日本マイクロソフト、山梨県の地域活性化への取り組みで報告会
~「地域、農業の活性化にはICTが不可欠」と横内山梨県知事

山梨県の横内正明知事(左)に成果報告書を手渡す、日本マイクロソフトの織田浩義執行役パブリックセクター統括本部長(中央)と日本マイクロソフト 業務執行役員社長室長兼シチズンシップリードの牧野益巳氏(右)

3月13日 発表



 日本マイクロソフト株式会社と山梨県は13日、2011年2月23日から2012年3月31日まで実施している、ICT利活用による地域振興支援策「地域活性化協働プログラム」の成果について発表した。

 日本マイクロソフトと山梨県は、2011年2月23日に、地域活性化協働プログラムの覚書を締結。「NPO基盤強化プログラム」、「高齢者向けICT活用推進プログラム」、「障碍者向け支援プログラム」、「教育分野人材育成プログラム」、「医療機関関係者支援プログラム」、「農業従事者支援プログラム」、「ITベンチャー支援プログラム」の7つの取り組みを通じて、山梨県内のNPO、高齢者、障碍者、教員、医療関係者、農業従事者、ITベンチャー企業によるICT利活用促進を通じた人材力の活性化を実現することで、山梨県の発展を目指す取り組みを行なってきた。

山梨県で行なわれた地域活性化協働プログラムの概要NPO基盤強化プログラム高齢者向けICT活用推進プログラム
障碍者向け支援プログラム教育分野人材育成プログラム医療機関関係者支援プログラム
農業従事者支援プログラムITベンチャー支援プログラム

 「これらの活動を通じて、地域の持つ可能性を最大限に引き出し、県民の誰もが真の豊かさを実感できる『暮らしやすさ日本一』の県作りを推進していく」(日本マイクロソフト)としたほか、「情報ハイウェイの整備など、高度情報通信ネットワーク社会の到来を見据えた取組みを推進しており、このプログラムを活用して、県民のICTへの理解を深め、暮らしに直結した分野でのICTの利活用促進や、県内情報通信産業の振興につなげていきたい」(山梨県)としていた。

 日本マイクロソフトでは、2011年には、山梨県のほかに、岡山県、奈良県でも、1年間の支援として、地域活性化協働プログラムを実施。2012年も、新たに地域活性化協働プログラムにおいて、別の県と提携する計画がある。

●山梨県・横内知事に成果を報告

 2012年3月13日午前11時30分から、山梨県庁知事室で行なわれた山梨県・横内正明知事への成果報告では、日本マイクロソフトの織田浩義執行役パブリックセクター統括本部長、および同社業務執行役員社長室長兼シチズンシップリードの牧野益巳氏が、横内知事に成果報告書を手渡し、その成果などについて説明した。

 牧野業務執行役員は、「これまで10県において、さらに自治体を含めると45カ所で地域活性化協働プログラムを展開してきたが、7つのプログラムを同時に展開したのは初めて」としたほか、織田執行役は「山梨県の職員の方々の努力、尽力の結果、成し得たものであり、私たちだけでは実現できなかった」と語った。

山梨県の横内正明知事成果報告書に目を通しながら、報告を受ける横内知事

 これに対して横内知事は、「地域活性化に向けた支援において、多様なテーマにおいて講座を開催していただき感謝している。ITベンチャーへの支援が中心になると考えていたが、高齢者や教育分野、医療機関、農業など幅広い実績が出た。このプログラムを通じて、山梨県でのICT活用の場を、さらに広げることができたといえる。山梨県のICTの水準を高めるという点で、今後も協力ができるものがあれば、引き続き関係を築きたい」とした。また、「特に、今後は農業分野におけるICTの活用には期待している。山梨県は素晴らしいものを作るが、マーケティングや販売が疎かになっているところがある。いいものを作ったら、それを発信して、多くの人に購入していただくことが必要であり、そのためにはICTが必要である」などとした。

 また横内知事は、日本マイクロソフトが震災直後に、約90%の社員が在宅勤務をし、業務を滞りなく遂行した話に関心を寄せ、「BCP(事業継続計画)を実現する形として興味深い取り組みだ」などとした。

 山梨県企画県民部情報政策課情報企画担当・高橋義徳課長補佐は、「これまで山梨県では、基盤整備を中心にICTに取り組んできたが、今回、7つのプログラムを実行したことで、県民に密着したところで、ICTを活用する取り組みを行なうことが出来た。農業においては、グループでの活用が行なわれるなどの成果が出ている。県としてこうした活動を継続する支援を考えていきたい。また高齢者に対するセミナーでも大きな成果があったと考えている。産官学が参加する山梨県情報化推進協議会では、高齢者向けの単発のイベントを開催するに留まっていたが、日本マイクロソフトから提供いただいたテキストなどを活用しながら、継続的に高齢者向けセミナーを開催することも考えたい」などとした。

