アップル、Lion、MacBook Air等の製品説明会を開催
~Lionプリインストールの新MacとThunderbolt Display

7月20日発表
7月21日開催



 アップルジャパン株式会社は21日、20日夜(日本時間)に発表された新製品である「MacBook Air」、「Mac mini」、「Thunderbolt Display」、そして「OS X Lion」に関する製品説明会を同社内で開催した。説明は米国から訪れている各製品のプロダクトマネージャおよび国内担当者よりなされたが、同社からの要望により担当者の姓名や顔写真等は掲載できない。この点については、読者の皆様にもご了承をいただきたい。

●SandyBridegeを搭載する新MacBook Air
Lionがプリインストールされている11.6型の新MacBook Air

 既報の通り、新しいMacBook AirはプロセッサがCore 2 DuoからSandy Bridgeこと第2世代のCore iシリーズに変更されたことが特徴。標準モデルでは11.6型はCore i5 1.6GHz、13.3型はCore i5 1.7GHzで、主にフラッシュストレージ容量の違いでそれぞれに2つのグレードが用意されている。いずれも上位の製品はAppleのオンラインストアにおけるCTOでCore i7 1.8GHzにグレードアップすることが可能だ。差額は11.6型で13,435円、13.3型で9,001円になる。なお搭載されるプロセッサは低電圧版のため、i7でも物理的なコアは2つとなる。同社によればi7プロセッサの場合、前モデルと比較して最大2.5倍の処理速度を実現したとしている。

 またCore iシリーズの採用によってGPU機能も前モデルのチップセット統合型のGPUであるNVIDIA GeForce 320Mから、CPUに統合されたIntel HD Graphics 3000へと変更された。同社によれば記憶装置にあたるフラッシュストレージ(一般的な呼称としてはSSDである)へのアクセスも同社比で最大2倍の高速化が行なわれていると述べている。この点については担当者からの言及はなかったものの、SATAの接続が3Gbpsから6Gbpsに対応したものと推測される。同社によればCPU、GPU、ストレージなどの総合的なパフォーマンスとしても、前モデル比で最大約2倍になったということだ。

 外観デザインやディスプレイの解像度などは従来製品と同様。インターフェイスについては2月に発表されたMacBook Pro以来、同社製品への搭載が行なわれているThunderboltインターフェイスが、従来のMini DisplayPortから置き換わる形で採用されている。インターフェイスの配置は前モデルと同じく、正面向かって左側面にMagSafeのACコネクタ、USB 2.0、ヘッドフォン端子、マイクロフォンがあり、右側面にThunderboltインターフェイスとUSB 2.0、そして13.3型モデルのみにSDメモリーカードスロットが搭載されている。なお、Mac miniのSDメモリーカードスロットにはSD XCの表記があるが、MacBook AirはSDメモリスロットとのみ表記されている。一般的にはSDHC対応と解釈すべきとは思うが、念のため詳細について質問をしたところ、製品担当者も再度確認後に回答してくれることとなった。


ThunderboltのインターフェイスにApple Thunderbolt Displayを接続。MagSafeのコネクタは反対側になるため、MacBook Airではケーブルで挟むような格好になる

 従来の説明の繰り返しとなるが、製品担当者はThunderboltインターフェイスはUSB 2.0に比べて約20倍高速な次世代インターフェイスであることを強調した。また今回は、後述する27型のThunderbolt Displayが同時に発表されたことで、このディスプレイをThunderboltケーブル1本でMacBook Airに接続するだけで、USB 2.0×3ポート、FireWire 800、Gigabit Ethernetがブリッジ接続されてMacBook Airから利用できるようになる。

 そのほかの変更点としては、前モデルでは採用されなかったキーボードバックライトが復活している。担当者に尋ねてみたところ、やはりこれはユーザーのニーズや再採用を求めるフィードバックが大きかったためとのことである。なお、OSがLionプリインストールに変わったことで、ファンクションキーの一部がLion向けに変更されているのもキーボードに関する細かい変更点だ。11.6型で最大5時間、13.3型で最大7時間の連続駆動や30日間のスタンバイというバッテリ性能は前モデルに準じている。

