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Intel、第4世代Coreプロセッサの省電力機能を説明

~現世代に比べバッテリ駆動時間を50%延長

5月22日 発表

 米Intelは22日、記者説明会を開催し、6月4日に発表を予定している第4世代Coreプロセッサ・ファミリー(開発コードネーム:Haswell、ハスウェル)の省電力周りの機能について概要を説明した。

 この中でIntelは、回路設計などを見直した新しい省電力の手法や、現行製品(第3世代Coreプロセッサ)に利用されているP1270の改良版となる22nmプロセスルールによってアクティブ時、アイドル時とも消費電力が大幅に減っていることを解説した。

バッテリ駆動時間が50%伸びる第4世代Coreプロセッサ

 Intelは、2012年9月のサンフランシスコ、2013年4月の北京で行なわれた2回のIDFにおいて、第4世代Coreプロセッサの詳細をある程度明らかにしている。第4世代Coreプロセッサは、現在発売されているWindows PCやMac OSベースのPCに搭載されている第3世代Coreプロセッサ(開発コードネーム:Ivy Bridge、アイビーブリッジ)の後継にあたる製品で、6月4日に正式に発表予定。

 Intel副社長兼Intel Architecture開発事業部事業部長のラニ・ポーカー氏によれば、第4世代Coreプロセッサには以下のような特徴があるという。

  • 第3世代Coreプロセッサと比較してバッテリ駆動時間が50%伸びる
  • これは前世代と比べた数値としてIntelの歴史上最大
  • Ivy Bridgeと比較してアイドル時およびスタンバイ時のバッテリ駆動時間が2~3倍に
  • Windows 8のConnected Standbyを有効にさせた時のスタンバイ時消費電力が第2世代・Coreプロセッサに比べて20分の1に
  • GPUの描画性能が2倍に
  • 最上位モデルでEDRAMがオンパッケージに統合されている

 ポーカー氏は「第4世代Coreプロセッサは大規模サーバーから、超低消費電力が求められるタブレットまで、スケーラブルに対応できるアーキテクチャになっている。特にスタンバイ時の消費電力の削減が大きく、タブレットにも十分利用できるほど。第4世代Coreプロセッサはコンテンツクリエーションにも、コンテンツ消費にもどちらにも利用できるような新しい形のデバイスに利用することができる」と述べ、タブレットやコンバーチブル、ハイブリッド型など新しいフォームファクターに採用することが可能で、新しいカテゴリの製品にもCoreプロセッサが利用できるようになるとアピールした。

第4世代Coreプロセッサの特徴。第3世代Coreプロセッサと比較してバッテリ駆動時間は50%伸びる

新しいCステートの導入で電力効率や性能を向上させる

 ポーカー氏は「消費電力には2つの指標がある。1つはアクティブ時の消費電力であり、もう1つがアイドル時の消費電力だ。第4世代Coreプロセッサでは、この両方が削減されており、その結果としてバッテリ駆動時間が伸びることになる」と述べ、実際どのように削減しているのかについて説明した。

 ポーカー氏によれば、アイドル時消費電力に削減に関しては

  • 新しいCステートの導入
  • 新しいパワープレーン(合計7つ)の導入
  • SoC版(第4世代CoreプロセッサにはチップセットをCPUパッケージに統合した1チップ版が用意されている)では、パッケージ上にあるCPU-チップセット間に新しいインターコネクトを導入

の3つが大きな要素だという。

 Intelは第4世代Coreプロセッサで、新しいCステートを導入する。Cステートというのは、CPUの省電力の状態を示すもので、数字が大きくなればなるほど、より電源が切れている部分が増えることを意味している(逆に言えば、復帰に時間はかかるのだが)。

 第3世代CoreプロセッサまではC6までとなっていたが、第4世代Coreプロセッサでは新しくC7が導入され、かつSoC版にはそれに加えてC8~C10までが導入される。SoC版は、パッケージ内部にチップセットが統合されているので、それも含めてより広汎に電源を切る仕組みが実装される。IntelがIDF北京で公開した資料によれば、C10時のシステム全体(CPU以外のも含むノートPC全体)の消費電力はわずか145mWだという。

 従来CPUとチップセットの間はDMI(Direct Media Interconnect)と呼ばれる専用バスを利用して接続されていた。SoC版でも引き続きプロトコルとしてはDMIが利用されるが、チップセットやインターコネクトそのものがパッケージ内部に入るため、マザーボード上を通すためのより大きな電力や、レイテンシに余裕を持たせたりなど仕様にマージンを用意する必要が無くなり、低消費電力で低レイテンシ、広帯域化を実現することが可能になっているという。

 また、第4世代Coreプロセッサでは、電圧変換器(Voltage Regulator)がCPUダイに統合されており、マザーボード上に実装する必要が無く、変換効率が良くなっているほか、マザーボードの製造コストや厚さなどを抑えることができる。また、IntelがOEMメーカーに提供している「Power Optimizer」というツールを利用することで、CPUだけでなく周辺部分も含めたシステム全体での消費電力の削減が可能になるという。

アクティブ時、アイドル時と両方の消費電力の削減が可能になる第4世代Coreプロセッサ
第4世代Coreプロセッサでは電圧変換器がCPUに統合されるほか、プラットフォームレベルで消費電力の削減が行なわれる

Ivy Bridgeと同じながら、若干改良された22nmを利用

 Intel 副社長兼製造技術事業部ロジック技術統合部長のカイザッド・ミストリー氏は、第4世代Coreプロセッサの製造に利用される改良版22nmプロセスルールについて説明した。

 Intelは、すでに第3世代Coreプロセッサの製造において22nmプロセスルールを導入しており、他社が28/32nm世代に留まる中で、大きな差をつけているのが現状だ。特に、22nmプロセスルールで導入された3Dトランジスタ(トライゲートトランジスタ、ゲート部分が3D形状になっている)は、同じ消費電力で性能を向上させるか、あるいは同じ性能でアクティブ時の消費電力を削減できる。

 Haswellにもこの22nmプロセスルール(Intelの社内名でP1270)が使われるが、改良が加わっており、動作周波数や電圧の下限などの点で同じようなトランジスタの性能を維持しながらリーク電流(リーケージカレント)が2分の1~3分の1になっているという。これにより、アクティブ時の消費電力が大幅に削減できているとミストリー氏は説明した。

第4世代Coreプロセッサの製造に利用される22nmプロセスルールは、第3世代Coreプロセッサの製造に利用されるのと同じ世代だが、若干改良されており同じ性能でもリーク電流が2分の1~3分の1になっている

(笠原 一輝)