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NTT、異なる波長で情報を制御する光メモリで世界初の100bit超え

5月23日 発表

 日本電信電話株式会社(NTT)は23日、同社の「ナノフォトニクスセンタ」が、光を空間的に閉じ込めることで情報を記憶する“光メモリ”で、100bitを超える集積に成功したことを発表した。25日(英国時間)に英Nature Photonicsで論文が公開されている。

 NTTは2012年に、屈折率が光の波長と同程度で周期的に変化することで光絶縁体として機能するフォトニック結晶を用い、空間的に光を閉じ込めることができる光ナノ共振器を開発。これを記憶素子とし、書き込み/消去光パルスを送ることでオン/オフを切り替える光双安定と呼ばれる現象を利用して情報を記憶し、30nW(ナノワット)以下の動作電力で、10秒以上の情報保持が可能な4bitの光メモリを開発した。

 この4bitの光メモリは、光ナノ共振器を並列して集積しており、各光メモリチップは同じ波長で動作していた。並列集積のために高集積化(大容量化)が難しかったが、NTTは今回、1本の入出力用光導波路の横に、動作波長の異なる多数個の光メモリチップを直列に集積。入力する光信号波長を選択し、各メモリビットにランダムに読み書きできるようにする「波長多重方式」を採用することで高集積化を実現した。

従来とは異なり波長多重方式を採用し直列にメモリビットを集積(出典:NTT)

 この波長多重方式に最適化した新しい光ナノ共振器(=記憶素子)と、波長の異なる105本の独立した共鳴線を接続。各共鳴線に合わせた波長の光を素子に入力することで、その波長に対応する素子への読み書きをランダムに行なえる。この仕組みで、105bitに対して、0と1の情報が十分なコントラストを持って、独立して記憶できることが確認された。

 各素子の波長の重なりを避ける必要がある波長多重方式に最適化した構造で、かつ高い波長精度を持つ光ナノ共振器を開発。フォトニック結晶上に空けられた格子の周期を0.125nmずつ変えることで共振波長を変化させたナノ共振器を、8.3μmの間隔で直列に配置した。フォトニック結晶上の格子は、3つのパラメータを用いて6つの穴の位置を最適化することで、狭い共振幅でかつ単一の共振モードを持つという特製を満たすことができたという。

書き込み/消去パルスを送ることで0と1の情報を記憶、105bitを独立して動作させた(出典:NTT)
8.3μm間隔で、異なる波長の共振器を配置(出典:NTT)

 NTTでは今後、この波長多重方式を採用した直列集積方式と、従来の並列集積方式を組み合わた2次元配置の集積光メモリを作成することで、さらなる高ビット(大容量)化を目指す。また、電気信号処理では高性能化によって電力消費や発熱が増大するが、光処理はこうした制限を受けない低消費電力なメモリを実現できることから、将来的には、コア間ネットワークを光処理化することで低消費電力化したCPUの実現の可能性にも言及している。

(多和田 新也)