 前モデルではOSのリカバリメディアとしてUSBメモリが同梱されたことでも注目を集めたMacBook Airだが、今回のモデルでは光メディアはもとより、そのUSBメモリも同梱されない。OS X Lionのリカバリはフラッシュストレージ内にあらかじめ用意されている特定のエリアから起動最小限のOSを呼び出すことで行なわれる。起動方法は電源投入時にCommandキー+Rキーを押しっぱなしにする。このエリアに格納されているのは前述のとおり起動に最低限必要なOSのため、再セットアップに際してはネットワーク接続が必要になり、ダウンロードによってOSの再インストールが行なわれるという。なお、あらかじめTimeMachineバックアップがある場合には、Commandキー+Rキーによる起動とTimeMachineからの復元を利用することで、ネットワーク接続がなくても環境が再構築されるという。こうしたリカバリの仕組みについては、後述するMac miniおよびLionがプリインストールされているMacで共通となる模様だ。

11.6型の新MacBook Airのキーボード。バックライトの復活とLion対応にともなって、ファンクションキーの内容が変わった13.3型の新MacBook Airのキーボード。ファンクションキーが前モデルと異なりLion対応となっている参考となる前モデル(2010年10月発売)のファンクションキー

●単なるディスプレイではない今回の隠れた目玉、Apple Thunderbolt Display

 MacBook Air、Mac miniと同時に発表されたApple Thunderbolt Displayは、ディスプレイという名称からは想像できないほど多機能な製品となっている。ディスプレイとしては、解像度2,560×1,440ドットで16:9のアスペクト比、27型のIPSで光沢パネルを採用している。接続するインターフェイスはThunderbolt。つまり、利用できるシステム条件はThunderboltインターフェイスを搭載したMac製品で、具体的には2011年2月以降に製品発表されたMacBook Pro、iMac、そして今回のMacBook Air、Mac miniとなる。OSとしては、Snow Leopardなら10.6.8以降、あるいはLionが必要だ。

 対応するMac製品とはディスプレイ本体から直接出ている格好のThunderboltケーブルで接続する。ケーブルの先はThunderboltインターフェイスとMagsafeのACコネクタに分岐しており、MacBook ProやMacBook AirではMac本体への給電が行なえるようになっている。


Apple Thunderbolt Displayの背面にあるインターフェイス。左から順に、USB 2.0×3、FireWire 800×1、Thunderbolt×1、Gigabit Ethernet×1。

 Apple Thunderbolt Displayには、2.1chのスピーカー、FaceTime HDカメラ、マイクロフォンが搭載されている。また、背面にはUSB 2.0×3、FireWire 800×1、Thunderbolt×1、Gigabit Ethernet×1の各インターフェイスが用意されており、いずれも接続したMac製品からの利用が可能だ。

 Thunderboltの基礎技術であるLightPeakは、言うなればPCI Expressのシリアルケーブル化であり、Apple Thunderbolt Displayは、前述した既存の(製品担当者はレガシーと表現していたが)各種インターフェイス(内部でUSB接続されるカメラ、マイク、スピーカーを含む)をブリッジ接続する形になる。MacBook ProやiMacなどではMac本体にもこれらのインターフェイスが付いているが、MacBook AirではGigabit EthernetやFireWire 800なども接続できる拡張ドック的な意味合いを持つ。たとえMacBook Proでも持ち歩く機会が多い場合には周辺機器のケーブルの抜き差しがThunderboltケーブル1本で済むことになるので、使い勝手は向上するはずだ。製品担当者も「究極のドッキングステーション」と表現していた。

 またThunderboltのインターフェイスが1つ付いているので、Thunderbolt対応の周辺機器をデイジーチェーンで接続することができる。Thunderboltの仕様上は最大6基の接続となるため、このApple Thunderbolt Displayを除いて、ほかに5基のThunderbolt周辺機器が繋げるということになる。この周辺機器としては、条件付きながらさらに1台のApple Thunderbolt Displayをデイジーチェーンすることができる。

Apple Thunderbolt Displayのケーブル。一端は本体内部に直接つながっており、Macへ接続する側のコネクタはThunderboltと給電用のMagSafeコネクタのみ。

 この条件は単純で、接続するMac製品のGPUスペックに依存することになる。例えばCPUに統合されたGPU(iGPU)となるIntel HD Graphics 3000のMacBook Airでは1台のみだが、ディスクリートGPUを搭載するiMac、そしてMacBook Pro(15型、17型)では、Mac本体 - Apple Thunderbolt Display - Apple Thunderbolt Displayといったマルチディスプレイ化が可能となる。なお後述するMac miniでは、下位モデルがiGPU、上位モデルがディスクリートGPUという製品仕様になっているので、上位モデルのみがデイジーチェーン接続を行なうことができる。

