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シャープ、ブラウザベースの電子書籍ビューワを提供開始

~「GALAPAGOS STORE」の試し読みに導入

6月30日 発表

 シャープ株式会社は30日、Webブラウザベースの電子書籍ビューワの開発ならびに「EBLIEVA」(エブリーバ)ブランドで法人向けソリューションとして提供することを発表。また、同社が提供する「GALAPAGOS STORE」サービスで、同日よりWebブラウザ上で「試し読み」できるようにした。

シャープ デジタル情報家電事業本部 モバイルソリューション事業部 事業部長の辰巳剛司氏
同事業部チーフの松本融氏

 現状の電子書籍ストアの多くは、専用アプリを利用するものとなっているが、ユーザー側には「試し読みでもアプリをインストールする必要がある」、「アプリとストアが連動していなくて使いにくい」、「会員や端末の登録など手順が多すぎる」という課題、不満がある。一方、電子ストア事業者側にもビューワアプリの開発への初期投資やOS毎のサポート、各デバイス向けストアでの審査、インストールを促進するための広告が売り上げに直結しないなど、新規参入に高い障壁があった。

 これを解消するために、シャープが「第3世代の電子書籍プラットフォーム」として打ち出したのが、今回のビューワとなる。「EBLIEVA」というブランド名で電子書籍ストア事業者向けに展開する。EBLIEVAとは、“E-Book”(電子書籍)と、英語の“Liberal”(進歩的な)、“Liberty”(自由)、ラテン語の“Liber”(本)といった言葉に基づく造語。

電子書籍サービスにおけるユーザー側とストア事業者側それぞれの課題
ブラウザビューワの提供で課題を解決する
HTML5ベースのブラウザビューワを「第3世代の電子書籍プラットフォーム」と位置付ける
法人向けソリューションは「EBLIEVA」のブランドで展開する

 EBLIEVAの特徴は、電子書籍をWebブラウザで閲覧できる「ブラウザビューワ」を利用する点にある。これにより、アプリなしでWebブラウザさえされば閲覧できることから、マルチプラットフォーム/マルチOSに対応できる。

 EBLIEVAブラウザビューワはHTML5をベースに、同社が推進していきたXDMLやEPUB3で表示。小説などテキスト中心の書籍で使われるリフロー型と、雑誌やコミックなどで使われるフィックス型の両方に対応できる。日本語レイアウトについては、100社の出版社から300以上の検証用ファイルを預かり、制作者側が意図したとおりに表現できるよう品質向上に取り組んだという。

 フィックス型についても、次ページの先読みやJavaScriptのコード見直しによる軽快さ、コンテンツの精細さ、サーバーのハッキングなどに備えた難読化などに工夫を凝らしているとする。

 対応するフォーマットは、EPUB3(リフロー型、フィックス型)、XDMF、OMF、PDF、JPEG。対応ブラウザは、WindowsがInternet Explorer 9以降/Firefox/Chrome、MacがSafari/Firefox/Chrome、iOSがSafari/Chrome、Androidが標準ブラウザ/Chrome。

ブラウザビューワの特徴
リフロー型、フィックス型ともに対応
対応フォーマットとOS別の対応ブラウザ
日本語レイアウト、ビューワのUIなどは同社のこれまでの技術をベースに開発
日本語レイアウトは出版社とも協力して制作者の意図した通りに表現できるよう品質を高めたと言う
フィックス型は軽快さや画質、漏洩対策などが行なわれている

 EBLIEVAの提供は、電子書籍ストアの配信サーバーにビューワ組み込む「パッケージ販売」のほか、ブラウザビューワの機能はシャープのサーバーを用いて提供する「ASP型サービス」の提供も行なう。

 ASPサービスは初期費用を抑え、月額利用料を中心としたビジネスモデルとなる点を特徴とする。ASPサービスは、試し読みサービスなど限定されたコンテンツやプロモーションサイトなど小規模での使われ方を想定した「エントリーコース」、専門的な電子書籍ストアなど中規模ストアを想定した「スタンダードコース」、大規模なストアを想定した「プレミアムコース」の3プランを用意。月額数冊程度の規模感を想定していると言い、それを超えるようなさらに大規模のストア展開はパッケージ販売による自社サーバーでの運用を考えているとしている。

 また、電子書籍取次業者との協業も進めるとしており、株式会社メディアドゥ、株式会社出版デジタル機構、株式会社モバイルブック・ジェーピーとの協業を発表し、ASPサービスと取次サービスと連携しての提供に取り組んで行く。

 さらに、電子書籍ビューワをブラウザベースとしたことで可能となる新たな応用も提案も進めていくという。一般的な電子書籍ストアでの使い方としては、コンテンツをタップするとページの中でビューワを開いて表示したり、ビューワの中に購入ボタンなどを付けるなどといった表現。このほかに、コンテンツを制作する出版社と協力し、例えば雑誌の記事からECサイトや学習教材サイトへ連携したり、分析(マーケティング)に活用するなどのソリューションも提案し、新しい市場を作っていく意気込みを示している。

EBLIEVAはパッケージ販売のほかに、シャープのサーバーを利用したASP型サービスも提供
ASP型サービスは初期費用を抑えた月額利用料を中心に据えたビジネスモデルで、コンテンツ配信事業者の規模に応じて3プランを用意する
取次事業者との協業も進め、取次サービスとASPサービスとを連携しての提案も進める
ブラウザビューワはWebパーツとしての活用により、Webページ内の埋め込みや、ほかのWebサイトとの連携など、さまざまな応用が可能。今後、カタログや電子テキスト、店頭POPなどの用途へも拡げていきたいとしている

 シャープが運営する電子書籍ストア「GALAPAGOS STORE」では、同日より「試し読み」機能にブラウザビューワを導入。PCのWebブラウザからは、コンテンツをクリックするだけでインラインフレームでコンテンツが表示される。またAndroidやiOSではコンテンツを開くと表示がインラインフレームで表示され、さらにタップするとブラウザの全画面表示でコンテンツが表示される。

 ちなみに、GALAPAGOS STOREにおいては、試し読みをした場合の商品購入率と会員登録率が、試し読みをしない場合と比べて、それぞれ約1.6倍、約1.2倍というデータが出ているとのことで、アプリをインストールすることなく試し読みができるブラウザビューワの導入で、新規利用者増加の効果を狙っている。

GALAPAGOS STOREの試し読み機能にブラウザビューワを導入
ブラウザビューワの体感キャンペーンとして、無料読み放題や試し読みの対象冊数を7月31日まで増量している
アプリインストール不要で「試し読み」が可能になることによる購入率や会員登録率向上を狙っている
PC版ではリストから対象のコンテンツをクリックすると、直接ビューワが起動し、試し読みが可能
Androidデバイスでは、まず表紙のみが表示され、さらにこの表紙をクリックすることで試し読みコンテンツが全画面表示される

(多和田 新也)