イベントレポート

ワコム、Microsoftらとのペンの協業でイベント開催

 ワコムがCES 2017に併せ、ラスベガスの会場近隣のイベントスペースで、デジタルインクのエコシステム推進とコミュニティ拡大のためのイベント「Connected Ink Las Vegas」を開催した。昨年(2016年)のCES 2016で最初に開催されたのを皮切りに、上海、ベルリン、東京で開催され、ちょうど一巡してラスベガスに戻った形となる。

 ワコムの提唱によって、昨年10月にデジタルインクの利用推進のための非営利団体「Digital Stationary Consortium」(DSC)が米国で設立された。このコンソーシアムは、IT関連企業のみならず、文具メーカーなども参加することで、紙がデジタルに置き換わるだけではなく、その発展がこれまでの特定業界の枠組みを超えているところに特徴がある。

 例えば、このイベントで登壇した米NewrosSkyは、脳波、心電、心拍などの生体信号データを活用するためのセンサー製品やアルゴリズムを提供する企業で、今回は、デジタルインクに記録した脳波データから喜怒哀楽の環状を抽出・表示するようなコンセプトが紹介されている。

 ペンで文字や図形を手描きしているときの脳波データを取り、それをデジタルインクデータに埋め込むことで、書いているものと感情がグラフィカルに表現されるという。これは、デジタルインクが写真のEXIFデータのように別の情報を埋め込むできるからこそのことだ。

 このソリューションによって、認知症の治療など、デジタルでしかできないことをうまく組み合わせて、いろいろなことが可能になるという。つまり、創造の道具だったペンの技術が、もっと幅広い分野で応用できるようになる。

 だからこそ、ワコムはアーティストのみならず、ペンと紙を使う全ての人々にデジタルインクの可能性を伝えようとしているわけだ。

 イベントの冒頭に挨拶にたったワコム代表取締役兼CEOの山田正彦氏は「われわれはクリエイティブを愛している。人の表現とコミュニケーションを運ぶシンボルをインクが生んできた。何千年もの間、インクはクリエイティブなツールだったが、同時に、記憶、記録を助けるための道具でもあり、世代、時代をまたがる人々と知識を共有するものでもある。

イベントの開催にあたりデジタルインクの可能性を熱弁するワコムの山田正彦代表取締役兼CEO

 世界を変えるアイディアを実現する、もっともパワフルなツールがインクであり、これまでアナログなインクの世界と、デジタルの世界にあった違いを無視できるものにできないかをずっと考えてきた。だが、インクにデジタルテクノロジを与えることができるようになり、クラウドがデジタルをさらにパワフルなものにする。

 そんな中で、新しいカテゴリやプラットフォームを作りたい。それがわれわれのゴールだ。だからこそ、いろいろな業界からのパートナーを求めたい。いっしょに新しいマーケットを作ってデジタルインクを暮らしの役にたてよう」と呼びかけた。

 この日はMicrosoftやMontblancなどからもスピーカーがゲストとして登壇し、インクのもつさまざまな魅力、そして、新たな関連分野への取り組みなどが紹介された。

Microsoftもゲストとして登壇し、Windows Ink Workspaceのデモを披露した
使われていたWindowsのビルドは14977と現行のInsider Previewよりもかなり先のものだった

 また、SamsungとMontblancが運営の主導的な役割を担うコントリビューターメンバーとしてDSCに加盟したことが発表された。DSCは、ワーキンググループに参加して情報の入手が可能なプロモーターメンバーも引き続き募集しているとし、DSCへの加盟企業は今後ますます増えていくとしている。

 なお、このイベントで、ワコムはワコム独自のアクティブES方式と、MicrosoftのMicrosoft Penプロトコルの両対応ペンをBambooブランドで発売するべく準備を進めていることが表明された。当初はスイッチ切り替え式となるということで、数カ月以内の発売が予定されている。

イベントでは、ワコム方式とMicrosoft方式のデュアルプロトコル対応ペンが開発中であることが発表された