株式会社ジャストシステムは、専用のAndroidタブレットを用いた、小学生向けクラウド型通信教育「スマイルゼミ」を12月17日より開講すると発表した。
自動採点やクラウドへの成績の保存、保護者への学習状況のメール報告などタブレットならではの機能と、同社が13年間にわたって培ってきた小学校向け学習・授業支援ソフトのノウハウを活かした通信教育。
会費は小学生1年生で12カ月一括払いの場合で、1月あたり2,980円。また、12月20日までに申し込むと、28,350円のタブレット代が無料となる。
20日に行なわれた発表会では、同社ライセンス事業部事業部長の植松繁氏が、スマイルゼミ立ち上げの経緯などを説明した。
ジャストシステムというと、「ATOK」や「一太郎」などの製品が有名だが、実は1999年から小学生向け学習支援ソフト「ジャストスマイル」を発売しており、小学校における導入率は8割に達する。植松氏によると、その高い導入率の背景には、ログインした生徒の学年別配当漢字に応じて、かな漢字変換を行なう「ATOKスマイル」など、学校現場の意見/要望を徹底的に取り入れた機能強化があるという。
今回、同社が小学生向け通信教育事業に乗り出したのには、学習指導要領改定にともなう学校教育の変化が挙げられる。「ゆとり教育」とも揶揄される2002年度の学習指導要領では、国語/算数/理科/社会の主要4教科の内容が大幅に削減された。
その結果もあってか、OECD生徒の学習到達度調査(PISA)による数学的リテラシー得点で、2000年に日本は1位だったものが、2003年に6位、2006年には10位に落ち込んでしまった。
それを受け、2011年度の学習指導要領では、「脱ゆとり」を目指し、教育内容が再度強化されることとなったのだが、2002年と比べると、授業時数は約1.1倍なのに対し、教科書の総ページ数は約1.5倍に増えることとなった。そのため、学習進度が速まり、生徒の理解度の格差が拡大されるという懸念も生じている。
その対策としては、基礎/基本を定着させるため、その日のうちに復習/解決することと、さらには毎日できるよう習慣化させることが必要となる。しかし、植松氏は、通信添削では、添削は丁寧だがその日のうちに解決できない、学習塾/家庭教師では、その日のうちに解決できるが、毎日は行かないし、費用がかさむという問題があると指摘。
植松繁氏 | 同社の小学校でのソフトウェア導入率は実は8割にも及ぶ | PISA数学的リテラシー得点の推移 |
学習指導要領改定による授業時数と教科書ページ数の推移 | 2011年の改定により、授業時数以上にページ数が増量され、理解度格差の拡大につながるという懸念も | 他方で、通信添削、学習塾/家庭教師はこういった問題を抱える |
そういった中、専用のタブレットを利用して学習することで、「その日のうちに解決できる」、「子供達が夢中になる」、「自ら学習し、習慣化できる」という特徴を備えるものとして同社が提供するのがスマイルゼミとなる。
講座内容は、科目が国語/算数/理科/社会(理科/社会は3年生から)で、1回約20分のものが、1カ月約20講座用意。いずれも、学習指導要領に定められる目標および内容に基づいて作成されているほか、漢検ドリル、計算ドリルも用意される。
タブレットのインタラクティブ性や、マルチメディア性を活かし、国語では読解問題の文章を音声再生したり、漢字の書き順をアニメーション表示させ、次は指でなぞって覚える、算数では文章題のヒントを図解で表示、理科では実験シミュレーションをアニメーションで再生、社会では地図を拡大縮小といったことができ、同社では五感を使って操作することで、より理解を深められるとしている。もちろん、答え合わせは即座にできる。
また、学習意欲を高める仕掛けとして、講座の習熟度に応じて星を与える「スターナビ」システムを盛り込んだ。これは、100点で星3つ、80点で星2つを与えられるのだが、獲得した星の数に応じて、独自のゲームを遊ぶことができるようになっており、星の獲得とゲームという報酬によって子供の学習意欲が向上し、また勉強してから遊ぶということが習慣化するとしている。なお、ゲームを遊べる時間は保護者が事前に指定できる。
ゲームを遊ぶには「れんらくしてあそぶ」をタップするのだが、この時、保護者には学習結果の内容がメールで送信される。さらに、それに対して保護者は、スタンプやコメントを返すことができるようになっているほか、詳細な学習状況は専用のWebサイト「みまもるネット」で確認できるなど、子供の学習に対して保護者が励ましや確認をできる仕組みも盛り込まれている。
勉強のあとは、集めた星の数だけゲームアプリで遊ぶことができる | 学習の状況はリアルタイムで保護者にメール送信 |
保護者からはスタンプやコメントを返信できる | 専用サイトで学習状況の分析も可能 |
タブレットはOSにAndroidを採用するが、スマイルゼミのアプリだけが動作し、他のアプリをインストールすることはできない。カメラ機能は搭載しており、撮影した写真を壁紙にしたり、連絡帳の内容を撮影して保護者に送信する機能もある。
液晶は1,024×768ドット表示の9.7型IPS。9.7型を採用したのは、漢字のなぞり書きなどに適しており、普段使うノートと同じようなサイズだからだという。本体サイズは240×190×9.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約600g。無線LANはIEEE 802.11b/g対応。スタンドにもなる専用のカバーが付属する。
開講を記念し、12月20日までに申し込みを行なうと、通常28,350円のタブレット代金と入会金が無料(6カ月間の継続受講が条件)、内容に納得できなかった場合は開始30日以内なら会費を全額返金、オリジナル図書カード1,000円プレゼントというキャンペーンを行なう。
タブレットは持ち運ぶため、落として壊したり、紛失したりといったこともあり得るが、年1,890円の「タブレットあんしんサポート」に入ることで、安価に修理/交換ができる(交換費用は3,150円)。また、学習状況などはクラウドに保存されるため、端末を取り替えても、同じ状態が再現されるほか、学年が上がった場合は、タブレットはそのまま、コンテンツが新しい学年のものに置き換わる。
専用タブレット | カバーを開けたところ | カバーは畳んでスタンドになる |
カバーを外したところ | 右側面に電源ボタン、AC端子、HDMI、Micro USB×2、カードスロット、ヘッドフォン端子などがある | 上面。音量ボタンの左にあるのはハードウェアの戻るボタン |
左側面 | 下面 | 背面。カメラで写真も撮影可能 |
(2012年 11月 20日)
[Reported by 若杉 紀彦]