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バッファを省いて40ドルの128GB SSDを実現する
(2015/8/14 16:13)
SSD(Solid State Drive)は普通、高速のバッファメモリを搭載している。バッファメモリには主に、DRAMが使われる。SSDの記憶素子であるNANDフラッシュメモリは、データの書き換えに時間がかかるという弱点を有する。主にこの弱点を補うために、高速書き込みが可能なDRAMをバッファメモリとして載せる。SSDがバッファメモリを内蔵していることはストレージ業界では半ば常識であり、当然のことだと言える。
一方、SSDは常にコスト低減の要求にさらされている。コスト低減の牽引役はNANDフラッシュメモリの製造コスト低減(記憶容量当たりのコスト削減)である。NANDフラッシュの記憶容量当たりのコスト低減は続いているものの、記憶容量当たりの単価では依然としてHDD(Hard Disk Drive)がSSDよりも低い。
そこでSSDの価格をHDD並みに下げるため、SSDコントローラ・メーカーのSilicon Motion Technology(以降は「Silicon Motion」と表記)はバッファメモリのDRAMを省くことを考えた。その検討結果を、フラッシュメモリとその応用に関する世界最大のイベント「Flash Memory Summit(FMS)」で8月11日の午後に一般講演セッションで発表した。
SSDがDRAMバッファを搭載することは当然のように考えられており、DRAMバッファを省くことは禁じ手のようにも感じる。言い換えると、SSDの性能が著しく低下するように思える。Silicon Motionも講演ではDRAMバッファを省くことでSSDの性能は低下すると述べていた。例えば、レイテンシ(遅延時間)が長くなる、書き込み回数が増加する、バッファを利用した再書き込み(リトライ)ができない、といった問題点を挙げていた。
DRAMレスでもSSDの性能はHDDよりも高い
ここで重要なのは、DRAMバッファを省いたときのSSDの性能が、HDDの性能と比べて優れているかどうかである。Silicon Motionは、DRAMバッファを省いたSSD(以降は「DRAMレスSSD」と呼称)でも、読み出し速度や過去込み速度、入出力速度といった性能はHDDに比べてはるかに高いと説明していた。例えばPCMarkのベンチマーク値では、約10倍の違いがあるとした。
講演では記憶容量が128GBのSSDを、40ドルで供給することがPCベンダーから求められていると述べていた。代表的なHDDの底値である35ドル~40ドルにほぼ等しい価格だとする。この価格を実現するために考えたのが、DRAMコストの削減である。
DRAMバッファを省くことで、SSDのトータルコストは10%強、低下するとSilicon Motionは推定した。コストが1割強ほど下がることは、厳しい価格競争にさらされている状況を考慮すれば、十分に意味がある。
講演では、同社のSSDコントローラ「SM2256」を採用したDRAMレスSSDが、2016年第1四半期には市場に登場する予定だとしていた。3bit/セルの多値メモリ技術(TLC技術)を採用したNANDフラッシュメモリを搭載する、最大容量が256GBのSSD製品になるという。
そして今後は、DRAMレスSSDが市場に普及していくとの強気の見通しを示していた。2018年~2020年には、SSD全体のおよそ半分をDRAMレスSSDが占めるとする。