6月28日(現地時間)、米国サンフランシスコのMoscone Center Westにおいて開催されているGoogle I/Oの2日目基調講演。前日ほどではないが、数千人の観衆を前に、GoogleのChrome & Apps担当上級副社長 Sundar Pichai氏が登壇し、同社のブラウザであるChrome関連の戦略についてスピーチした。
●ChromeがついにiOSアプリとして登場iOS対応を淡々と発表するPichai氏 |
Pichai氏は、過去から現在に至るインターネットトラフィックの変遷図を見せながら、総合的には横ばい気味になっているものの、モバイルは20億ユーザーを超えたあたりで急上昇のトレンドを見せ、2005年から2009年あたりで一気に増えていることを示した。そうした中で、Chromeのユーザーも現在は3億1千万に達し、世界でもっともポピュラーなブラウザに成長したことをアピールした。
今のコンピュータの使われ方として、複数のデバイスを使うことが当たり前になっているとPichai氏。それならば全部のデバイスで同じ体験ができるようになるべきだという。
ここでデモが行なわれた。複数のデバイスが並んでいる。まずは、Macでサイトを閲覧していて、仕事を思い出してChrome Bookを開いてログインすると、さっきMacで開いていたサイトのタブが開いた状態でログインできている。
ここで、あるハム屋のロケーションを検索する。気になる店が見つかってそのロケーションを確認しようとする。その状態で、スマートフォンを手にしてChromeを開くと、さっき開いていたハム屋がリストに見つかり、すぐにそのサイトを開くことができる。しかも、バックキーをタップすると、その検索に使った一覧ページに戻るのだ。戻る進むでさえ同期されている。さらに、タブレットを手にして、検索ボックスで数文字タイプすると、期待した候補が出て、すぐにさっきのページにアクセスできる。こうして複数のデバイスが見事にシンクロしていく様子を披露した。
そして、もう1つ、とPichai氏。まさかのiPhoneを取り出し、さらにiPadを取り出す。両方とも、さっきのデモで開いたタブが開いている。
Chromeだ。これをもって、どんなプラットフォームでもChoromeがいつでもどこでも使えるようになったから、是非使ってほしい。今日からダウンロードできると、iOS用Chromeの配布開始がアナウンスされた。
●Google Driveによるストレージサービスの拡充さらにPichai氏のスピーチはGoogleのストレージサービスDriveの話題に移る。Driveはこの4月から開始されたサービスだが、すでに4億2,500万ユーザーが利用し、カレンダーやドキュメントのサービスといっしょに使われているという。
Driveの特徴として、どこにいてもいつでも同じファイルを編集できることを強調する。デモでは、まずは、iPadで写真を開こうとするのだが、たくさんありすぎてよくわからない。そこで検索ボックスに「ピラミッド」というキーワードを入れると、見事にピラミッドの写真がピックアップされた。
また、文字による検索で、宅配便の送り状の写真を見つけるなど、Google Droive上の画像ファイルがOCRスキャンされて、文字での検索ができたり、複数のユーザーが同時に同一のファイルを編集することができるDriveならではの特長が紹介された。
つまり、これは、Google DriveのiOS用アプリの公開アナウンスだ。同時にAndroid、Chrome OS用のアプリもアップデートされたことが告げられ、すべてのデバイスでGoogle Driveの新機能が使えるようになったという。
しかも、新バージョンではついにオフライン編集にも対応、ノートPCからLANケーブルを引っこ抜き、Wi-Fiも切れていることを、ブラウザで新しいタブを開こうとしてもサイトが開かないことで証明し、その状態で、編集が続けられることをデモした。すべての変更はキャッシュされ、文書を閉じてからLANケーブルを元通りに接続すると、その状態でキャッシュされていた変更が反映されるという説明だ。そして、このSDKの2.0が、同日リリースされたこともアナウンスされた。
また、Samsung製の新しいChromebookが紹介され、全米の家電量販店チェーンBest Buyで購入できるようになったことも紹介された。
さらに、ステージでは、クラウドコンピューティングプラットフォームとして「Google Computing Engine」が発表された。Googleのデータセンターを使い、VMとしてLinuxを利用できるサービスだ。膨大な数のコアを利用できるようになるという。
スピーチの最後には、Chrome App Storeについても言及され、いつでも安心してアプリを購入できる世界。それはChromeの作った革命だと強調するPichai氏。まるでシリコンバレーのある会社を皮肉るかのようだった。そして、会場の聴衆に対して、Samsung製のChromeBoxを配布することを告げると、会場には大歓声が上がっていた。
●GoogleはいったいどこにいくのかラウンドテーブルでのPichai氏 |
基調講演同日の午後に開かれたプレス向けのラウンドテーブルで、Pichai氏にChrome戦略について、少し話が聞けた。ご存じの通り、現在、AndoroidでChromeが提供されているのは、ICS、すなわち4.0以降のみだ。それも前日まではベータだった。AppleのiOSでは、継続的にSafariが提供されているのとは対照的だ。
どうしてこういうことになってしまっているのかという問いに対して、Pichai氏は開発の取りかかりの遅れによるものとし、今後はきちんと対応していくと述べた。ただ、ICSより前のAndroidについてはサポートされる予定はなく、その対応よりも、よりよいChromeを最新のAndroidに対して対応させていくことを優先するようだ。ChromeがAndoroidに対応した以上、期待されるのはChrome拡張などのサポートだが、プラットフォームそのものの貧弱さゆえに、今後、どのように進展していくのかが気になるところだ。さらには、Chrome OSとAndroid OSとの差別化、Appleへのすりよりなど、あらゆる面でGoogleの迷いが見え隠れしているともいえそうだ。
(2012年 7月 2日)
[Reported by 山田 祥平]