レノボ・ジャパン株式会社は9日、ゴルフボール4個幅のコンパクトなデスクトップPC「ThinkCentre Tiny」シリーズを発表した。
レノボ史上最小という手のひらサイズを実現したデスクトップPC。筐体の一辺がゴルフボール4個程度の幅になっている。本体サイズは179×182×34.5mm(幅×奥行き×高さ)。独自の冷却技術「Intelligent Cooling Engine 2」により、小さな筐体での冷却を可能にしたという。
Tiny筐体専用のブラケットは、75mmおよび100mmピッチのVESA規格に対応。また、筐体を納める形のオプションを用意する。当面は光学ドライブ(USB Hub 2ポート付き)、セカンドHDDの2種類で、2012年末頃にはバッテリも提供予定。
ラインナップは「ThinkCentre M92p/M92 Tiny」、「ThinkCentre M72e Tiny」。シンクライアント用途に、HDDではなくフラッシュメモリのカスタマイズも用意する。
ThinkCentre M92p/M92 Tinyはプレミアムコンパクトモデルに位置付けられ、背面にオプション用ポートを用意。DisplayPort、シリアルポート、USB 2.0、無線LAN+アンテナの4つから、必要なものを選択できる。DisplayPortを選択した場合は4つのディスプレイを1つの画面として表示する「モザイクモード」に対応し、金融系やデジタルサイネージ用途を見込む。M92pは、vProをサポートする。ThinkCentre M72e Tinyはスタンダードモデルで、オプション用DisplayPortには非対応。
現時点で公開可能な仕様は、CPUが第3世代Coreプロセッサー・ファミリー、第2世代Coreプロセッサー・ファミリー、Celeronでいずれも35W版、チップセットはM92p/M92が次世代Qシリーズ、M72eがH61。ストレージはHDDが320GB/500GB/750GB、SSDが128GB。
標準インターフェイスは、USB×5、DisplayPort、ミニD-Sub15ピン、LANポートなどを装備し、無線LANを追加可能。これらに加えて、先述の追加DisplayPort、追加無線LAN、シリアルポート、追加USBなどをオプションで用意する。電源は65WのACアダプタ。
なお、詳細仕様、価格、販売開始日などは、6月上旬に案内するとしている。基本的には法人向けだが、直販サイトは個人でも購入できる。
ThinkCentre M92z All-In-One | ThinkVision LT2323z |
また、液晶一体型の新機種「ThinkCentre M92z All-In-One」、23型ワイド液晶ディスプレイ「ThinkVision LT2323z」も発表した。
ThinkCentre M92z All-In-Oneは、vProをサポートする液晶一体型PC。23型/20型が用意される。新しいツールレス筐体を採用し、23型はIPS方式/LEDバックライト液晶を搭載する。筐体は中央に支柱のあるスタンドタイプ、左右両端と背面で支えるフォトフレームタイプの2種類。また、タッチパネルモデルもラインナップする。
ThinkVision LT2323zは、コラボレーションプラットフォーム「Microsoft Lync」の認証を世界で初めて取得したという液晶ディスプレイ。フルHD対応のカメラ、デジタルマイク、スピーカーを内蔵し、VoIP用の各種ボタンを備える。このほか、USB 3.0対応Hub、L字ブラケットを使ったTinyシリーズの装着などの特徴がある。パネルはIPS。
これら2製品も、6月上旬に詳細を案内する予定。
同社は9日、都内で新製品発表会を開催。日本で先行発表した経緯や、製品の詳細、用途などを紹介した。
レノボ・ジャパン マット・コドリントン氏 |
Lenovoグループ トム・シェル氏 |
最初に、レノボ・ジャパン株式会社 常務執行役員 製品事業部ゼネラルマネージャーのマット・コドリントン氏が挨拶。国内において過去3年でシェア2倍以上に成長していることや、中国や成熟市場でシェアを維持、強化する“守り”の部分と、タブレットの新デバイスや、新興市場でのシェア拡大など“攻め”の部分の両方を持たせた戦略を紹介。日本におけるデスクトップPCでは、要求の厳しい顧客を満足させるため、生産性、管理性、堅牢性、環境対応などへ投資を継続するという。そして、レノボからデスクトップPCの「動かない価値」を再提案するとした。
次に、Lenovoグループバイスプレジデント グローバルデスクトップビジネスユニット ゼネラルマネージャーのトム・シェル氏が「ThinkCentre」シリーズの国内戦略を説明した。
法人向けのデスクトップPCは、トレンドとしてマルチディスプレイとそれに付随するグラフィックス性能、光学ドライブのオプション化、無線機能やUSB 3.0の普及、環境対応などを挙げた。
今回のTinyシリーズは、それらを実現するため、生産性向上のための第3世代Coreプロセッサー・ファミリーの採用、vPro対応、コンパクトな筐体、65W以下の消費電力などを実現したという。旧IBM時代から、容積6.7LのThinkCentre ultra small、テニスボール4個幅のThinkCentre M57を展開してきたが、今回は小型、性能、エネルギー効率、静音性などにおいて最高のものだとした。
