イベントレポート

AI重視の戦略にシフトするMicrosoft。開発者向けイベント「de:code 2017」でAI活用による技術革新を訴求

 日本マイクロソフト株式会社は、Microsoftの今後の展望や最新技術などを開発者らと共有する、ITエンジニア向けカンファレンス「de:code 2017」を本日(23日)から明日にかけて都内にて開催している。参加チケットはすでに完売となった。

 de:code 2017では「AI(人工知能)」をテーマとし、Microsoft本社の要人らが登壇。昨年(2016年)のde:codeでもAIを利用したソリューションの紹介が行なわれていたが、今回はAI活用を同社が展開する根幹の技術として、よりリッチなサービスを提供可能にするとの触れ込みで来場者に訴求を行なった。

 同社が展開しているAIサービスとして日本でもっともわかりやすい例は女子高生AIの「りんな」だろう。LINEとTwitterを合わせて570万人ものフォロワーを有し、人が違和感を感じない会話を展開できる。こうしたAIは正しい情報の選択と機械学習によって成り立っており、ビジネスやブランドにふさわしいキャラクターを生み出すための研究の一環として生まれたという。

 MicrosoftでCorporate Vice President & Chief Evangelistを務めるSteven Guggenheimer氏は、同社が展開しているAI技術として、画像認識、音声認識、分析などを挙げ、Cognitive Services(認識サービス)としてユーザーや開発者に提供していくことで、人間の能力を増幅できると唱える。「モバイルファースト、クラウドファースト」を標榜している同社だが、今後はこれに加えてAIを組み込んでいくことで「インテリジェントクラウド、インテリジェントエッジ」を推進していくとした。

de:code 2017に用意されているセッション数
セッションに登場する主な登壇者らの紹介
女性向けのプログラムも用意
Steven Guggenheimer氏(Microsoft Corporate Vice President & Chief Evangelist)
機械学習を経て人とのコミュニケーションを行なえるまでにいたった女子高生AI「りんな」
同社AIの汎用性を示す例として、カスタムバージョンとして期間限定で「りんお」も展開された
りんおとの会話
Azureに組み込まれた画像認識技術を使い、撮影した葉が「カエデの葉」であるとAIが回答
トレーニングのために用意する画像。枚数はそれほど多くなくても判別できるようになる
正確さなどを確認できる
AIを活用した音声認識サービスのMicrosoft Translator
iPhoneからスペイン語で話しかけ、PC上でリアルタイムで翻訳テキストを表示するデモが行なわれた
翻訳は日本語への変換もできている。国をまたいだ言語が統一されていない会議でも、コミュニケーションが可能となる
Microsoft TranslatorはAndroid版も用意されている
こちらは保険の契約を人がAIに話しかけて行なうという例
ユーザーからの質問をAIが代理して進めていく
保険が高すぎて払いたくないという意見が出た場合、人と代わって話を進めるようにAIが提案。AIは裏で分析も行なっており、この顧客はあと何%のディスカウントをすれば、別の保険会社に移行しないでしょうといった情報を担当者に伝える
こういった分析は以上全体にも行なわれ、写真ではオーストラリアで契約がかんばしくないことなどが一目でわかるようになっている

 ついで登壇したJoseph Sirosh氏(Microsoft Corporate Vice President Data Platform Group)は、地球45億年の歴史の中で40億年に眼を持つ生物が誕生したことでカンブリア爆発が起きたとの話を展開し、今日のAIはこれに類する革新的なものであると、AIの重要性を説いた。

 Sirosh氏はAIを高めるにはクラウド、データ、インテリジェンスの3つのツールを使い、ディープラーニングと連携させる必要があるとし、データベースへのAI機能の組み込むことで開発者に大きな力をもたらすとしている。

Joseph Sirosh氏(Microsoft Corporate Vice President Data Platform Group)
40億年前に起きたカンブリア爆発と同様に、AIは人類に大きな変化をもたらすとする
AIが組み込まれた「SQL Server 2017」
機械学習をサポートする「R Server」
分散型データベースの「Azure Cosmos DB」を展開
Azureで展開されるIntelligent Lakeサービス。ペタバイト以上のデータを認識でき、画像/ビデオ/テキストといったコンテンツと、構造化データを横断したクエリを扱える
ディープラーニングを活用したサービスや研究など
ディープラーニングの拡張機能が組み込まれたAzureによる科学研究の仮想マシンも提供
こちらはディープラーニングのフレームワーク「Chainer」を提供するPreferred Networksが紹介した自動塗り絵機能を備える「PaintsChainer」。ディープラーニングを使い、Azure上で動作している

 de:code 2017では、このほかにもHoloLensを活用したMR(Mixed Reality)の活用事例や、先日のBuild 2017で披露された次期大型アップデート「Fall Creators Update」の機能が紹介された。Fall Creators Updateについては、既報の「クリエイター向け機能をさらに盛り込んだWindows 10 Fall Creators Update」を参照されたい。

MR技術を使うことで現実世界を拡張できることに加え、バーチャルなものに置き換えることも可能
小柳建設はHoloLensを使うことで、顧客が現場にいなくても建造物を子細に確認できるビジネス手法を取り入れている。そして納品ではHoloLensを提供する
将来的なMRの利用イメージ

 Microsoftは、今後さまざまな製品/サービスにAIを組み込んでいき、開発者は制限なく機能を活用して生産性向上や革新を行なえるようになるとしている。

インテリジェントクラウドとインテリジェントエッジ