会期:6月5日~6月9日(現地時間)
会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
Taipei International Convention Center
昨年(2011年)のCOMPUTEXに引き続きIntelは、COMPUTEXの会場近くで記者会見を開催し、Intel 副社長兼PCクライアント事業部 事業部長 カーク・スコーゲン氏が、6月5日にIntelが発表した第3世代Coreモバイル・プロセッサー Uシリーズに関する説明を行なった。
その中で、東芝 デジタルプロダクツ&サービス社 営業統括責任者 檜山太郎氏をゲストとして壇上に呼び、1,792×768ドットで21:9という映画館のスクリーン同じアスペクト比の液晶パネルを搭載したUltrabookと、スライド式でキーボードが現れるスレート型とのコンバーチブルUltrabookを公開した。
このほか、Intelの記者会見では、富士通、Lenovo、HP、Dell、Samsung Electronics、LG ElectronicsなどのOEMメーカーや、Foxconn、PegatronなどのODMメーカーなどが第3世代Coreモバイル・プロセッサー Uシリーズを搭載したUltrabookを展示して注目を集めた。
●第3世代Coreプロセッサ・ファミリーの登場により性能も機能も向上したUltrabookIntelが発表した第3世代Coreプロセッサ・ファミリーに関しては別記事で説明している通りだが、Ultrabook向けのUシリーズには以下の5製品が発表されている。
【表1】Ultrabook向け第3世代Coreプロセッサ・ファミリー(Uシリーズ)i3-3271U | i5-3317U | i5-3427U | i7-3517U | i7-3667U | |
周波数 | 1.8GHz | 1.7GHz | 1.8GHz | 1.9GHz | 2GHz |
Turbo Boost(SC/DC) | - | 2.6/2.4GHz | 2.8/2.6GHz | 3/2.8GHz | 3.2/3GHz |
コア/スレッド数 | 2/4 | 2/4 | 2/4 | 2/4 | 2/4 |
L3キャッシュ | 3MB | 3MB | 3MB | 4MB | 4MB |
HD Graphics | ? | 4000 | 4000 | 4000 | 4000 |
グラフィックス周波数 | ? | 350MHz | 350MHz | 350MHz | 350MHz |
TDP | 17W | 17W | 17W | 17W | 17W |
価格 | 非公開 | 非公開 | 225ドル | 非公開 | 346ドル |
これまで超低電圧版(ULV)と呼ばれてきた、TDP 17WのUltrabook向けのプロセッサだが、この世代からは特にそういう呼び方はしなくなったようだ。ただし、いわゆる標準電圧版(SV)などと呼ばれてきたTDPが35/45/55Wになる製品と区別するために、Intelの記者会見では“Uシリーズ”という呼ばれ方がされていた。このため、本記事でもUシリーズで統一していきたい。
スコーゲン氏は「新しい第3世代Coreプロセッサ・ファミリーにより、Ultrabookでのユーザー体験はさらに向上する。例えば3年前の製品に搭載されていたCore 2 Duoと比較すると、処理能力で80%、トランスコードなどのメディア性能で30倍、3Dグラフィックスは19倍、ThunderboltやUSB 3.0への対応でI/O周りは10倍、さらにはRapid Startなどで応答性の向上が図られているほか、何よりもノートPCそのものの薄さは21mm以下となり、デザイン面で大きく改善されている」と述べ、Uシリーズの登場がPCを買い換えるだけの大きな理由になっていると述べた。
Intel 副社長兼PCクライアント事業部 事業部長 カーク・スコーゲン氏 | Intelが発表したデュアルコアの第3世代Coreプロセッサ・ファミリーのラインナップ | 3年前に発売されていたCore2 Duoとの比較。処理能力で80%、メディア性能で30倍、3Dグラフィックスは19倍の性能を実現している |
●東芝の新型Ultrabookを初公開
この記者会見に先だって行なわれたCOMPUTEX TAIPEIの基調講演では、Intelは台湾のPC業界関係者に対して、Ultrabookのビジョンについて説明した。これに対して記者会見では、PCベンダーの第3世代Coreプロセッサ・ファミリー搭載製品のお披露目会となっており、壇上に並べられたUltrabookを次々に紹介していった。