一体型のThinkCentre M92zは、ビジネスシーンに特化した機能を盛り込み、Web会議ソリューション「ThinkVoIP」、タッチ対応モデルの非光沢パネル採用、20型モデルでは初というvPro対応を果たした。また、ツールレス筐体も進化し、VESAスタンドをツールレスで着脱できるようになった。このほか、環境対応として、業界初という「Cisco EnergyWise」、「ULE Gold」、「TUV Green Mark」の認証を取得しているという。
液晶ディスプレイのThinkVision LT2323zにおいても、IPSパネル、ThinkVoIP、TUV Green Markといったビジネス向けの仕様とした。Tinyシリーズと組み合わせることも想定し、VESAブラケット対応で背面に搭載可能。もちろん、そのほかのVESAマウント対応シンクライアント端末なども装着できる。
シェル氏は今回の製品群が日本先行発表となった理由について説明。1つは、日本のオフィス環境がスペースなどの制約が厳しく、Tinyシリーズの持ち味が活かせること。2つ目は、日本が世界で3番目の規模のPC市場であり、グローバル戦略上、重要な国であること。3つ目に、日本は今回の小さなフォームファクタのような革新的な新技術に対しての意識が非常に高いことを挙げた。
法人向けデスクトップPCのトレンド | 液晶一体型の特徴 | 小型PCの進化 |
続いて、インテル株式会社 技術本部 本部長の土岐英秋氏がゲストとして登壇。22nmプロセスで使われたトライゲートトランジスタや、vProの進化について紹介し、今回のTinyシリーズへの期待を寄せた。これらの詳細はインテルからの発表時に改めて案内するとした。
インテル 土岐氏 | トライゲートトランジスタ | vProの優位性 |
レノボ・ジャパン 大谷氏 |
最後は、レノボ・ジャパンのThinkCentre製品担当の大谷光義氏が、今回の製品の詳細や用途を解説。東日本大震災以降、ノートPCへの移行が増えている中で、デスクトップには性能や大画面といった部分が期待されており、Tinyは日本市場に合わせた筐体だとした。
Tinyシリーズの用途については、通常のデスクトップのほか、そのコンパクトな筐体とVESA対応を活かし、組み込み系、スペースが限られるコールセンター業務、学校などの教育施設、宿泊施設、金融機関などを想定。株式会社内田洋行と協力し、オフィスや教育施設、コールセンターのイメージを実際に展示した。
オフィスのイメージ | 教育施設のイメージ | コールセンターのイメージ |
オフィスをイメージした展示の様子。ディスプレイの横や、ファイル棚にTinyを置いている | |
テーブルの下に設置した状態 | こちらはコールセンター風。電話の上のアームに付けられているのがTiny |
独自の冷却機能「Intelligent Cooling Engine 2」(ICE2)は、CPUを集中的に冷却するクーラーで、従来の「ThinkCentre M91p」シリーズの第1世代から機能を強化。BIOSから性能(ファンを高速化)と静音性を選択できるようになった。内部温度が設定した値を超えた場合には、レノボのPC Cloud Managerと次世代vProにより、ポップアップ、メールによるアラートを行なうよう緊急告知機能を追加した。
オプションのDisplayPortを追加すると使用可能な4ディスプレイを1画面にするモザイクモードは、標準のDisplayPort、追加のDisplayPortともに、オプションのデュアルDisplayPortアダプタ(DP to Dual DPドングル)が必要。PCからは2画面として扱う形になる。DisplayPort 2つとミニD-Sub15ピンによる3画面にも対応する。
ThinkCentre M92zは、一体型として初という冷却機能ICE2を採用したほか、BIOSによるUSBポートの制限、スタンドのツールレス着脱などの新機能を挙げた。Web会議のThinVoIPでは、カメラが人の顔を認識して集音の方向を調節する「Communication Utility 3.0」、画面用ユーティリティ「View Management Utility 2.0」を搭載。画面を最大16ウィンドウまで分割したり、任意のパーティションに設定してアプリケーションを起動、配置できる。
最後に「動かない価値」の戦略基盤として、一体型は全部入り、大画面や管理のしやすさなどを、Tinyシリーズは柔軟な置き場所、使用環境、画面サイズを自由に選べること、オプションによる適材適所の仕様を訴求していくとした。
ThinkCentre M92zは23型と20型、スタンド型とフォトフレーム型を用意 | さまざまな環境対応 | View Management Utilityによるウィンドウ分割 |
ThinkVision LT2323zの特徴 | LT2323zの背面にTinyをVESAでマウント | TinyからLT2323zの3画面へ出力。スタンドはピボット対応 |
(2012年 4月 9日)
[Reported by 山田 幸治]