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日本AMD、Radeon Skyの詳細やクラウドゲーミング戦略を説明

~Radeon SkyはGTMF会場特価10万円から

Radeon Skyシリーズ
7月23日 開催

日本AMD マーケティングマネージャー ジャパンセールス&マーケティング本部の森本竜英氏

 日本AMD株式会社は23日、東京・秋葉原で開催されているGame Tools & Middleware Forum(GTMF) 2013において、3月に発表された「Radeon Sky」に関するセミナーを実施。同社のゲーミング戦略におけるクラウドの位置付けや、Radeon Skyの詳細を紹介した。また、非稼働ながら発表済みの3製品が展示された。

 AMDが3月28日に発表したRadeon Skyはクラウド環境のサーバー側に用いられる製品だ。“Radeon”のブランド名を冠していることからも分かる通り、特にゲーム配信用途を想定したものとなる。

 Radeon Skyシリーズには3モデルがラインナップされており、最上位モデルの「Radeon Sky 900」はTahiti(タヒチ)コアを2基搭載したデュアルGPUボード、そのシングルGPU版となる「Radeon Sky 700」、SPが少ないPitcairn(ピトケアン)コアのシングルGPU版となる「Radeon Sky 500」となる。

Radeon Skyシリーズの主な仕様

 いずれのモデルもサーバー側の空冷ソリューションを前提としたパッシブクーラーとなっている。また、基本的にはレンダリングした3Dグラフィックスをネットワークを介して配信するためのソリューションにはなるが、デバッグなどのためにディスプレイ出力端子を備える点も共通。

 モデルごとの仕様は、Radeon Sky 900が、コアクロック825MHz、3,584SP(1,792SP×2)、メモリ6GB GDDR5(3GB×2)、384bitメモリインターフェイス、メモリ帯域幅が480GB/sec、2スロット占有クーラー、TDP 300W、電源が8ピン×2、ディスプレイ出力がDVI。

 Radeon Sky 700は、コアクロック900MHz、1,792SP、メモリ6GB、384bitメモリインターフェイス、メモリ帯域幅が264GB/sec、2スロット占有クーラー、TDP 225W、電源が8ピン、ディスプレイ出力がDisplayPort。

 Radeon Sky 500は、コアクロック950MHz、1,280SP、メモリ4GB、256bitメモリインターフェイス、メモリ帯域幅が154GB/sec、1スロットクーラー、TDP 150W、電源が6ピン、ディスプレイ出力がDisplayPort。

 価格について、日本AMDマーケティングマネージャーの森本氏は「FireProの価格帯ではなく、Radeonの価格帯に近づけるようにしたい」としている。参考として、GTMF 2013の会場では、FirePro製品の代理店となっているエーキューブがRadeon Sky 900を350,000円、Radeon Sky 700を200,000円、Radeon Sky 500を100,000円で、それぞれ台数限定の会場特価を提示していた。

 ちなみに、Radeonブランドではあるが、Radeonのようにビデオカードベンダーによる製造ではなく、FireProと同じく全てAMDにより製造され、長期供給に対応する。また、FirePro同様にAMD自身によるサポートを行なうほか、製品立ち上げのタイミングでもあるので「開発から一緒にやらせていただく」という意気込みを示している。

 FireProとのサポート体制の違いとして、FireProのライフサイクルが5年であるのに対し、Radeon Skyは3年となっている点が異なる。ただ、これについても「応相談」としている。

Radeon Sky 900
Radeon Sky 700
Radeon Sky 500

 アーキテクチャ面では、VCE(Video Compression Engine)と呼ばれるビデオエンコードエンジンを独立して備えており、これによりHD解像度のストリームをH.264へ変換して配信する。より具体的なフローは、Graphics Core Next(GCN)によりレンダリングされたグラフィックスを、フレームバッファからVCEへ取り出して(FrameGrabと呼ばれる)、VCEがエンコード。エンコードされたストリームをホスト側のメインメモリへ転送して、ネットワーク経由で配信する。AMDでは、これらに使われる一連の技術を「RapidFire Technology」と総称している。

 H.264までのエンコードをGPU上だけで完結し、ホスト側のメインメモリへ送るタイミングですでに圧縮された状態となるので、少ない遅延で処理が行なえることをアピールするほか、ドライバ上にはVCEを扱うためのAPIも用意されるという。

 ちなみに、Radeon Sky上で同時に処理できるのはHD解像度で6ストリームとしていが、これはVCEの帯域幅によるもので、ビットレートを落とすことでより多くのストリームの処理も可能。パートナー企業では、CPU側のエンコードも併用することで、より多くのストリームを扱えるようなソリューションも開発が進められているという。また、シェーダを使ったエンコードをサポートすることで、GPU上でさらに多くのストリームをサポートできるようにすることも計画されているとした。

 ちなみに、対応するOSはWindows 7/8/Server 2008 R2/Server 2012、RedHat Enterprise 6.4、Suse Enterprise Desktop/Server 11 SP2、OpenSuse 12.1、Ubuntu 12.1。APIはDirectX 11.1、OpenGL 4.3、OpenCL 1.2をサポート。仮想環境は今後サポートしていく予定となっている。

RapidFire Technologyで実現される事項
RapidFire Technologyの詳細。クライアント側がRadeonであればデコードもGPU上のUVDで処理が可能
対応OSとAPIの一覧。仮想化環境からハードウェアへのアクセスが現状できないが、今後サポート予定

 日本AMDの森本氏はセミナーの中で、クラウドを含めた同社のゲーミング戦略も紹介。Radeonにはコンソール、クライアント、コンテンツ、クラウドという4つの柱があるとした。コンソールはPlayStation 4やXbox OneでRadeonアーキテクチャのSoCが採用されている。クライアントはゲーミングをメインにおいて引き続き展開、コンテンツについてはハードウェアへの最適化などでゲームベンダーとの協業を今後も進めていくとする。そして、4つ目の柱となるのがクラウドの分野だ。

 この分野に向けて、“簡単”、“すぐに使える(インスタントなもの)”、“どこでも使える”というエンドユーザーの要求を満たせるハードウェアとして提供されるのがRadeon Skyで、それに対応したソフトウェアスタックを提供していく。

 また、ゲーム会社や通信事業者が提供するパブリッククラウドだけでなく、ハイエンドゲーマーが構築するホームクラウドもサポートしていくとしている。

 現状ではまだワールドワイドで採用例がないが、コンソールでAMDのSoCが採用され、アーキテクチャ統一を図れることから注目も高まっている。後継モデルのスケジュールも立てられているとのことで、森本氏は「皆さんと一緒に育てていきたいと思っている」と呼びかけている。

Radeonの4つの柱。「クラウドを埋めることで全てAMDになる」(森本氏)と述べる
Radeon Skyはパブリッククラウドだけでなくプライベートなホームクラウド分野も狙う

(多和田 新也)