東芝・佐々木則夫社長 |
東芝は、5月24日、2011年度経営方針を発表。2013年度の売上高8兆5,000億円、営業利益で5,000億円を目指すことを明らかにした。売上高の年平均成長率は10%という高いものとなる。
さらに海外従業員数を現在の82,000人から、2013年度には101,000人に拡大し、海外売上げ比率も55%から65%に引き上げる考えを示した。
また、佐々木則夫社長は、PCとTVの融合製品の創出が重要であるとの見解を改めて強調し、その具体的な施策として、「SmartX」と呼ぶ共通プラットフォームを開発し、「これにより、カテゴリを越えた技術、部品、製品、サービスの共通化を図ることができるようになる」などとした。
●2011年度の目標佐々木社長は、デジタルプロダクツ事業における2010年度のトピックスとして、ノートPCの累計販売台数が1億台を達成したこと、2年連続で国内シェアで連続1位を達成したことに加え、TV事業では7四半期連続での黒字、国内で24%のシェアで2位を獲得したことを示した。また、SSDでは先頃3製品を投入したエンタープライズ向けSSDや、モバイル向けSSDが好調であり、とくにモバイル向けは対前年比5倍になっているという。
一方、2011年度のデジタルプロダクツ事業においては、2011年4月にTVとPCの組織を統合したことで、融合商品、サービス創出するとともに、地域別体制によって新興国展開を加速し、効率化を図るという。
佐々木社長は、「新組織は、成長性、収益性向上に向けた体制最適化を狙ったもの。いまや、TVとPCは機能が分かれているわけではなく、仕切りが無くなりつつある。TVでもVODによるさまざまなコンテンツの視聴が増え、携帯電話でも通話だけではなくテレビ電話の利用も増える。そしてこれらの機能はPC上でも実現されることになる。これらを個別の製品として開発するのではなく、境界なくシナジーを出せるような共通プラットフォームを開発し、製品化していく必要がある」とし、共通プラットフォーム「SmartX」により、ユーザーシーンにあわせてシームレスにデバイスを展開できるようになるとした。
「SmartX」を基盤として、スマートタイムシフトマシン、グラスレス3D PC、フルセグタブレット、モバイルコンテンツビューワなどを2011年7月以降に商品化し、クラウドサービスの連動提案も行なっていく考えで、具体的な製品として、2011年7月にはグラスレス2D/3D対応のノートPCを投入。下期には40型以上のグラスレス大型3D TVを発売する計画を示した。
収益性向上に向けた体制最適化 | 共通プラットフォームの「SmartX」 |
「タブレットについては、ノートPCの成功体験もあり、そこに集中していたために遅れたという点は認めざるを得ない。だが、モバイルフォンは富士通とのジョイントベンチャーでやっているが、契約上、モバイルフォンから上のサイズは我々が独自にやることができる。ここから上の画面サイズの製品において、中身を一体化してやることができる。SmartXにより、カテゴリを越えた技術、部品、製品、サービスにおいての共通化が図れる」と語った。
また、「これまで別々に行なっていたセールスプロモーションも統合化していく。さらに、ここに家電製品も加えた連携を図っていくことになる」(佐々木社長)とし、エリアマーケティングやエリアに最適化したデザイン体制を強化。インドネシア、ベトナム、インドに地域デザイン部門を7月に設置し、ローカルフィット型の製品開発を加速。すでに2011年4月には防塵機能搭載のPCをアジア市場向けに投入したほか、新興国向けに投入しているバッテリ駆動が可能なPowerTVを下期には進化させるなどとした。
「地域ごとにブランドアンバサダーを配置し、インドネシア、ベトナム、インド、中国を重点4カ国として集中広告を展開し、ブランド認知度を高める考え」も示した。
デジタルプロダクツと家庭電器事業の連携においては、新興国市場に総合販社を設置。2011年度末には、これを10拠点に広げるという。
