米NVIDIAは8日(現地時間)、モバイル向けSoC「Tegra 3」を正式発表した。
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Tegra 3は、これまで「Project Kal-El」のコードネームで呼ばれていたモバイル向けSoC(System on Chip)。デュアルコアからクアッドコア化するなどして、性能を高めながらも、消費電力を低減させているのが大きな特徴。
Tegra 2からの最も大きな変更点は、コア数が2基から4基に増えた点。コアはいずれもARMの40nm Cortex-A9だが、数が2倍になり、クロックが1GHzから1.3GHzへと向上したことなどにより、総合性能はTegra 2の5倍に向上し、Core 2 Duo T7700に匹敵する性能(Coremark値)を実現したという。
その一方で、Web閲覧、音楽再生、動画再生、ゲームなど、あらゆる局面で消費電力は下がっているという。これは、マルチスレッド処理であれば、コア数が増えたことで、クロックを下げられる、あるいは処理時間を短縮できるといったことに加え、メインの4つのコアとは別に、低消費電力で動作するコンパニオンを搭載させたことが寄与している。
このコンパニオンコアは、動画再生、音楽再生、そしてアクティブスタンバイといった、低負荷な状況でのみメインコアとは排他的に動作する特殊なコアで、最大動作クロックは500MHzに抑えられている。NVIDIAでは、このマルチコアの構造を「vSMP」(Variable Symmetric Multi Processing)と呼んでいるが、OSからは通常のクアッドコアにしか見えず、メインコアとコンパニオンコアの切り替えはチップが自動的に行なう。そのため、現状のOS/アプリでそのまま動作し、バッテリ駆動時間を延ばすことができる。なお、メインコアはシングルスレッド時のみ最大1.4GHzで動作する。
GPUについても、コアあたりの性能を改善しながら、8コアから12コアへと増強し、グラフィック性能は3倍に向上したという。なお、コア数の数え方について、Tegra 2では8コアの内4コアを1つのピクセルシェーダ、残りの4つを1つのバーテックスシェーダとしており、これに倣うと、Tegra 3はピクセルシェーダが2基、バーテックスシェーダが1基となる。現在、15超のゲームがTegra 3に向けた対応/最適化を進めており、それらのタイトルでは、グラフィック表現が強化される。また、HDMI出力を通じた、ゲームの立体視表示機能も追加(動画の立体視は非対応)されたほか、PlayStation 3やXbox 360、Wii用ゲームコントローラの接続をサポートする。
このほか、動画は40Mbpsの1080p H.264 High Profileに対応、メモリはLPDDR2-1066に加え、DDR3L-1500に対応しバンド幅が最大3倍に、画像処理は最大2倍高速に、ストレージはe.MMC 4.41/SD 3.0/SATA IIに対応し2~6倍に高速化など、周辺部分でも性能強化が図られている。
Tegra 3の最初の搭載機は、ASUSTeKの「Eee Pad Transformer Prime」になる見込み。
OSはAndroidのほか、Windows 8、Linux、Chrome OSにも対応。今後、28nmへの縮小や、デュアルコア版の派生も予定。また、その後継として、2012年には「Wayne」、2013年には「Logan」、2014年にはTegra 2の100倍近い性能となる「Stark」が投入される。
最初のTegra 3搭載機はEee Pad Transformer Primeに | Tegraのロードマップ |
(2011年 11月 9日)
[Reported by 若杉 紀彦]