米Microsoftは、Windows 8の販売前日である10月25日(現地時間)に、ニューヨークでイベントを開催。MicrosoftのCEOであるスティーブ・バルマー氏や、WindowsおよびWindows Liveの事業担当社長であるスティーブン・シノフスキー氏などによる基調講演とともに、アメリカをはじめ世界8カ国で発売するWindows RT機「Surface」のお披露目を行なった。
「Windows 8は、コンピューティングの進化と革命における重要な起点となるだろう。3年前に発売したWindows 7は、これまでにライセンス数が6億7千万に到達するなど、最も成功したWindows OSだ。しかし我々は、Windowsの概念を大胆に再構築する形でWindows 8を開発した。Windows 8は、この先の10億人のための新たなコンピューティングを実現する次世代のWindowsだ」。基調講演に登壇したシノフスキー氏は冒頭でこのように語るとともに、Windows 8の特徴を示しつつ、最高の完成度を誇るWindowsであることをアピールした。
Windows 7搭載PCをWindows 8にアップグレードするだけで、起動時間は36%高速化、バッテリ駆動時間は13%向上、メモリ使用量は22%削減といったさまざまな部分で改善がなされるとともに、タッチ操作に最適化されたユーザーインターフェイスやアプリが標準で用意。タッチスクリーンを用意することで新時代の到来が実感できると述べ、Windows 8の優位性を強調した。
また、Windows RTについても言及された。Windows RTはARMベースのプロセッサで動作するようにゼロから開発されたWindows OSで、バッテリを気にせず終日利用できるタブレット型やコンバーチブル型のモバイル端末を容易に実現できるという。また、従来のWindowsプログラムこそ動作しないものの、メールやピープル、ミュージック、ビデオ、ゲームなどのWindows 8アプリや、Word、Excel、PowerPoint、OneNoteが含まれるOffice 2013 RT Previewが標準で付属。対応アプリはWindowsストアで配布されるため、信頼性やセキュリティにも優れると指摘。これによって、Windowsの新たな可能性が実現されると語った。
基調講演の後半には、スティーブ・バルマー氏が登壇。「私は本当に、本当に興奮している。Windows 8がついに登場する。我々は、Windows 8がこれまでのPCの常識を打ち破るものになるよう、Windowsを再構築した。Windows 8の登場で、Microsoftやユーザーの新たな時代が始まる」と、いつものように興奮気味にステージ上を動き回りつつ語った。また、シノフスキー氏同様、Windows 8のタッチインターフェイスの追加やWindows RTの投入、タッチインターフェイスに最適化されたアプリやさまざまなサービスを用意するといったWindows 8の魅力が語られた。そして、「Windows 8の世界へようこそ!」という言葉で基調講演は締めくくられた。
基調講演に登壇した、WindowsおよびWindows Liveの事業担当社長のスティーブン・シノフスキー氏 | Windows 7のライセンス数は6億7千万に到達 |
Windows 8の基調講演に続き、Surfaceの開発チームを統括するパノス・パネイ氏によって、Windows RTベースのタブレット端末「Surface」が紹介された。Surfaceは、Microsoftが発売する初のWindowsハードウェアだ。Surfaceには、Windows RTベースとWindows 8 Proベースが用意されるが、今回披露されたのはWindows RTベースのSurfaceだ。
冒頭でパネイ氏は、「このような製品を実現するために、多大の時間やコストを費やすのは、人々が手にしてすばらしいと感じる製品を送り出したかったから。」と語り、Surfaceのさまざまな特徴を説明した。
Surfaceは、10.6型のHDディスプレイを搭載することでマルチタスクなどのWindows体験を完全に表現できること、ClearType表示対応で精細な文字が表示されること、液晶は視野角が広く、明るく鮮やかな映像が表示できること、10時間を超えるバッテリ駆動を実現していることなどの特徴があるとし、それら全てを1.5ポンド(約680g)という数字以上に軽く感じる筐体に詰め込んでいる。また、液晶表面のガラスにはCorningのGorilla Glass 2を採用するとともに、筐体には「VaporMg」と呼ばれる特殊加工を施したマグネシウム合金を採用することで、高い強度を実現していることも紹介。実際に壇上でSurfaceを床に落下させ、壊れたり動作に支障が出ないことを証明して見せた。
さらに、周辺機器との親和性の高さもアピールされた。例えば、microSDカードスロットが用意され、映画などのデータを保存した大容量のmicroSDカードを取り付ければ、10時間を超えるフライトでも長時間好きな映画を楽しめることや、USBコネクタが用意され、外部ストレージやデジタルカメラなどさまざまな周辺機器を接続して利用できること、背面のキックスタンドで本体を立て、キーボード機能を埋め込んだ厚さ3mmのタッチカバーを取り付けることで、クラムシェル状態でも利用できるようになることなどが、実際にデモを交えながら説明された。
「私にとってSurfaceは、タブレットではないが、これまで使ってきた中で最高のタブレットだ。また、ノートPCではないが、これまで使ってきた中で最高のノートPCだ。Surfaceは、ハードウェアとソフトウェアの概念を同時に再構築する存在だ」と、自画自賛にも聞こえるこの言葉はシノフスキー氏のものだが、自信をもって市場に投入できるクオリティの実現を成し遂げたと自負しているからこその言葉とも言える。それだけに、このタイミングでの日本市場への投入が見送られたことは非常に残念に感じる。
今回のイベントは、新しい発表を行なう場という性質のものではなく、Windows 8およびSurfaceの発売前夜祭のような雰囲気で、Windows 8についておさらいするとともに、多くの優位性をアピールしつつ、各登壇者がWindows 8の発売を迎えて非常に興奮している、という内容に終始した。それでも、各登壇者の言葉からは、MicrosoftのWindows 8やSurfaceに対する自信や、寄せる期待の高さが強く伝わってくるものであった。
ところで、今回Microsoftは、マンハッタンを代表する繁華街タイムズスクエアに、直営店であるMicrosoft Storeの臨時店舗を構え、10月25日午後10時(現地時間)に店舗をオープンするとともに、そのオープンにあわせてカウントダウンイベントを実施した。タイムズスクエアの臨時店舗周辺では、Windows 8対応PCを多数用意したハンズオンコーナーを設置するとともに、タイムズスクエア周辺に設置されている広告用ビジョンの大多数をWindows 8の映像で埋め尽くされ、タイムズスクエア全体がWindows 8に占拠されたかのような雰囲気となった。
カウントダウンイベントには、パノス・パネイ氏に加え、臨時店舗の店長であるメリンダ・ジョージ氏が参加。Windows 8にちなんで8からカウントダウンがスタートし、午後10時ちょうどのテープカットとともに店舗のベールが落とされ、臨時店舗がオープンとなった。また、このカウントダウンイベントの前後は、一時的に店舗前の道路が通行止めとなり、Surfacを買い求める300人近くの行列に加えて、多数の観光客によって周辺が埋め尽くされ、大いに盛り上がった。
(2012年 10月 29日)
[Reported by 平澤 寿康]