さらに、「PCやTVといったデジタルプロダクツ製品は、世界初、世界ナンバーワン、ローカルフィット製品でグローバルトップを目指す」とし、2013年度にはデジタルプロダクツ事業全体で売上高3兆1,000億円、営業利益400億円を目指すほか、デジタルプロダクツ融合製品およびサービスで、2015年度には8,000億円の売上げを目指す考えを明らかにした。
2013年度の販売目標は、液晶TVが2,500万台、ノートPCで3,500万台。「合計で6,000万台を計画しており、グローバルシェア10%を確実に確保したい」(佐々木社長)とした。
生産/調達/販売の地域最適化 | 液晶TV 2,500万台、ノートPC 3,500万台の販売目標 |
●約2兆円の売上高拡大を目標に
佐々木社長は今回の経営方針の中で、全社の中期目標として、「成長性と健全性を両立する財務基盤の確立」を目標に、2010年度実績で6兆3,985億円の売上高を、2013年度に8兆5,000億円に拡大する計画を示した。
GDPの年平均成長率が7%であるのに対して、同社の年平均成長率は10%になる。
「新興国では市場成長率が10.4%であるのに対して当社では20.1%の成長を目指す。欧米でも市場全体が4.5%の平均成長率に対して12.4%、国内では1.2%の平均成長率に対して1.4%と、すべてにおいて市場を上回る成長を目指す」という。これにより、2013年度の売上高構成比は国内35%、先進国33%、新興国32%を想定するとともに、生産における内外拠点最適化や、海外調達の拡大を進めることで、生産高構成比では国内を40%に、調達額構成比では国内を30%に縮小させるという。
佐々木社長は、「デジタルプロダクツ事業をはじめとする4つの事業ごとの特性に応じた最適なバランスを実現したい」と述べた。
また、「成長、戦略性の高い事業への集中投資、収益拡大に取り組む。2013年度の営業利益は5,000億円、株主資本比率22%、D/Eレシオで50%、ROIで20%を目指すことで、成長加速に向けた原資確保を行なう。D/Eレシオによって生まれた資本改善分と機動枠によって、2013年度には7,000億円を活用することができる。注力事業の成長加速や新たな収益基盤確立に割り振ることができる」として、設備投資やM&Aなどを視野に入れた基盤づくりに繋がる考えを示した。
海外売上高比率を高め、総合の売上高を引き上げる | 事業グループ別の計画 |
中期経営指標 | 研究開発費を拡大 |
●被災地への支援も
佐々木則夫社長 |
一方、福島第一原発事故に関しては、地震発生直後に社内に専門家による対策チームを設置し、冷温停止や汚染水処理、対策立案を支援。米ウェスチングハウス、米パートナー企業を含めて1,900人体制で技術支援を行なっていることなどを示した。累計で1,200人以上が現地に派遣されているという。
「まずはこれを解決しなてくは先に進めない。安定化、グリーンフィールド化に向けた計画的取り組みが必要である。至近の取り組みとして、冷却システム構築、滞留水処理、放射性物質拡散防止が課題となっており、中長期的には燃料取り出し、廃炉、廃棄物保管といった課題がある。また、既設プラントの緊急および恒久的安全対策のほか、さらに安全性の高い次世代原子炉の開発推進が必要だ。原子力に関しては、2015年度目標で39基の受注と、売上高1兆円を目指していたが、福島第一原発での経験を踏まえ安全性を十分分析した上で推進する必要があり、ビジネスは数年シフトすることになるだろう」とした。
また、震災復興支援では、被災した22店舗の電気店への支援をはじめ、10億円相当の義援金のほか、コールセンターの増員、漁船26艘の提供などを行なったことを示した。
東芝への震災の影響について、「岩手東芝エレクトロニクスと東芝モバイルディスプレイが大きな被害を受けたが、生産への影響は限定的で復旧済み。調達についてはマルチ調達によって影響は最小化できた。供給については、他地域拠点への生産振り替えや代替生産依頼への対応などで最低限に抑えている」などとした。
(2011年 5月 25日)
[Reported by 大河原 克行]