●成果報告会には100人の関係者が出席

 同日13時30分から、甲府市のベルクラシック甲府で行なわれた成果報告会では、関係者約100人が参加。この1年の取り組み成果について報告が行なわれた。

 「NPO基盤強化プログラム」では、NPOが自立的かつ継続的に活動する基盤の強化を図るため、県内のNPOおよびNPO活動を支援している団体などを対象に、ICTスキルを活用した団体運営のノウハウを習得するための講座の実施や、講師となる人材の育成講座などを開催。「高齢者向けICT活用推進プログラム」では、高齢者による地域作りを推進するために、県内の高齢者および高齢者のICT活用を支援する団体などを対象に、ICT活用の利便性を周知するイベントの開催や、ICTスキルを習得する講座などを開催。「障碍者向け支援プログラム」では、障碍者がICTスキルを身につけることで社会参加できるように、障碍者へのICT支援を行なっている個人および教育関係者を対象に、障碍者のICTスキル習得に対し参考となる講習会などを開催した。

 また、「教育分野人材育成プログラム」では、県内の教職員を対象とした ICTスキル向上のための集合研修およびeラーニング形式の研修システムなどによる学習支援などを実施。「医療機関関係者支援プログラム」では、医療機関におけるICT利活用促進支援を目的に、県内の医療機関関係者を対象に、ICTスキルを習得する講習会などを開催した。「農業従事者支援プログラム」では、農業および農業関連事業従事者を対象に、ICT活用事例を紹介するセミナーおよびICTスキルを活用する講習会の開催などにより、農業分野におけるICT利活用促進を支援。「ITベンチャー支援プログラム」では、県内のITベンチャー企業および中小IT企業を対象に、技術支援やマーケティング支援を行なうことで、地域産業の活性化につなげたという。

山梨県企画県民部の丹澤博部長

 成果報告会の冒頭には、山梨県企画県民部の丹澤博部長が挨拶。「山梨県では、山梨県情報ハイウェイをはじめとする通信環境のインフラ整備に取り組んできたほか、電子申請の実施など、公共分野での利用が進んできた。しかし、社会的課題の解決などについての活用はこれからである。今回の7つの分野でフログラムの企画から実施にあたり、精力的な活動が行なわれた。各種講座の開催のほか、協働プログラム参加者同士のつながりができ、東日本大震災避難者支援の地域情報データベースの構築も実現した。日本マイクロソフトの協力によって実現したものであり、感謝する」などと語った。

 また、山梨県企画県民部情報政策課・伏見健課長がプログラム実施の経緯などについて説明。2011年2月23日に日本マイクロソフトと覚書締結を行なったのち、これまでに延べ35回の講座を行ない、918人が参加したことなどを報告した。

日本マイクロソフト 業務執行役員社長室長兼シチズンシップリードの牧野益巳氏

 日本マイクロソフトの業務執行役員社長室長兼シチズンシップリードの牧野益巳氏は、「リーダーとなる人が、地域の中心となって、ICTを活用していただくことが地域活性化につながる。今回のプログラムを通じて実現した出会いがさらに深まること、さらに、今後の活動が、地域の力になって、根ざしていくことを期待している」と挨拶した。

 協働プログラム参加者からの報告として、NPO基盤強化に関しては、NPO法人バーチャル工房やまなしの田崎輝美副理事長が説明。「ICT指導者養成講座では、課題を抱えるNPOが参加し、ブロジェクトワークを実施。Facebookのグループ機能を通じて、支援される側と支援する側が一緒になって課題を解決するという取り組みにまで発展した。多くの学びと気づきを得ることができた1年であった。NPO指導者養成講座は人作りであり、これが、やまなし絆ネットワークという新たな場作りにつながり、さらにこれらが組み合わさって事作りが始まる。今後も継続的な活動を進めていく」と語った。

 農業従事者向け支援の取り組みでは、農業組合法人アグリONEの風間博文氏が説明。「全5回に渡る農業従事者向け経営能力向上講座を受講し、最後には事業計画を立案した。私自身、農業組合法人を立ち上げ、事業計画を立案しているところであり、大きな成果があった。Facebookでのコミュニケーション、Windows Liveを活用した情報共有なども行なった。新しい農業の形は、ICTツールの活用抜きには考えられない。日本マイクロソフトをはじめとする専門家との話をする中で、深い勉強をさせていただいた」とした。

 ITベンチャー支援については、ジインズネットワークシステム部リーダーの水原智広氏が説明。「ADAMSと呼ばれるソリューションを開発する上で支援をしてもらった。小さな企業は相手にしてもらえないと考えていたが、Visual Studio 2010 Premium Edition with MSDNの提供や、技術的な問い合わせにも対応してもらったこと、プログラムロゴの使用により、対外的な信頼性が高まり、ビジネス面でも効果があったこと、また米Microsoftへの研修ツアーに参加でき、本社の技術者から、将来の方向性などを聞くことが出来た。今後は山梨県のIT産業を牽引できる企業になりたい」と抱負を語った。

 なお、成果報告会では、日本マイクロソフトのテクニカルソリューションエバンジェリストである西脇資哲氏による「ICTの未来」と題した講演も行なわれた。

NPO法人バーチャル工房やまなしの田崎輝美氏農業従事者向け支援では農業組合法人アグリONEの風間博文氏
ジインズネットワークシステム部リーダーの水原智広氏成果報告会では、日本マイクロソフトの西脇資哲氏による「ICTの未来」と題した講演も行なわれた

(2012年 3月 13日)

[Reported by 大河原 克行]