場に入場する2つの方法。NFC対応のスマートフォン向けに提供されるアプリケーションにパーソナルデータを登録し、読み取り機にタッチしてして入場。従来方式も利用できる
登録会場となる1ホールの様子。こちらからも会場への入場が可能で、スマートフォンでの入場口と、バッジ+写真付の公的IDでの入場口が左右に振り分けられている
約3,500人の参加者に配布されたソニーモバイルコミュニケーションズ製の「Xperia T」。会場内をはじめ、市内の商業施設、タクシーなどでNFCを使った決済が行なえる

 NFCを使った決済サービスもMWC 2013の開催にあわせてバルセロナ市内各所で導入される。具体的には約3,500人の来場者にNFC対応のスマートフォン「Xperia T」を提供。あらかじめチャージされている15ユーロを使って、会場であるFira Gran Via内でNFCを使った買い物ができるほか、バルセロナ市内における約16,000の商業施設でも利用できるという。市内を走るタクシーのうち約1,000台にも同様の決済システムが搭載される予定だ。バルセロナ市内全域には1万台を超えるタクシーがあると想像されるが、ざっと10台のうち1台が対応するものと推定される。弊誌スタッフにもXperia T数台が提供されており、こちらは実際に利用したレポートなどをお届けすべく検討している。

 もちろん日本市場から見れば、これらはすでにごく当たり前に日常利用しているサービスに過ぎないかも知れないが、世界市場で見れば今イベントは市内全域を巻き込んだかなり大規模な試験サービスと位置づけることができる。このNFC Experienceの実施にあたっては、モバイル・ワールド・キャピタル、カイサバンク(CaixaBank)、ジェムアルト(Gemalto)、テレフォニカ(Telefonica)、ビザ(VISA)の協力による決済システムが利用される。そのほか、会場内各所にNFCを利用したURLタグ情報を配置するなど、会期を通じてさまざまなNFCサービスが展開される見通しだ。出展者側でも、NFCを利用したアプリケーション、製品、サービス、ソリューションから優秀なものを選出するコンペが行なわれる。

大手出展企業が次々にプレスカンファレンスを開催。

 会期前日にあたる2月24日(現地時間)の午後からは出展企業が先行して新製品発表会などを開催している。24日に行われた主な新製品発表会は、Acsendシリーズの新端末を発表したHauwei Device(ファーウェイ・デバイス)、モバイル端末向けにFirefox OSを提供するMozilla Foundation(モジラ・ファウンデーション)など。これらのプレスカンファレンスは別稿で詳しく紹介する。

Hauweiのプレスカンファレンスでは「Acsend P2」が発表された
Firefox OSのプレスカンファレンスに登壇したMozilla CorporationのCEO、Gary Kovacs氏
Firefox OSを搭載して発売されるアルカテル・ルーセントの「Alcatel One Touch Fire」

 また併催イベントであるShowStoppers、Mobile Focus Globalも相次いで開催されており、25日から会場内で展示される新製品やサービスの一部がメディア向けに先行公開された。こちらも予告編代わりに展示されていた主な製品やサービスを数点ずつ簡単に紹介するが、個々の詳細は追って掲載する。

Show Stoppers
バルセロナを代表する観光スポットの1つ、オペラハウスの「リセウ大劇場」を会場にしてShow Stoppersは開催された。ホワイエでは、ストリングスによる演奏も
2月15日に発表されたPowerSkinの「Pop'n battery for the Apple iPhone 5」。吸盤でiPhone 5に吸い付くユニークな構造
iFrogsのiPhone 5向けアナログコントローラ「CALBER ADVANTAGE」。使わないときは内側にスライドさせて収納できる。iPhone 5とはBluetoothで接続する
ViewSonicによるAll-in-One型のAndroidパソコン「VSD241」。24型のIPS液晶パネルとマルチタッチ入力を備える。NVIDIAのTegra 3プロセッサを搭載
Mobile Focus Global
24日(現地時間)の夜に開催されたのはPepcomが主催する「Mobile Focus Global」。こちらはギターによる生演奏が会場内に流れていた
mophieのiPhone 5向けパワージャケット。2月7日に発表済みのJuice Pack helium(写真右)に加えて、容量のやや多いJuice Pack Air(写真左)を参考出展した
Bluetooth SIGの展示では、LED電球の点灯色をスマートフォンで変えられる「ZSmart Mood LED」を紹介。フィリップスのHUEはWi-Fi接続だが、こちらBbluetooth接続
米HPによる初の7型Androidタブレット「Slate7」。スペックは別稿にて詳しく紹介する。米国での価格は169ドル
Samsung Mobileが24日(現地時間)に発表した「Galaxy Note 8.0」。文字どおり、Galaxy Noteシリーズの8型版。こちらも別稿にて詳しく紹介する
Duracell PowerMATは、iPhone 5向けのワイヤレス充電ジャケットを展示。充電のためのジャケット、パワーパック、充電台を兼ねた4,000mAhのポータブルバッテリと、スケーラブルな利用を想定する
Qi(Wireless Power Consortium)が参考展示した充電用リング「PowerKiss」のLightning対応版。PowerKissによると、2013年中に欧州エリアのマクドナルドの一部店舗でQi充電ソリューションの実験サービスを実施する予定という

 続いて、会期初日にあたる25日(現地時間)には、NOKIA、Sony Mobile Communications、ASUS、ZTEなどが、続々とプレスカンファレンスを開催予定で、数多くの新製品発表が見込まれている。すでに19日(現地時間)に新しいHTC Oneの発表を行なったHTCを始めとして、Samsung、LGと言った注目企業も以前より規模の拡大したブースで、さまざまな展示を行なう予定だだ。もちろん日本の端末メーカーやキャリア、コンテンツプロバイダなどもMWCへの出展を行なっている。

 プラットホームベンダーであるIntelやNVIDIA、Qualcomm、BroadcomさらにARMなど、PC Wacthとして多いに注目すべき企業も、ブース展示や会期中のカンファレンス等を多数予定している。

 2011年と2012年の2年にわたって大規模なブース出展を行なったGoogleは、2103年にはブース出展からは姿を消す模様だ。2012年はタイミングをあわせてWindows 8コンシューマープレビューの発表を行なったMicrosoftも、MWCの表舞台には登場しない見通し。iOSデバイスで世界中のモバイル市場を席巻するAppleも出展を行なってはいないが、これらの企業がMWCと関連サービスに与える影響力やパワーバランスは、具体的にこそ見えていなくとも会期を通じて随所から感じ取るべきポイントとも言える。

イベント専用アプリケーションもAndroid向け、iOS向けなどが用意されており、GooglePlayやiTunes Storeなどからインストールが行なえる

 PC WatchではMWCで公開されたタブレットやスマートフォンなどの新製品情報をはじめ、展示ブースの模様、各社へのインタビューなどを連日に渡って掲載する。

(矢作 晃)