iOS編に続いて、Mac編としてMacworld|iWorldの会場で見つけたMac関連製品を紹介する。iOSにおけるMoblie Apps Showcaseと同様に、Mac側にもホール内に「OS X Zone」が用意されて、Mac OS X向けのソフトウェアが紹介されている。また、エンタープライズ市場をターゲットとしてMoscone CenterのWestホール3階には「Mac IT」のコーナーが設置されており、3日間に渡りカンファレンスが行なわれていた。少しずつではあるがMac製品の法人向け導入が動き出していることを背景に、展示ホールにもエンタープライズをターゲットにしたビジネスソリューションの展示が目に付くようになっている。
●Western DigitalがThunderboltを使ったデータ転送をデモWestern Digitalの「My Book Thunderbolt Duo」は、International CESのIntelブースやDigital Experience会場などでも公開されたThunderboltインターフェイスを持つ同社製の外付けストレージ製品。3.5インチのHDDを2基内蔵し、RAID 0/1で動作する。Mac向けのRAID対応同社製品としては、FireWire 400/800、USB 2.0、eSATAのインターフェイスを持つ「My Book Studio II」が既存。機能はほぼそのままにインターフェイスをThunderboltに置き換えた製品となる模様だ。同社によると6TBモデル(3TB×2)で約250MB/sec、4TBモデル(2TB×2)で約225MB/secの転送速度を実現するとしている。これらはいずれも「My Book Thunderbolt Duo」単体をRAID 0で運用した数値と思われる。価格や発売時期はまだ明らかにされていない。
今回、Macwolrd|iWorlde会場の同社ブースで紹介されていたデモンストレーションは、iMacに上記の「My Book Thunderbolt Duo」四台をデイジーチェーン接続して行なわれた。各製品にはそれぞれ2個のHDDが内蔵されているわけだが、それぞれMac側から独立したドライブとして認識させている。つまり計8台のHDDをMac OS XのソフトウェアRAIDで1つの論理ドライブとして構成して、24TBの単一ボリュームとなっている。この8台がストライピングしている論理HDDに対して、Disk Speed Testのアプリケーションを使ってリード/ライトを実行するというのがデモの内容だ。結果、写真の通りリードで約780MB/sec、ライトで約540MB/secの転送速度を実現している。なおリード側は安定しているが、ライト側にはかなりむらがあるようで、タイミングによっては500MB~650MB/sec程度の幅のある数値が出ている。使われているHDDは、同社製のCaviar Greenシリーズ「WD30EZRX」の模様。
Western Digitalのブースで行なわれているThunderboltによるデータ転送デモンストレーション | 「My Book Thunderbolt Duo」が4台、iMacからデイジーチェーン接続されている | Disk Speed Testの結果。READで約780MB/sec、WRITEで約540MB/sec。Mac側からは24TBの論理ドライブに見えている |
Thunderbolt関連製品としては、Seagate TechnologyもInternational CESと同様に「GoFlex Desk Thunderbolt Adapter」とポータブル向けの「GoFlex Thunderbolt Adapter」を展示した。発売時期は未定としているが、価格は前者が199ドル、後者が99ドルとのこと。いずれもアダプタのみの価格で、ドライブは既存の対応製品(GoFlex Ultra-Portable Drives等)を流用するか、別途購入する必要がある。さらに49ドルのThunderboltケーブルが必要なことを考えると、Thunderbolt普及のためのハードルは価格面にもあることが理解できる。
●OWCはMacBook Air向けの大容量高速SSDを展示
MacBook AirだけでなくMac製品全般にSSDを導入するアップグレードを提案し、高速アクセスをアピールするOWC |
OtherWorldComputing(OWC)は、昨年に続いてMacBook AirのSSDを大容量化する製品を公開した。「Mercury Aura Pro Express 6G」は、SATA3の転送速度6Gb/sに対応する現行のMacBook Air専用のSSDとなり、120GB、240GB、480GBの3製品がラインナップされている。価格はそれぞれ、259.99ドル、499.99ドル、1,149ドル。交換したApple純正のSSDを外部ストレージとして利用するエンクロージャも以前より販売されているが、今回はUSB 3.0にインターフェイスをしぼったスリムデザインのケースが参考出展されていた。
Intelのロードマップによれば、Ivy Bridge世代ではUSB 3.0のコントローラがチップに統合されることになっており、おそらくIvyBridgeを採用するであろうMacの次世代製品群はUSB 3.0インターフェイスを搭載することがほぼ確実とみられる。この参考出展は、そうした将来を見こした意味もありそうである。
円錐状の本体に6つの指向性小型マイクロフォンが内蔵されたDev-Audioの「Microcone」。インターフェイスはUSB 2.0で、小規模ミーティングを話者別に最大6トラックで録音したり、複数人が同時にしゃべる会話の部分などを任意に抽出することができる。音声認識ソフトを併用することで、テキストへの書き出しも可能。テキストの書き出しはDragon Dictationに対応する言語に準じるとのこと。ハードウェアと専用ソフトウェアのセットで販売され、価格は389ドル。Macworld|iWorldの会場ではShow specialとして340ドルで販売されていた。
こうした小規模ミーティングの際に、話者別にチャンネルを分けて録音ができる | 円錐状の本体に、6つの指向性小型マイクロフォンを内蔵する「Microcone」 | 専用の録音管理ソフト。6チャンネルそれぞれの音声データを個別のトラックとして記録できるほか、音声認識ソフトを使ってテキスト化が可能 |
