イベントレポート

Qualcomm、Snapdragon 820を搭載したスタンドアローン型VR HMD

Qualcomm 上席副社長 兼 IoT事業部 事業部長のアンソニー・マレー氏

 Qualcommは、9月2日からドイツ・ベルリンで開催中の家電展示会IFAに先立って、9月1日(現地時間)にベルリン市内で記者会見を開催し、Snapdragon 820を採用したスタンドアローンVR HMD(ヘッドマウントディスプレイ)の開発プラットフォームを、パートナーなどに提供していくと明らかにした。それに合わせて同社がGoertekと協力して開発したリファレンスデザインを公開した。

 また、2月に発表したウェアラブル向けのSoCとなるSnapdragon 2100のOEMメーカーとして、Fossilが加わったことを明らかにし、FossilはIFAでSnapdragon 2100を搭載した新しいAndroid Wearベースのスマートウォッチを発表した。

Snapdragon 820搭載ハイエンドスマホがHMDと一体になったQualcomm Snapdragon VR820

 Qualcomm 上席副社長 兼 IoT事業部 事業部長のアンソニー・マレー氏は「Qualcommはモバイルワールドで革命を起こしてきた。IoTでも引き続きその取り組みを続けていきたい。我々はIoTに向けた戦略として、製品群の拡充、プラットフォームやエコシステムの構築、パートナーとの関係構築などといったモバイルの世界での戦略を引き続き続けていく」と述べた。

製品群の拡充、プラットフォームやエコシステムの構築、パートナーとの関係構築などがQualcommのIoTビジネスの基本戦略

 今回、Qualcommは3つの製品を発表した。1つは「QCA9379」で、TVなどデジタルエンターテインメント機器向けのWi-Fi(IEEE 802.11ac)/Bluetooth 4.2のコンボチップで、TVやセットトップボックスなどに無線の機能を付加することが可能になる(現在サンプル出荷中、搭載製品は第4四半期中に登場する見通し)。

 また、“4K ultra HDメディアボックスレファレンスプラットフォーム”はセットトップボックスなどを簡単に設計できるようになるリファレンスデザインで、SoCとしてSnapdragon 820を採用しており、OEMメーカーが簡単にリッチなUIを持つデジタル機器を設計することが可能になる。

QCA9379と4K ultra HDメディアボックスレファレンスプラットフォーム

 そして、もう1つが冒頭で紹介したQualcomm Snapdragon VR820。マレー氏は「現在のVRのシステムはPCやゲームコンソールと一緒に使うもの、スタンドアローン型のもの、モバイル機器と一緒に使うものの3種類がある。ユーザーの使い勝手などを考えると、今後の本命はスタンドアローン型になると考えている」と製品投入の背景を説明した。

スタンドアローン型がHMDの本命とQualcomm

 そうしたスタンドアローン型のHMDを開発するプラットフォームとして提供されるのがQualcomm Snapdragon VR820。要するにリファレンスデザインになっており、OEMメーカーはそれを利用して簡単に自社ブランドのスタンドアローン型HMDを設計できる。Qualcommはこれまでも、スマートフォン/タブレットのOEM/ODMメーカー向けに提供しているリファレンスデザイン「QRD(Qualcomm Reference Design)」を提供してきたが、そのスタンドアローン型VR HMD版的な位置付けだ。

Qualcomm Snapdragon VR820を投入する

 開発にはGoertekが協力しており、今回の発表会でGoertekと協力して開発したリファレンスデザインのスタンドアローン型HMDがデモされた。

 公開されたVR HMDは、バッテリが入っており、充電することで完全にケーブルレスで動作するようになる。つまり、従来はスマートフォンやPC+ケーブル+HMDという組み合わせで使っていたものが、HMDだけでVRを楽しむことができるようになる。ユーザーの動きを検知するモーションセンサー、目の動きを検知するアイトラッキング機能、さらには外部の動きなどを検知するデュアルフロントカメラなどの各種センサーを備えており、それらのセンサーのデータをSnapdragon 820に内蔵されているCPU/GPU/ISPなどを利用して処理し、リアルなVR環境を単体で実現する。

Qualcommが公開したSnapdragon VR820。バッテリも内蔵されており、充電されれば完全にワイヤレスで動作する

 Qualcommによれば、このQualcomm Snapdragon VR820はOEMメーカーなどに対して第4四半期から提供する予定で、その後商用製品が登場する見通しだということだ。

マレー氏のプレゼン資料

時計ブランドのFossilが、Snapdragon 2100を採用したスマートウォッチを発表

Fossil EMEAブランド担当副社長 アントニオ・ナイグロ氏

 米国の有名な時計ブランドFossilは、以前からITに積極的に取り組んでいる企業の1つで、スマートウォッチにも積極的に取り組んでいる。今回の記者会見に、Fossil EMEAブランド担当副社長 アントニオ・ナイグロ氏が壇上に呼ばれ、FossilのAndroid Wear搭載スマートウォッチに関する説明が行なわれた。

 今回、「Q Marshal」と「Q Wander」というAndroid Wear搭載スマートウォッチを発表した。この2製品には、Qualcommが2月に発表したウェアラブル用SoCとなるSnapdragon 2100が搭載されている。従来の第1世代のAndroid Wearには、Snapdragon 400などのスマートフォン向けのSoCをスマートウォッチ用に改良して搭載していたため、ウェアラブル向けとしてば消費電力の面で不利になってしまっていた。しかし、Snapdragon 2100などは最初からウェアラブル向けに開発されてきたので、消費電力を含めよりスマートウォッチ向けとして最適化が進んでいる。

FossilがSnapdragon 2100を搭載したスマートウォッチを発表
Fossilが発表したQ MarshalとQ Wander。Snapdragon 2100を搭載したAndroid Wearスマートウォッチ

 なお、ASUSがIFA期間中に発表した「ZenWatch 3」に関しても、Snapdragon 2100が搭載されていると、ASUSが明らかにするなど、Snapdragon 2100を搭載した製品が徐々に増えていることを印象付けた。

ナイグロ氏のプレゼン資料