メルコホールディングスは29日、2013年度上期(2012年4月~2012年9月)の連結業績に関する説明会を都内で開催した。
売上高は、前年同期比18.7%減の490億5,800万円、営業利益は77.7%減の8億9,100万円、経常利益は68.7%減の13億3,000万円、当期純利益は65.7%減の8億8,000万円の減収減益となった。
各部門におけるメルコのシェア(BCN) | GfK調査でも高いシェア | 上半期の連結決算 |
決算結果の推移 | 売り上げ減少の要因 | 資産や負債額など |
前年同期には、地デジ化移行特需で大きくTV関連製品が成長したものの、今期はその反動で大幅に需要が減少。さらに、ネットワーク製品の価格下落が影響した。
メルコホールディングスの松尾民男取締役管理本部長は、コメントの冒頭に、「今日の会見は朝から気が重かった」と前置きし、減収減益の業績について説明。「売上高では、2004年度上期以来、8年ぶりに売上高で500億円を下回った。また、残念ながら全部門で前年割れとなっている。すべてにおいて市場がシュリンクした。とくにデジタルホーム分野での落ち込みが大きい。多くの分野でトップシェアを獲得しているだけに、市場動向の影響を大きく受けることになった」などと総括した。
だが、「フラッシュメモリは、デジカメなどでも活用できることで需要を維持。前年並みの実績になっている」とした。
製品別の売上高は、メモリが前年同期比8.8%減の58億6,000万円、ストレージが9.9%減の238億0,400万円、ネットワークが20.8%減の105億600万円、デジタルホームが86.7%減の6億9,200万円、サプライ・アクセサリが3.7%減の51億9,900万円、その他部門が17.5%減の29億9,700万円と、すべての部門で減収になった。
メモリは、PCへのメモリ初期搭載容量の大容量化による、追加購入需要の低迷により、販売台数および売上高ともに前年割れとなった。また、USBメモリ分野は、SDカードなどのメモリカードほか、USB 3.0対応フラッシュメモリの拡販に務めた結果、販売台数が増加したものの、販売価格の下落により売上高は前年割れとなった。
ストレージについては、TVの販売台数の落ち込みに伴い、録画用外付けHDDの需要が減少したという。外付けHDDは赤字になったが、下期は黒字化を狙うという。
また、ストレージの上期販売台数は前年同期比で21.0%減となった。
「販売台数の落ち込みに比べ、売上高の落ち込みが少ないことからも、単価が上昇していることがわかる。これはタイの洪水被害の影響で一時的に値上がりし、その後下落傾向にはあるものの、今年(2012年)春以降も、まだ前年同期の価格よりも高いものとなっているのが要因。上期に引き続き、下期も緩やかに値下がりはしていくだろう」と予測した。また、「ストレージは、昨年(2011年)下期は、タイの洪水被害により、予定通りに製品が出荷できないという状況にあったため、今年度下期は前年実績を上回ることになるだろう」とした。
ストレージの下期の販売計画は190億円、NASは75億円を見込んでいる。
「2011年度下期のストレージの販売台数は170億円であり、これは落ち込みすぎた。だが、2010年度下期実績の222億円までには回復しない。NASは、2011年度下期は68億円となっており、あまり落ち込みはなかった。これは優先的に利益率の高いNASに部材を回したため。今年度下期も引き続き拡大させたい」と語った。
無線LAN関連では、「スマートフォンの広がりなどがプラス要因だが、IEEE 802.11a/b/g/n規格の製品への買い換え需要がかなり落ち込んでいるのがマイナス要素。当社では、すでにac規格対応の製品を発売しているが、IEEE 802.11ac規格の認可が日本で下りるのが来年(2013年)春。それまでは買い控えの動きが見られるのではないか」としたほか、「価格競争の激化と製品単価の下落も影響している」という。
サプライ・アクセサリ分野は、スマートフォンやタブレット端末の市場拡大により、これら関連製品は伸張したものの、PC向けやTV向け製品が低迷した。
「スマートフォン関連は激増しているが、PC関連の落ち込みをカバーしきれなかった。スマートフォン関連製品は、昨年8月時点で200万台程度の規模だったが、これが今年8月には350~360万台規模に増加しており、iPhone 5の登場などにより、今後も増えていくだろう。iPhone 5の発売1週間前に対応ケースを展示することができ、製品をいち早く投入できる体制も整ってきた。また、単価が低い製品だけでなく、4,000~5,000円といった価格帯の製品も品揃えしている」などとした。
スマートフォンを中心とした戦略 | 無線LAN製品にAOSS 2を展開 | Windows Phoneへの対応 |
Wi-Fi対応のポータブルHDD | スマートフォンのアクセサリを強化 | スマートフォン関連機器の拡大 |
デジタルホームでは、「昨年同期には、アナログTVに接続する地上デジタルチューナなどが相当な台数が売れたものの、今期はそれがほぼゼロになった。デジタルホーム関連製品では、販売台数で88.4%減と大幅に落ち込んでいる」と述べた。デジタルホーム分野では、通期でも5億円程度の赤字を見込んでいるという。
「おもいでばこ」の投入 |
一方、ゼン録については、「価格が高いことや、使い方を訴求できなかったことで、まったく売れなかった」としたが、「おもいでばこは、シニア層などに向けて、これからも売れると期待している。下期にも積極的に販売していく」と語った。
海外売上高は前年同期比12.8%増の95億7,400万円となり、アジア・オセアニアでは36.5%増の48億1,300万円、北米・中南米は39.7%増の20億2,300万円、欧州は22.1%減の27億3,800万円となった。
「海外事業は成長しているが、期初計画に比べるとまだ計画に達していない。欧州の景気後退が影響している」とした。また、中国市場における日本製品不買運動などに関する影響は、「現在のところない」とした。「まだ中国でバッファローブランドが日本製品としての認知がされていないことも理由の1つ。だが、販売動向を注視していくことは必要であり、さらに中国の生産拠点への影響は、今後の懸念材料の1つ」などと語った。
製品別の売上高 | 海外の売上高 | デジタルホームとストレージ製品 |
ネットワーク製品とアクセサリ製品 | フラッシュメモリの価格推移 |
●下期も下方修正へ
一方、同社では、2012年度の通期業績見通しを下方修正も発表している。
売上高は、期初見通しの1,380億円から344億円減の1,036億円に、営業利益は48億円減の32億円、経常利益は46億円減の40億円、当期純利益は30億円減の24億円とした。
製品別の売り上げ見通しも、すべての部門で下方修正。メモリは、約41億円減の118億400万円、ストレージが約133億円減の509億4,100万円、ネットワークが約84億円減の209億1,900億円、デジタルホームが約42億円減の15億8,400万円。サプライ・アクセサリが約26億円減の120億8,800万円、その他事業が約18億円減の62億6,400万円とした。
「Windows 8の登場もあるが、PC市場は厳しい環境にある。法人向けでは、ようやくWindows 7の導入が始まったところであり、それにあわせてストレージやメモリの需要拡大を期待している」とした。
また、松尾取締役は、同社が掲げるデジタルライフ戦略についても言及。「『デジタルライフ、もっと快適に』という我々が狙った時代がようやくやってきた。これから浸透していくことになるだろう」としながら、「さまざまな機器が家庭内で接続されるようになると、無線が前提となる。現在、家庭内で利用されているアクセスポイントの6~7割が当社の製品。アドバンテージがある」と強調した。
業績の見通し | 製品別の見通し | 設備投資費や研究開発費など |
(2012年 10月 29日)
[Reported by 大河原 克行]