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産総研、平面度λ/100の極めて平坦な100mmガラス基板を開発

~関東平野の広さに対して5mmの凹凸に相当

今回開発した超高精度平面基板(直径100mm)(左)とその平面形状測定結果(右)。赤色の部分(外周付近)と最も凹んだ青色の部分(中央付近)との凹凸の差が6nm以下となっている

 独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)は24日、株式会社テクニカルと共同で、平面度がλ/100という極めて平坦なガラス基板を開発したと発表した。

 高精度な平面基板は、半導体や液晶ディスプレイ用露光装置のマスク基板や反射鏡などに利用され、次世代の半導体露光装置(EUV)には、より高精度なマスク基板が求められる。しかし、平面な基板を研磨するにあたっては、研磨技術だけではなく、その基板がどれだけ平坦かを測定(評価)する技術が必要となる。言い換えると、「測れないものは造れない」わけだが、現在、製造現場で用いられている平面度測定装置の測定精度(基板の凹凸の差)はλ/20(約32nm)で、これより平坦な基板は作製できなかった。

 今回のガラス基板は、産総研が新たに開発した角度測定方式を用いた「超高精度平面度測定装置(SDP)」による評価技術を用いた。SDPは、局所的な角度の分布を角度測定装置により測定し、角度分布を積分して物体表面の平面形状(凹凸)を求める。この方式は、平面度国家標準機として用いられるフィゾー干渉計のように、基準となる平面を必要とせず、角度測定の精度のみで平面度の測定精度が決まるが、SDPは測定原理と装置構成がシンプルにも関わらず、口径300mmに対し±1nm以下という高い精度を達成した。

 また、SDPを用いると、フィゾー干渉計に利用される基準平面版に発生する重力たわみの影響まで評価できるため、フィゾー干渉計も高精度化できた。

 この評価技術を用い、テクニカルが超高精度平面ガラス基板の研磨を行なうとともに、研磨した基板の保持機構も開発。枠材や保持位置を工夫することで、設置時の変形やたわみの発生を抑え、他の装置に組み込める状態でも、研磨時と同じλ/100(約6.3nm)の平面度(直径100mm、有効径90%)を持つ基板を実現した。この平坦さは、関東平野の広さに対して5mm程度の凹凸に相当する。このガラス基板を基準平面版として市販のフィゾー干渉計に組み込むだけで、その測定度を大きく向上できる。

 今後テクニカルでは直径150mmの大型平面基板の開発に取り組み、産総研では今秋を目処に、今回開発したSDPを用いた平面度校正サービスを開始する予定。

超高精度平面度測定装置(SDP)の概略図(左)とその外観(右)
市販のフィゾー干渉計に基準平面板として搭載された平面ガラス基板

(若杉 紀彦)