その中で最も注目を集めたのは、日本のPCベンダーである東芝で、この記者会見の中では唯一のPCベンダーのゲストとして、東芝の檜山太郎氏が壇上に呼ばれ、東芝が開発した第3世代Coreプロセッサ・ファミリーを搭載したUltrabookの紹介を行なった。
檜山氏がまず紹介したのは、東芝とIntelの共同プロジェクトで開発されたUltrabookのプロトタイプ。スライド式の液晶パネルを採用しており、閉じた状態ではスレートのタブレットとして、開いた状態ではクラムシェルのノートPCとして利用することができる製品だ。
次に檜山氏は、「Satellite U840W」の型番がつけられたUltrabookを紹介した。Satellite U840Wは、液晶の解像度が1,792×768ドットというユニークな21:9アスペクト比パネルを採用している。21:9のアスペクト比は映画館のスクリーンのアスペクト比(シネスコサイズ)と一緒であるため、映画などのコンテンツに最適としたほか、横に長い表示になるため、アプリケーションを複数起動して並列の表示したりという使い方が可能になると説明した。
このほかにも、スコーゲン氏はコンバーチブル型のUltrabookとして、Samsung Electronics、Lenovo、ASUS、AcerなどのOEMメーカーの製品、Pegatron、Foxconn、InventecなどのODM/EMSベンダーの製品なども展示し、「コンバーチブル型のUltrabookは多数のデザインウインを獲得している」と述べ、タッチがOS標準の機能となるWindows 8時代にはコンバーチブル型のUltrabookが1つのトレンドになるということを印象づけた。
本体の左側面にはEthernetとUSB 3.0ポートが2つある | 別記事でも紹介されていたSamsung ElectronicsのコンバーチブルUltrabook |
EMS/ODMベンダーFoxconnのコンバーチブルUltrabook | ODMベンダーInventecのコンバーチブルUltrabook |
ODMベンダーPegatronのコンバーチブルUltrabook |
LenovoのThinkPad X1 Carbon | CESで公開されたThinkPad T430u(左)とX1 Carbon(右)の比較。液晶のサイズはフットプリントはあまりかわらないのにX1 Cabonの方が薄いことがわかる |
●Ultrabookから携帯電話にワイヤレス給電する仕様を提案へ
さらにスコーゲン氏はUltrabook向けの新しい技術として、PCから携帯電話をワイヤレスで充電する仕組みのデモを行なった。「Intel Wireless Charging」と名付けられたこのデモは、Ultrabook側に給電の仕組みを、スマートフォン側に受電の仕組みが入っており、ワイヤレスに充電を行なうことができるという。最大で3Wまでの給電が可能とのことで、将来的には携帯電話だけでなく、さまざまなデバイスに応用できる可能性がある。
なお、説明員によれば、QiやPowerMatといった現在のスマートフォン向けワイヤレス給電の規格とは互換性はないとのこと。そもそも、現状のワイヤレス充電は携帯電話の“背面”に受電用のモジュールが入っているが、Intel方式の場合には“側面”に受電の仕組みが組み込まれているため、方式が異なるという。ただし、Intelとしては独自の方式にするつもりはなく、今後標準規格として提案するとのことだ。
また、スコーゲン氏は液晶一体型デスクトップPCについてもデモを行なった。ODMメーカーのCOMPALが設計した21:9の横長ディスプレイを採用した液晶一体型デスクトップPCで、その中にはIntelが定義した小型マザーボードが採用されているという。OEMメーカーやODMメーカーは、そのマザーボードのモジュールを交換するだけで、新しい世代のプロセッサへのアップグレードが容易になると説明した。
IntelのUltrabookから携帯電話へのワイヤレス充電のデモ | Intelが提案するノートPCからの携帯電話へのワイヤレス充電の仕組み |
液晶一体型に関しても引き続き普及に努めていく。搭載マザーボードの規格化などに取り組み、安価に液晶一体型PCを製造できるようにしていく | ODMメーカーのCOMPALが試作した21:9の液晶ディスプレイを内蔵した液晶一体型PC |
(2012年 6月 6日)
[Reported by 笠原 一輝]