 ちなみに、既存のApple LED Cinema Displayは端子形状が同じMini DisplayPortであるが、質問したところApple Thunderbolt Displayに搭載されているThunderboltインターフェイスの先に接続する形でのデイジーチェーン接続はできないと説明された。もちろんMac本体に直接接続する場合は、Thunderbolt搭載のMacに接続した場合でもMini DisplayPortのディスプレイとして利用できる。基本的にディスプレイのデイジーチェーン接続は、Thunderbolt対応ディスプレイに限定されると考えた方がよさそうだ。一方、本体側に2つのThunderboltインターフェイスをもつ27型iMacにおける動作状況なども気になるので、こうしたマルチディスプレイ環境については、今後製品が出揃ったタイミングでさらに検証を重ねたいと考えている。

 なお今回発表された製品の中では唯一、このApple Thunderbolt Displayが同日からの出荷になっていない。オンラインのApple Storeでは6~8週間の納期、説明会では60日以内の出荷と説明されている。

 Thunderboltインターフェイス発表以降のこうした機会では定番ともなりつつあるが、サードパーティから出荷されるThunderbolt対応製品に関する質問も当然のようにあった。今回も製品担当者はPromiseのRAIDアレイを例にあげて、6ドライブおよび4ドライブの製品が近日中に出荷されるという回答にとどまった。他の製品も順次発表や出荷が行なわれることを期待しているという。なお、Thunderbolt対応のケーブルはAppleより純正ケーブルの販売が開始されており、オンラインストアや直営店などで4,800円で購入することが可能だ。

 なお、元々Mac本体側にGigabit Ethernet端子を持つiMac、MacBook Pro、Mac miniにおいて、Apple Thunderbolt Displayに搭載されているGigabit Ethernetと組み合わせたマルチリンクEthernetが実現できるかどうかをたずねてはみたが、現時点で回答が留保されている。一般的には利用される機会は少ないが、興味のある読者もおられると思われるので、アップル側から回答があれば機会を見つけてお伝えしようと思う。

●ついに光学式ドライブを廃止した新Mac mini

 新Mac miniについても複数のトピックスがある。製品情報としては既報となるが、Sandy Bridgeこと第2世代のCore iシリーズを搭載した点、これは前述したMacBook Airと同じ主旨の変更点だ。また、Mac miniのシリーズとしては初めて、上位モデル限定ながらもディスクリートGPUとなるAMD Radeon HD 6630Mが搭載されたことに注目したい。こちらもMacBook Air同様に、前モデル比でCPU、GPUともに2倍の性能向上と同社は説明している。

 Core 2 Duoから第2世代Core iシリーズへの変更は、関連テクノロジーを追いかけていれば容易に想像がつく製品リニューアルだが、デスクトップ製品で光学式ドライブの搭載を廃止したことは今回一連の発表で最大のサプライズだった。業界全体の意識としてはコンテンツやデータの大容量化にともない、CD、DVD、BDと光学式ドライブの変遷が進んでいるのは言うまでもない。一方でAppleはBDA(ブルーレイアソシエーション)の理事会社の1つでありながらも、同社製品へのBD搭載には消極的にみえた。個人的にはApple製品へのBD搭載は未来にわたって無いと考えていたし、先日のWWDCにおけるiCloudのアナウンスで、コンテンツ、メディア共にクラウドへの舵をきったことは理解したつもりでいたが、既存の光学式ドライブの標準搭載まで廃止するとは、まさに同社ならではの決断と言えるだろう。

 なお、周辺機器としての外部光学式ドライブ「SuperDrive」の扱いは継続しており、CTOでの追加やApple製品取扱店で購入する場合は6,800円という価格になる。この6,800円という価格がそのまま製品価格低下に結びついているわけではないが、52,800円からという新Mac miniの価格設定もかなり魅力的だ。CTOでは上位モデルをi7 2.7GHz化することもできるが、このi7の物理コアは2つとなる。

 前モデルのラインナップと同様にServerモデルもリニューアルされて、こちらは物理コアが4つのi7 2GHz搭載製品となった。ServerモデルではLionのServer Add-onがプリインストールされるほか、標準で500GB×2基の2ドライブ仕様。ServerモデルはSnow Leopard Server搭載製品時代から、光学式ドライブが廃止されている。

 Mac miniについては、上位モデルにあたるCore i5 2.5GHzモデルのCTOがなかなか面白い。メインメモリの増量はもちろんのこと、前述のi7化、そして光学式ドライブを廃止したことにより生まれたスペースで、1コンフィグレーション限定ながら750GB HDD+256GB SSDという2ドライブの構成も選べるようになっている。このカスタマイズは、標準モデルに対して66,360円の追加が必要になる。

