日本ヒューレット・パッカード株式会社(日本HP)は29日、5月に拠点として業務を開始したした東京ガレージこと、江東区大島の新社屋1FにImaging & Printing Solution Center(IPSC)をオープンした。広さは約400平方mで、デジタル印刷機から大判プリンタ、スーパーワイドフォーマットプリンターまで、最新の各種同社製品をフル装備してデモンストレーション稼働させ、同社機器の導入を検討する事業者のためのショールーム的存在として機能させる。
センター内は3つのゾーンに分かれている。
・Indigo Zone
デジタル印刷機のパフォーマンスを体感できるゾーン。HPのエレクトロインキ技術とデジタルオフセット機構によって実現するHP Indigoデジタル印刷機が稼働する。商業印刷、ダイレクトマーケティング、フォトビジネス、出版、ラベル、パッケージなど、多彩な商品サンプルも展示されている。
・Designjet Zone
CAD/GIS向けテクニカルモデル、写真画質と高生産性を兼ね備えたグラフィックモデル、クラウド上のファイルを直接共有/プリントが可能な「HP ePrint & Share」対応モデルなど、大判プリンターのフルラインアップを常設し、持ち込んだデータを実際にプリントしてデモンストレーションを体験できる。
・Scitex Zone
スーパーワイドフォーマットプリンタを展示。屋外/屋内の広告・装飾などの用途に利用されるもので、耐久性に優れた超大判印刷におけるHP Latexインクの特性を体感できる。
日本HP 取締役執行役員イメージング/プリンティング事業(IPG)統括 挽野元氏 |
同センターのオープンにともない、同社取締役執行役員イメージング/プリンティング事業(IPG)統括 挽野元氏は、HPが今年で72歳を迎え、HP Wayという考え方を念頭において事業を伸ばしてきたことをアピールした。
同社は基本的にはITとプリンティングの企業であり、利便性と楽しさを提供しながら、グローバルで世界170カ国、30万人、日本は5,000人の社員を抱えている企業であることを説明、同社は2001年にインディゴを買収して、印刷の世界におけるアナログからデジタルへの変換を提案、さらに、2005年にはScitexを買収し、超大型プリンタ事業にも取り組んでいる。
同氏は、8月19日に発表された同社のビジネス再編成についても言及し、パーソナル・システムズ・グループ(PSG)の分離に関する案件は、選択肢の1つであり、検討を開始したにすぎないことを強調した。また、同氏が率いるIPGはHPにとって中核の事業でもあり、今後も引き続き、コンシューマーからビジネスまで今後もきちんとやっていくことを再確認したいとした。
HPでは現在、200以上のデータセンター、30万台のサーバー、540万台のPCを管理しているという。それらによって、たとえば年間で、
・年間35億件のクレジットカード決済処理
・5億件のオンライン旅行予約処理
・2,500万コールのヘルプデスクサポート
・17億通のスパムメールを除去
といった処理をこなしている。
そんな中で、挽野氏は次のようなIPGビジネスの新たなトレンドをピックアップした。
・コンテンツ急増
文字から画像、そして映像へと情報の共有がとても容易なものになっている。SNS時代の層では電子メールアドレスさえ持たないで、各種のメッセージ発信を行なうケースが出てきた。さらに、モバイル環境が拡大し、これまで机の上でしかできなかったことが、どこでもできるようになっている。もちろん、モバイルデバイスもどんどん増えていく。スマートフォンがPCを追い越すのも時間の問題であり、クラウドに能動的にアクセスできるプリンタが求められる時代がやってきた。
・アナログからデジタルへ
デジタル印刷機は品質がアナログオフセットに比べてよくないといわれてきたが、ここ5~6年で、デジタル印刷機は著しい進化を遂げ、写真の印刷に耐えるようになってきている。商業印刷や出版でも、景気が悪くなって小ロットでの印刷のニーズが急増、少なめに刷って、様子を見ながら印刷を続けるというスタイルが定着しつつある。
・サービス型ビジネスモデル拡充
Snapfishに代表されるプリントサービスを同社は運営している。データをクラウドにアップロードしてプリントするサービス型のビジネスモデル。ビジネスが好調であることから、モノやハコを買うことに加え、サービスを買うことの楽しさへの変遷が見て取れる。
デジタルデータを形にすることがIPGのビジョンであり、デジカメ写真をプリントして楽しみ、年賀状を印刷してもらい、各種の資料、カタログ、ポスターや看板、さらには、バスや乗り物のラッピングにいたるまで、あまねくものを形にして届けることが同社のビジネスを牽引していくという。
このビジネスにおいて、キーワードはページボリュームアップであり、プリントする機会を増やすことによる成長を追求する。その上で、さらにイノベーションによる成長を見据える。既存の中核事業はインクやトナーなどのサプライであったが、それに対して放射状に広がるビジネスが考えられるという。
要素としては、次のようなものがある。
1. ビジネス向けのインクジェットプリンタ。より多くのハードウェアを売り、プリント機会を拡大する。モバイルから容易にプリントできるようにする。
2. ラージフォーマット事業。環境にやさしいLatexインクを活用。化学溶剤系でしか印刷できなかったのを水性系インクで印刷できるようになったことで、パートナーアライアンスも強化できる。
3. デジタルプレス事業はより小ロットに対応。500部などでも高品質で印刷ができる上、写真印刷の品質に適していることから、今まで以上に小ロットニーズが増える傾向にある。同社のソリューションなら、必要なときに必要な量をタイムリーに印刷することができる。
4. クラウドを核とし、オンラインサービスサービスをイノベーションしていく。
挽野氏は、現在の日本には1.3億人の人々が暮らし、年間1人あたり、3,800ページの印刷物を目にしており、その9割の約4兆ページがアナログからデジタルに移る可能性があるとする。つまり、金額にして5,000億円くらいがデジタル化を待っている市場だ。
今回、IPSCオープンすることで、顧客とソリューションプロバイダに対してHP製品およびテクノロジを提案する場を確保できるとし、その顧客は、印刷事業者、写真ラボ、スタジオ、出版社、ブランドオーナー、看板印刷事業者、デザイン事務所まで多岐にわたる。いわば、展示会を毎日やっているような規模であり、業界内でもトップクラスの広さを誇る。製品展示のみならず工程をデモできる環境が自慢だ。
なお、利用は完全予約制で、営業時間は月~金(祝祭日除く)となっている。予約に際して、「Imaging & Printing Solution Center」に関する詳細、および予約方法は下記リンクを参照してほしい。
(2011年 8月 29日)
[Reported by 山田 祥平]