【IFA 2011レポート】
Acer、同社初のUltrabook「Aspire S3」

Walter Deppeler氏

会期:9月2日~7日(現地時間)
会場:Messe Berlin



 台湾Acerは9月2日(ドイツ時間)、IFA 2011会場においてプレスカンファレンスを開催。同社初のUltrabook製品「Aspire S3」を発表した。第1世代のUltrabookの1つとなる本製品は、スリープからの復帰の高速化や、ディープスリープ状態での50日稼働といった独自機能を特徴としている。

●欧州での落ち込みをエマージング市場で盛り返す

 Aspire Sの紹介に先立ち、同社EMEA(欧州、中東、アフリカ)のプレジデントであるWalter Deppeler氏が、今年第2四半期のPC市場を総括した。

 ここでは、2010年の同時期に比べ、EMEA全体でのPC出荷は6.3%の減少となったものの、新興国市場の出荷が劇的に増加したことから、ワールドワイドでは1.2%の出荷台数増となったことを紹介。PCによる利益は落ちているものの、EMEA内でも東欧圏では出荷を伸ばしているという。

 また、同社のデバイス別の売り上げでは、ノートPCの割合が減少する一方、タブレットが割合を増やし始めていることを紹介。同氏はこうしたデバイスの普及とコンテンツの関係について「2年前にコンテンツ消費デバイスとしてネットブックが登場し、今日ではタブレットが売り上げを伸ばしている。コンテンツは制作する人、消費する人はオーバーラップし、あらゆるデバイスで取り扱われるだろう」と述べている。

 そのほか同社は、来年イギリスで行なわれるロンドン五輪において、コンピュータ機器を提供するパートナーとなったことも紹介。2010年のバンクーバー五輪以上の体制で、これをサポートしていくとした。

2010年後半と2011年前半の地域別収益の違い。EMEA圏の割合が急激に落ち込む一方、アジア太平洋地域や中国の割合が増加したこちらは製品ジャンル別の収益。ノートPCの割合が減り、タブレットが伸びてきているAcerはコンピュータ設備におけるロンドン五輪のパートナーとなっており、2010年のバンクーバー五輪以上の体制でサポートする

 今回のカンファレンスで発表されたAspire S3の説明を行なったCampbell Kan氏は同製品について「従来のノートPCは優れた性能と生産性を持っていたが、インスタントさに欠ける。これを備えたのがUltrabookだ」とし、UltrabookがノートPCとスマートフォンなどのモバイルデバイスを集約させたものであるという同社の考えを示した。また、これは単に新しいノートPCのカテゴリというだけでなく、新しいユーザー体験を生み出すものになるだろう、ともしている。

 また、Kan氏はAspire S3について「ここ3年ほど大きなイノベーションがなかったPCだが、UltrabookはPC市場に新たな機会を生み出すもの。Acerはこれまでにもモバイルデバイスに革新を起こしてきた。Aspire S3は第1世代のUltrabookにおける始まりに過ぎない。今後もさらなるイノベーションを見せていく」とUltrabookというカテゴリへの期待と意気込みを語っている。

 そのAspire S3であるが、主な仕様としては、ULV版の第2世代CoreプロセッサをCPUに使用し、最大240GBのSSDまたは最大500GBのHDDを搭載。Dolby Home Theater準拠のサウンド機能も備える。液晶は13.3型。

 本体重量は1.4kgで、最薄部が13mm、最厚部が17mmの薄型筐体を採用。キーボードやパームレスト部分が熱を持つことによるユーザーの不快感を解消するため、熱を発するコンポーネントをこれらの部分からできるだけ遠ざけたり、これらの部分を真っ先に冷却するようなエアフローにもこだわった設計であるとする。

 またAcer独自の特徴として、「Instant On」「Instant Connect」という2つの機能を装備。

 Instant On機能はスリープからの復帰を高速化するもので、一般的な用途で1.5秒、遅くとも2秒で復帰が可能。また非アクティブ状態が長い場合にはディープスリープモードへ移行し、この場合にはバッテリを充電することなく50日を過ごすことが可能であるという。またディープスリープモード時はバッテリのセルの劣化も防ぐことができるので、通常は1年程度でバッテリをリプレイスするユーザーも、2~3年は使い続けることができるだろうとしている。

 また、このInstant On機能のためにデータストレージとは別に専用のSSDを搭載しており、SSDモデル、HDDモデルに関わらず、この機能を利用可能。この専用SSDはSmart Response Technologyにも利用されるとしている。

 Instant Connect機能は、スリープからの復帰後に無線LANへの接続を高速に行なうもので、無線LANアクセスポイントの高速なスキャンを行ない、復帰後2.5秒で接続が可能。この2つのInstant機能により、従来のノートPCに比べてスリープ復帰後から使用可能になるまでの時間が4倍短縮されるとしている。

 通常使用におけるバッテリ駆動はSSDモデルで7時間、HDDモデルで6時間。発売は9月末。ただし9月末の時点では限定的な国での発売となり、10月以降に順次各国へ展開していく。価格は仕様により、799~1,199ユーロになるという。

Aspire S3の説明を行なう、President of Personal Computer Global OperationsのCampbell Kan氏Instant On機能の説明。スリープからの復帰を遅くとも2秒以内で終え、ディープスリープモードなら50日間のバッテリーライフを実現するInstant Connectの説明。スリープから復帰したあとの無線LANへの接続を高速化。2つのInstant機能により従来PCより4倍高速に使用可能状態になる
Intelのムーリー・イーデン氏もビデオメッセージを寄せ、2つのInstant機能によって、さらなる長時間バッテリ駆動時間を実現するAspire S3への期待を述べたAspire S3。現在はまだサンプル機であるとしている本体左側面はヘッドホン端子を装備
主なインターフェイスは背面。HDMI、USB×2を備える本体右側面にはSDカードスロットを備える

(2011年 9月 5日)

[Reported by 多和田 新也]