 前述したApple Thunderbolt Displayとも関連するが、背面インターフェイス類は基本的に前モデルと変わらない。そしてMini DisplayPortがThunderboltへと変更されている。またSDメモリカードスロットはSDXC対応という記述があるのもポイントだろう。

 マルチディスプレイ化については、iGPUである下位製品とdGPUの上位製品で対応が異なる。Mac miniの特徴としてHDMIインターフェイスが搭載されていることもあり、もっとも手っ取り早いのはHDMI、Thunderboltの両方にディスプレイを接続してしまうことだ。これならThunderbolt側は、Apple Thunderbolt Displayでなくとも構わない。このマルチディスプレイ化であればiGPUの下位モデルでも可能であると思われる。Apple Thunderbolt Displayのところで紹介したとおり、dGPU搭載の上位モデルではApple Thunderbolt Displayを2台使ったデイジーチェーン接続が行なえるので、HDMIも含めた3パネル化も実現できそうだが、そこは実機を使ったレビューで再確認したいと考えている。

 プリインストールされているLionについては新MacBook Airで記載した内容と変わらない。リカバリメディアは本体に付属せず、Commandキー+Rキーを押しながらの起動で、専用エリアからのリカバリーを行なう手順となる。

●20日夜からダウンロード販売の始まったOS X Lion

 OS X Lionの説明については約250の新機能の中から、10のトピックスをピックアップして紹介するというWWDCの基調講演を踏襲する内容となった。主な部分は繰り返しとなるので、WWDC関連記事を参照していただきたい。機能については、一部の呼称が日本語化されている。例えば「Resume」が「再開」になったり、「Multi Touch」が「マルチタッチ」になったりしている点だ。一方、Mission ControlやLaunchPad、Air Dropなどは英文表記のまま。この点については商標化できるものや全く新しい技術についてはワールドワイドで英文表記に統一、一般的な用語についてはローカライズするように各国ごとに検討しているという回答だった。

 機能面は既報のWWDC関連記事と今後予定しているレビューなどを通じてより詳しく伝えていくことにして、説明会の情報からはLionの導入にあたってのポイントを紹介する。

 まず先日来お伝えしている通り、OS X LionについてはMac App Storeを使ったダウンロード販売で提供される。価格は2,600円、これは基本的に変わらない。ただし、例外的にアップルのオンラインストアのみで、USBメモリを使ったインストールメディアが販売されることになった。販売時期は8月後半を予定しており、価格は6,100円となる。

 なおWWDCでLionの販売時期がアナウンスされた6月6日以降に既存の(Lionプリインストールではない)Mac製品を購入したユーザーを対象に、Up-to-Dateプログラムも用意される。これは今までのような郵送などによる申し込みではなく、アップルが用意するWebサイトに購入情報を登録することで、Mac App StoreからのLion無償ダウンロードコードがメールで送られる仕組みになるという。

 既存のMac OS Xからのアップデートでは、Mac OS X Snow Leopard 10.6.6以降が対象。現行は10.6.8だが、Mac App Storeが利用できる10.6.6以降はアップデートができる。また10.6.x以降であれば、標準のソフトウェア・アップデートを使って10.6.8へ更新のうえ、Mac App Storeから購入するという手順になる。10.5 Leopard等ではMac App Storeは利用できない。10.6 Snow Leoprdへと更新することが必要だ。そのため現在販売されているSnow Leopardのインストールパッケージはアップルのオンラインストアでのみ継続販売される。一部家電量販店などでは店頭在庫があるかも知れないが、継続販売されるのはオンラインストアだけであることを覚えておきたい。

 Lionがインストール可能なMac製品は搭載されるCPUを基準に判断することができる。Intel製プロセッサ搭載で、Core 2 Duo、Core i3、i5、i7、そしてXeonが対象となる。必要メモリ容量は2GB。GPU性能などさらに細かい条件はあるものの、基本的に上記のCPU条件を満たしたMac製品は他の条件もすべて満たして出荷されているという。もう少し具体的に筆者が調べたところでは、MacBookは「MacBook (Late 2006) 2006年11月発売」以降、MacBook Proは「MacBook Pro(15/17inch Core 2 Duo) 2006年9月発売」以降、MacBook Airは全モデル、iMacは「iMac (Late 2006) 2006年9月発売」以降、Mac miniは「Mac mini (Mid 2007) 2007年8月発売」以降、MacProは全モデルが対象機種ということになる。

