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NEC PCとヤマハ、PC用小型スピーカーの説明会を開催

3月6日 開催

 NECパーソナルコンピュータ株式会社は6日、ヤマハ株式会社の技術者を招き、PCのサウンドシステムの説明会を開催した。

 NECパーソナルコンピュータでは、23型液晶一体型PC「VALUESTAR W」、21.5型液晶一体型PC「VALUESTAR N」、15.6型ハイエンドノートPC「LaVie L」の3機種にヤマハのサウンドシステムを搭載。他の国内メーカーも同様に、富士通はパイオニアやオンキヨー、東芝はharman/kardonなど、オーディオが得意な企業と協業しているほか、外資系もサウンド周りを強化し始めている。

 この流れは、家庭での音楽再生機器がPCになってきていることが大きい。日本レコード協会が、2012年3月から8月の期間を対象に、音楽に利用した商品/サービスの調査をしたところ、無料動画配信サイトが1位になった。特に若年層ほどその利用率が高い。また、PCは再生機器として、CD再生、ファイル再生ともに最も使われている。

 NECパーソナルコンピュータでは、2009年からヤマハのスピーカーを搭載し、現在は液晶一体型PCと、上位ノートPCの3機種で採用している。今回の説明会は、そのスピーカー技術に関するもの。

NECパーソナルコンピュータ株式会社 商品企画本部 本部長 栗山浩一氏
ヤマハ株式会社 エレクトロニクス事業本部 技術開発室 技師補の新井明氏

 冒頭、NECパーソナルコンピュータ株式会社 商品企画本部 本部長の栗山浩一氏が挨拶。NECとヤマハの関係について、30年来の付き合いがあるとアピール。30年前の1983年に登場した任天堂ファミリーコンピューター(ファミコン)は、3チャンネル+1ノイズの計4チャンネルを組み合わせBGMや効果音を出していた。栗山氏は「(当時の)8bitパソコンはビープ音だけでゲームを遊んでいた。1万円ぐらいのファミコンに負けていた」とし、ヤマハのFM音源チップなどでPCも音が進歩し、ゲームの質が一気に変わったという。その頃からNECのPCにはヤマハの技術が採用されていた。

 技術説明は、ヤマハ株式会社 エレクトロニクス事業本部 技術開発室 技師補の新井明氏が行なった。

 まず2009年10月に登場したのが、VALUESTAR Wの「SR-Bass」採用2.1chスピーカー。ヤマハが2006年に発売した小型キューブスピーカー「NX-A01」の技術があるのなら、PCに使ってみたいというのがスタートだったという。当時、携帯オーディオプレーヤーなどが普及して音楽を聴く環境が変わり、ヤマハがPCオーディオスピーカーに力を入れ始めた時期とも重なるとした。

 当初はSR-Bassのステレオスピーカーとして開発していたが、小型オーディオ用に開発した2.1chスピーカーに発展し、SR-Bassはウーファー用に使われた。バスレフ方式の一種で、空気バネと揺れるラジエーターの質量の共振を利用し、筐体内部に振動板から発せられるエネルギーを効率良く低音域に変換できるとしている。パッシブラジエータの利点として、振動板が固定されていてエッジで支える必要がなく、エッジ部分を柔らかい素材にできるという。SR-BassはSwing Radiator Bassの略。ステレオスピーカーは密閉型チタン逆ドームタイプ。

開発の出発点になった小型キューブスピーカー
SR-Bassの基本構造
SR-Bassスピーカーの試作機
2.1chシステムに発展
VALUESTAR Wの液晶下部の左右と裏側に配置
スピーカーのエンクロージャーの種類

 1年後の2010年10月に投入したのが、VALUESTAR Nの「FR-Port」採用スピーカー。こちらはバスレス方式で従来使われていた円筒のポートから、両端の幅を広げた形。上から見るとラッパ状だが、横から見ると長方形になっている。従来と同様の円筒ポートのように円のラッパ状にすると、音の振動で吐き出される空気が渦輪になり、ノイズの原因になってしまうが、長方形に広げた形にすると、渦輪が細かくなり消失するという。FR-PortはFlat Radial Portの略。

 通常は振動板から発した表面からの音が、中/高音域は聞こえ、低音域はほとんど聞こえないが、筐体内部の低音域エネルギーがFR-Portを経由すると増幅され耳に届くようになる。空気のバネとFR-Portの細い部分の空気の質量でヘルムホルツ共鳴を起こすのだという。加えて、FR-Portの音の出口を振動板の近くに配置することで、ほぼ同じ位置から低/中/高音域が聞こえ、定位を持たせているとした。

 2011年2月には、ノートPCのLaVie Lにも搭載。同じFR-Portを採用し、より小型化されている。ノートPCの特徴として、液晶を開いた状態は後側に音が行かないバッフル効果が受けられる。そのため、液晶ディスプレイ直下、キーボードの上というベストの場所を確保。ここはパーツ類にとっても一等地だが、協力してもらったという。

円筒のバスレフポートでは筐体の内にも外にも渦輪が発生し、ノイズの原因になる
FR-Portの構造。左右へ放射状に広がっているが、上下方向には広がらない
VALUESTAR NのFR-Portスピーカー構造
FR-Portとラッパ状の出口の空気流の違い
FR-Port内の空気の振動の概念図
ノートPCの一等地に配置しバッフル効果を活かす

 SR-BassとFR-Portは、いずれもヤマハ内部で表彰された技術だという。だが、FR-Portに関しては、ヤマハの製品ラインナップにここまで小型のスピーカーが無いため、自社製品としては採用していない。製品として売られているのはNECパーソナルコンピュータのPCだけだという。新井氏は「協業によってFR-Portを世に出せて嬉しい」と表現した。

(山田 幸治)