【CES 2012レポート】Wireless LAN SDで変わるデジタルカメラの無線LAN環境
〜SD AssociationではNFCのmicroSDカード実装が進行中

東芝から発売されるWireless LAN SD規格準拠のSDカードとなるFlashAir

会期:1月10日〜13日(現地時間)
会場:米国ネバダ州ラスベガスコンベンションセンター/ベネチアンホテル



 SDカードの標準規格を策定するSD Association(以下SDA)は、International CESの開幕前日となる1月9日にプレスリリースを発行し、新しく策定した「Wireless LAN SD」と呼ばれる、無線LANの機能をSDメモリカードに実装する標準規格を発表した。

 本レポートでは、SDAの関係者にWireless LAN SDを策定した狙い、その具体的な仕様、今後のSDAの展開などについてお話を伺ってきたので、お伝えしていきたい。

●メーカー独自の実装ではなく、業界標準の仕様を採用するメリット

 SDメモリカードに無線LANの機能を実装した製品と言えば、米国Eye-Fiの製品がよく知られており、すでに使っているユーザーも少なくないだろう。Eye-Fi製品は、独自に無線LANのコントローラとアンテナをSDメモリカードに実装し、PCやスマートフォンなどに専用のソフトウェアをインストールして直接無線LANのアクセスポイントに接続したり、ピア・ツー・ピア(P2P)で接続してあらかじめ設定しておいた端末や写真サービス(FlickrやPicasa Web Albumなど)にアップロードする仕組みになっている。

 今回SDAが発表したWireless LAN SDも基本的なコンセプトは一緒だが、標準規格であるというところがミソだ。というのも、Eye-Fi製カードは独自にSDカードを拡張したもののため、端末側にはEye-Fiのソフトウェアを用意する必要がある。PCやスマートフォンなど、ユーザーがアプリケーションソフトウェアを自由にインストールできる機器はそれで問題ないのだが、デジタルカメラなどに入れて機器側から設定できるようにする場合には、機器側でEye-Fiカードの機能をファームウェアでサポートしている必要がある(もちろん機器側では何も設定しないという場合であれば、特にデジタルカメラ側でサポートしている必要は無い)。

 すでにデジタルカメラの中ではEye-Fiの機能をファームウェアレベルでサポートしているものも存在している。例えばソニーのミラーレス一眼カメラであるNEXシリーズは、Eye-Fiカードを標準でサポートしており、無線LANのON/OFFなどを機器側から操作できる。

 ただし、この場合、その実装はEye-Fiの独自機能になるので、カメラメーカーにしてみれば、仮にEye-Fi製品ではない無線LAN内蔵SDカードをユーザーが持っていても、操作はカメラから行なえないということになる。そこで、無線LAN内蔵SDカードを機器から操作するときの標準規格を作ったのが、Wireless LAN SDの仕様ということになる。

 カメラメーカー側の視点に立てば、今後はEye-Fiだけでなく、Wireless LAN SDの仕様をサポートすることで、今後各社がリリースするWireless LAN SD規格に準拠した無線LAN内蔵SDカードを一括してサポートできるようになるメリットがある。

 今のところ無線LAN内蔵SDカードの市場というのは事実上Eye-Fiが独占のような形になっているが、将来的に複数メーカーからWireless LAN SD規格に対応したカードが登場するようになれば、機器側でサポートするのは1つの規格のみで済むわけなので、ソフトウェア開発コストの削減につながることになる。

●Wireless LAN SDの規格はSDIOの延長線、Type WとDの2つがある

 SD Association マーケティング委員会日本地域担当主査 船木一恵氏(東芝 セミコンダクター&ストレージ社)によれば、Wireless LAN SDの規格は、従来のSDIO規格の延長線上にある仕様になるという。従来のSDIO無線LANカードは、カード上にメモリを載せておらず、I/Oカードとしてのみ利用されていたのに対して、Wireless LAN SDではSDメモリカードに無線LANの機能を追加する仕様になっているという。

SD Association マーケティング委員会日本地域担当主査 船木一恵氏(東芝 セミコンダクター&ストレージ社)

 「Wireless LAN SDには、Type WとType Dという2つの規格が用意されていて、カードメーカーは、どちらか1つ、ないしは両方を実装することができる」とのことで、Type Wのみ、Type Dのみ、Type W/D両対応という3種類のカードが登場することになる。

 Type Wは、Wireless LAN SDカードにWebサーバーの機能を持たせ、PCやスマートフォンなどからWebブラウザを利用してアクセスすることができるほか、サーバーへの自動アップロード機能、P2PでPCやスマートフォンなどに接続するインターフェイスを用意する。

 Type DはSDカードそのものにホームネットワークへのアクセス機能を持たせるものだ。船木氏によれば「プロトコルとしてはUPnPに対応している」とのことだったので、ホームネットワーク内のUPnPサーバーやUPnPクライアントになることが可能であるとのことだった。例えば、UPnPに対応したクライアント(DLNA規格に対応したホームネットワーク機器はUPnPのやりとりを利用してコンテンツの再生などができる)機能がTVに入っていれば、無線LANを利用してデジタルカメラの中の写真や動画をTVで再生したりという使い方も可能になる。

 しかしSDAのWireless LAN SD規格では、データのやりとりの方法などは規定しているが、アプリケーションのレイヤーに関しては一切決めていないという。このため、どのような機能を実装するかなどは、端末機器側に依存することになる。例えば、機器(デジタルカメラなど)によってはWebサーバーの機能だけをサポートすることも可能だし、Webサーバーの機能とサーバーへのアップロード機能の両方をサポートするといった具合に、機器によって実装の度合いは変えられるという。このため、機器ベンダー側で工夫を凝らせばさまざまな応用が可能で、これもWireless LAN SD規格を利用するメリットの1つと言えるだろう。