Mac App StoreにおけるLionの紹介画面。ここからダウンロード購入できるOS X Lionのインストール直後、設定アシスタントの利用にもスクロールが必要

 Mac App Storeからのダウンロード容量は約4GB。インストールには別途、約7GBの空き容量が必要になる。Mac App Storeからのダウンロード購入からアップグレードへは一連の作業として行なうことができるが、OSの更新作業だけにTimeMachineバックアップをとっておくなど、事前の準備を周到にしておくにこしたことはない。またOSの更新にともないサードパーティの周辺機器メーカーやソフトウェアメーカーからは各社のサイトなどを通じて互換情報の提供が行なわれているので、実際にアップグレードを行なう前に自分の利用している周辺機器、ソフトウェアのLion対応状況を確認しておくように心がけたい。こうした対応状況や、インストール前の準備などは近日中に情報を整理して当誌に掲載しようと考えているので、少しでも不安がある場合はひと呼吸待っていただくのも一案である。

 なお昨夜以来、筆者を含めた関係者は一様にLionへのアップグレードを行なっている。そしてその中で、Twitter、Facebook、Google+などSNS上で見られたもっとも多い発言は「スクロール方向にとまどっている」という主旨のものであった。これはLionのアップグレードの1つの大きなテーマであるiPhoneやiPadからApple製品へ入ったユーザーの感覚にマルチタッチの操作方法を近づけるという部分から発生している。マルチタッチで利用する場合のスクロールは、iOSデバイスでの指先操作と同じ方向が標準化された。そこで、Appleではこの指を動かす方向にコンテンツが移動する仕組みを「Natural(ナチュラル)」と名付けてLionのデフォルトにした。これが、Snow LeopardまでのMac OS Xとはスクロールに対する指の動きが逆になるので、既存ユーザーからの「スクロール方向にとまどっている」という発言につながるのである。

 実際、昨夜からさまざまな操作を行なってきたり、こうして原稿を書いていても操作のとまどいは隠せないでいる。製品担当者によれば、感覚的には自然なものなので、15分~20分程度で慣れるというコメントもあったが、この辺はかなり個人差がありそうだ。筆者は慣れるように継続して「ナチュラル」でいこうとはしているが、どうしても我慢できないようならば、システム環境設定で従来方向に戻してしまうという手もあるだろう。

システム環境設定のトラックパッド。「ナチュラル」なスクロール方向はSnow Leopardとは反対方向になるMisson Controlに入る際の3本指でのスワイプ。操作例がアニメーション表示される

 Lionの機能は多々あるが、やはり焦点はマルチタッチをどこまで使いこなせるかだろう。基本的には、アプリケーション内の操作は指2本、アプリケーションをまたぐ場合は指3本、全体を俯瞰するときは指4本と覚えると製品担当者は説明した。

 指2本の例としては前述のスクロールのほか、ページ間を移動するスワイプ、拡大・縮小のピンチ、指2本でタップするスマートズームがある。Lionに搭載されるApple純正アプリケーションを中心としたフルスクリーンアプリケーションとデスクトップを移動するのは指3本で左右にスワイプ。同様に、Mission Controlに入るのは指3本を使って上にスワイプする。LaunchPadはMac上のアプリケーションを俯瞰するわけだから、親指を含めた4本指でつまむようなジェスチャーになるというわけだ。

 なかなか口でも文章でも難しく、このあたりは習うより慣れろということになってしまう。マルチタッチの標準化は、実際のところコマンドラインからマウス標準化以来の変革と言ってもいいくらいのものだ。Lionは20日夜よりダウンロード販売が始まっているほか、MacBook Air、Mac miniなどがLionをプリインストールして同日より出荷されているが、すべてのMacユーザーがすぐにLionへと移行をするというわけではない。使いこなしも含めて、長いスパンで移行に関するさまざまなノウハウや情報提供がアップルからも我々メディアからも必要となるだろう。

OS X Lion対応の例。日本語入力IMのATOKは2010、2011に対してLion対応のアップデータを配布しているOS X Lion対応の例。海外製のフリーソフトウェアやシェアウェアも順次アップデートしているLionインストール時に、互換性のないソフトウェアは自動的に「互換性のないソフトウェア」へと移動されるケースもあるが、すべてに対応しているわけではない

(2011年 7月 22日)

[Reported by 矢作 晃]