International CESの記事でも紹介した「HENGE DOCKS」。MacBookシリーズの製品をリッドクローズドモードで使用する際に、コネクタを一気に接続するドックである | 現行のMacBook Airに対応するドック「LANDING ZONE」。4ポートのUSB HubとLAN端子、Mini Dispayport、Kensingtonロックを拡張できる。ただし、ThunderboltはMini DisplayPortとしてのみ使用できる。Air本体との脱着はレバー操作。MagSafeのACアダプタ部分はAppleの特許となるため、純正品を挟み込んで使用する仕組み |
Apple純正のApple Wireless KeyboardとMagic TrackPadを一体化する「Bluefin」。スリットにあわせるだけなので、Magic TrackPadは左右どちらにでも配置できる | こちらもCESの記事で紹介済みの「eXpress Keyboard Platform」。トラックパッドの配置がノートブックと同じ中央に位置することと、パームレストがあることが前者との大きな違い |
マイクロフォン専業メーカーのBlueによるクラシカルなデザインの高級マイクロフォン。スタンドタイプの「SPARK Digital」は、Mac/PCにはUSB 2.0、iPadには30ピンコネクタで接続する。いっぽう「TIKI」はMac/PCに対応する製品で、USB 2.0ポートに直接差し込んで利用する。延長コードも付属 |
クラウド保存をターゲットとしたスキャナ「DOXIE」の新モデルとなる「DOXIE GO」と「DOXIE GO +Wi-Fi」。本体にSDメモリスロットを搭載することで、Mac/PCレスでもスキャンしたデータの保存を可能にした。いつでもどこでも、Mac/PCレスでスキャンできるとしている。Mac/PCとの同期はあとからUSBケーブルで接続するか、あるいはApple純正のiPad Camera Connection Kitを利用してiPadに転送し、そこからクラウドへと保存することもできるとしている。
一方、プラスWi-Fiモデルには「Eye-Fi X2 SDメモリ」をSDメモリカードとして添付する。Eye-Fiの持つWi-Fi機能を利用して、直接クラウド(あるいはMac/PC、iPad/iPhone等)へ送信・保存するという力技的なアイディア製品だ。価格は「DOXIE GO」が199ドル、「DOXIE GO + Wi-Fi」が239ドル。会場ではShow Special価格として、それぞれ149ドル、199ドルで販売されていた。
SDメモリカードスロットを搭載し、Mac/PCレスで、どこでもスキャンが可能という「DOXIE GO」。プラスWi-FiモデルにはEye-FiのSDカードを添付。Eye-FiのWi-Fi機能でスキャンしたデータをクラウドへと直接保存が可能 | |
日本のユーザーにはすっかり定番の「ScanSnap」シリーズも富士通のブランドでブース出展をしている。特に今回発表された新製品があるわけではないが、S1500/S1300/S1100をラインナップして、さまざまなソリューションの紹介をしている | |
2011年のレポートで紹介した、クラウド上にTimeMachineバックアップをつくる「Dolly Drive」。βサービスの開始から一年を経て、TimeMachine機能だけでなくiPadやiPhoneなどとのデータ同期、クラウドへのデータ保存機能、クラウドに保存された環境からのシステム復旧など、いくつかのサービスが追加された | 「FileThis|Fetch」。電話料金の支払いやオンラインバンキングの明細など、ペーパーレス化、オンライン化の進むデータを取得して、クラウドへと自動保存するアプリケーション。確かにオンラインでの支払い手続きや明細等の参照は便利である反面、記録性が薄い。例えば「自分で参照後にWebクリップしてEvernoteへ保存」といった作業を自動化してくれるアプリケーションだ。いまのところ対象となるバンキングサービスやキャリアは米国内のみとのこと |
最終日となる29日(土)の正午過ぎのレジストレーションエリア。当日に入場登録をする来場者の行列は開場以来途切れることがないほど賑わっていた。 |
3日間のMacworld|iWorldを通じて感じたのは、Appleの出展見送りやイベント名称の変更などを経ても、Appleユーザーの祭典であるという基本的なスタンスは揺らいでいないという点である。繰り返しになるが、International CESとの大きな違いは、来場者の主なターゲットを、バイヤーではなくエンドユーザーに置いているところにある。来場者は一様に皆楽しそうだし、ブースや出展者側にも活気がある。昨年と比較しても、展示の全体規模や来場者の数は、さほど変わっていないように思えた。
これはAppleが出展していた当時から変わっていないルールだが、Apple純正品以外の商品は、会場内で販売することが可能だ。本文中にも何度か登場しているように、出展ブースの多くは自社製品をShow Specialとして特別価格で販売している。特別価格にもいろいろあるが、おおよそ市価の20%~50%オフが中心。来場者もこうした割引販売を楽しみにしているようで、実際に手に取って、出展者から話を聞いて納得したうえで購入していく。人気の商品は時代とともに移り変わり、10年ほど前はメモリ(DRAM)が定番だったりしたものだが、現在の主流はヘッドフォンやイヤフォンになっている。そしてiPadをはじめとするタブレット人気を背景にして、今年は各社のスタイラスペンへの注目が高まっていた。こうした変化を実感できる場所というのは貴重だろう。同程度の展示会規模でイベントが継続されるのであれば、次回もまたここサンフランシスコへと足を運びたいと思う。
SENNHEISERブースのShow Special価格。最終日の時点ではいくつかの商品がすでに売り切れとなってしまっている。 | Monster CableブースのShow Special。こちらも例年大人気のブースで、いつ見てもブース全体が混雑している。 |
主催者のIDGは、来年(2013年)も継続してMacworld|iWorldを開催する意向。会期は2013年1月31日から2月2日までの3日間と発表されている。
(2012年 1月 31日)
[Reported by 矢作 晃]