 また、Type Wの機能に関しては、基本的には端末側がWireless LAN SDに対応していなくても利用できる。その場合には、端末側でアップロード先のサーバーを設定したりなどはできないため、PCなどであらかじめ設定してから利用することになる。もちろんSDA側で互換性を検証しているわけではないので、動作の保証はカードメーカーや端末メーカーの対応に依存する。

 Type Dに関しては、端末のファームウェアレベルでのサポートが必須になるので、カード側が対応していても端末が対応していない限りは利用することができない。なお、Type W、Type Dの両方に対応しているカードを、対応していない端末で利用する場合には、Type W相当のカードとして利用することができるという。

●無線LANを使っていないときは、無線LAN部分をOFFにすることで省電力を実現

 このWireless LAN SD規格はカードの物理的な仕様は何も規定しておらず、従来のSDカードの仕様がそのまま流用できる。このため、SDカード、miniSDカード、microSDカード、すべてのフォームファクターのカードで利用することができる。ただし、現実問題として、すでにminiSDカードを利用した端末はすでに無くなっているに等しい状態であるし、microSDカードに関してもカードそのもの物理的な大きさが小さすぎるため、無線LANのコントローラやアンテナを格納するのは今の技術ではかなり難しい。

 SDカードに無線LANの機能を追加するとなると、気になるのは消費電力の増加だろう。船木氏によれば、規格の仕様上消費電力は0.72W〜1.8W/hに規定されており、カードベンダーはそれ以内の消費電力で納めることが求められているという。決して低いというわけではないが、カードベンダーの作り方によっては端末の消費電力への影響を小さくすることは可能だ。また、規格上、無線LANを利用していない場合には、無線部分をOFFにできるようにすることも決められており、バッテリ駆動時間への影響は、最小限になるように配慮されているとのことだった。

●東芝のFlash AirはWireless LAN SD規格に準拠

 船木氏によれば、規格自体はすでにSDAでの策定が終了し、最終的な仕様の認証も終了しているという。このため、すでにカードメーカーが製造を開始しているところもあるとのことだった。

 実際、SDAのブースでも展示されていたが、東芝が9月に発表したFlashAir(別記事参照)は、実はWireless LAN SD規格に準拠したものになっているという。デモでは、Androidタブレットを利用して、Webブラウザを利用してカシオのデジタルカメラに入ったWireless LAN SDカードにアクセスし、撮影した写真を表示することができる様子を確認できた。東芝のFlashAirはIEEE 802.11b/g/n規格、セキュリティはWEP、WPA/WPA2(TKIP、AES)などに対応している。第1世代の製品ではType Wの機能を実装し、第2世代の製品ではType Dの機能が実装され、東芝がDLNAとの互換性を確認するなどの拡張を行なうという。

 また、東芝の説明員によれば、Flash Airは機器側からも無線LANのクライアント機器として利用することが可能で、無線LANを標準で載せるほどではないのだが、SDカードのスロットを用意してソフトウェア面だけの対応を用意しておくだけで、無線LAN機能を内蔵させるオプションとしてFlash Airを利用できるということだった。例えば、体重計やカーナビなどにSDカードスロットを実装し、Flash Airが利用できるようにしておくと、後から無線LANの機能を追加することが可能になるのだ。こうしておくと、Flash Air側で認証をとっているため、機器側で世界各国の無線の認証をとる必要が無くなり、その面でのコストダウンにもつながるということだった。

AndroidタブレットからFlash Airに接続しているところ。無線LANのアクセスポイントとして動作する Webブラウザを利用してSDカード内の写真を見ることができる Flash Airの説明パネル。第2世代ではType Dの規格にも対応する予定。DLNAへの対応も謳われていた

●SD Associationでの次の議論はmicroSDカードへのNFCの実装

 なお、SDAではSDカードの仕様拡張に向けた議論が続けられており、現在はmicroSDカードのスロットを利用したNFCの実装への取り組みが話し合われているという。日本や米国などでは、機器側にセキュアエレメントとアンテナを持たせる形、ヨーロッパではmicroSDカードにセキュアエレメントとアンテナの両方を持たせる形など、地域によってニーズが異なっているので、そのあたりのニーズを吸収できるように規格の策定が進められているという。

 SDAのブースでは、ヨーロッパのDeviceFidelitv & SpringCardによるデモが行なわれていた。DeviceFidelitv & SpringCardではNFCのセキュアエレメントとアンテナをmicroSDカードに入れた製品を開発しており、ヨーロッパなどで提供予定だという。iPhone用には、microSDカードが入るジャケットも同梱しており、iPhoneをおサイフケータイのように利用することが可能になっていた。

 今後こうした開発が続いていけば、将来的にはスマートフォンのmicroSDカードスロットを利用して、NFCの拡張を行なえるようになる時代がやってくるかもしれないだけに、要注目な動きと言えるだろう。

NFCには対応していないXperiaを利用して電子決済が行なわれる様子。NFCのセキュアエレメントとアンテナはすべてmicroSDカードに納められている
microSDスロットが用意されたジャケットと合わせて利用することでiPhoneにも対応可能 ヨーロッパではこのようなパッケージに入れられて販売されることになるという

(2012年 1月 16日)

[Reported by 笠原 一輝]