レノボ、NVIDIA Optimus対応のThinkPad Tを解説
~最大4画面出力をサポート

ThinkPad T410s

10月15日 開催



 レノボ・ジャパン株式会社は15日、NVIDIA Optimusに対応したノートPC「ThinkPad T」シリーズをWeb直販で販売を開始。これにあわせて、本製品に搭載される技術についての記者説明会を開催した。

 なお、製品自体は10月13日に発表されているので、詳細については関連記事を参照されたい。

●1億台の累計出荷に向けた新製品群
ロードリック・ラピン社長

 発表会の冒頭では、同社のロードリック・ラピン社長が挨拶。「10月は我々にとって重要な月になる。なぜならば本月はThinkPad誕生18周年の節目を迎えるとともに、累計6,000万台の出荷を達成できたからだ。そしてこの10月に、1億台に向けての新製品群を発表。この中に、NVIDIA Optimus技術に対応したモデルが含まれており、重要な位置づけである」と述べた。

 今回のThinkPad新製品の実現に関しても、従来通り大和事業所で一貫して開発されたことをアピール。「グローバルな企業が企業合理化を求め、開発拠点をより低コストな場所に移すといった動きも見られる。しかし大和事業所は我々にとっての誇りと資産であり、むしろ投資を増やしている。みなとみらいへの移転も発表しているが、新しい開発拠点においては最新の設備などを導入しており、日本発の製品としてグローバルに発信していきたい」とした。

 続いて、同社 製品事業部 ThinkPad担当 土居憲太郎氏が、ThinkPadのこれまでとこれからについて紹介。ThinkPad誕生から18周年を迎えるが、過去にもさまざまな“世界初”を実現したとし、世界で初めて宇宙に行ったノートPCや、CD-ROM/DVD-ROMドライブ、指紋認証リーダーを世界で初めて搭載したノートPCなどを挙げ、「今回の製品も、コンシューマでは既に出ているものの、ビジネス向けノートPCとしては世界で初めてNVIDIA Optimusを搭載した」と説明した。

 ThinkPad T410/T410s/T510に搭載されるNVIDIA Optimusの特徴については、パフォーマンスとバッテリ駆動時間の両立の実現、そして内蔵液晶を含む同時4画面出力の特徴を挙げ、同日より販売される「ThinkPad Edge 11"」、「ThinkPad Edge 13"(新CPUモデル)」とあわせて、累計1億台の出荷に向けた重要な位置づけである製品であることを強調した。


土居憲太郎氏ThinkPadの歴史
ThinkPad Edge 13"と11"も15日よりWebで販売開始ビジネスノートとしては初のNVIDIA Optimus対応

●NVIDIA Optimusの特徴

 続いて、ゲストとして招かれたエヌヴィディア ジャパン エヌヴィディア マーケティング本部 テクニカル マーケティング エンジニアのスティーブン ザン氏が、NVIDIA Optimusを紹介した。

 同氏はまず、ノートPCの出荷台数と、ノートPCのディスクリートGPUの搭載率を紹介し、「ノートPCの出荷台数は2008年を境目にデスクトップPCを超えたほか、ノートPCのディスクリートGPU搭載率が増え、2009年現在では約40%が搭載している。この背景にはモバイルへの需要、そしてGPUを活用するアプリケーションの増加が後押ししている」と述べた。

スティーブン ザン氏ノートPCとデスクトップPCの出荷比率(一部予測)ディスクリートGPUの搭載率(一部予測)

 ビジネス向けの「NVS」シリーズで、NVIDIA Optimusを採用するメリットとしては、動的に動作することによるバッテリ寿命の延長、マルチディスプレイのサポートとアプリケーションのアクセラレーションにより生産性の向上、長い製品ライフサイクルやハードウェア/ソフトウェア保証による信頼性、そしてエンタープライズ向けのサポートなどを挙げた。

 こと、生産性の向上について、ThinkPadではドッキングステーションを用いれば最大4画面の出力が可能で、トレーディングやマルチタスク作業の効率を向上させられる。また、Officeや次世代Webブラウザ、Adobeなど、GPUを活用するアプリケーションの速度を大幅に向上できることをアピールした。

 特に、次世代WebブラウザであるInternet Explorer 9、Firefox 4、Chrome 6.0などでは、GPUアクセラレーションに対応するため、大幅に性能が向上することをアピールした。

NVIDIA Optimus搭載のメリット生産性の向上WebブラウザのGPUアクセラレーションのサポート

 従来、ディスクリートGPUを搭載する際は、バッテリ駆動時間とパフォーマンスが常にトレードオフの関係にあり、これを解決するために、スイッチャブルグラフィックスを開発してきた。スイッチャブルグラフィックスではMux(マルチプレクサ)を利用し、内蔵GPUとディスクリートGPUを切り替えるが、それらは再起動が必要だったり、手動で切り替える手間が必要があったが、NVIDIA Optimusによってその問題が解決するとした。

 NVIDIA Optimusの技術的な実現方法として、専用のハードウェアのコピーエンジンを設け、レンダリングした画像を、PCI Express経由で内蔵GPUのフレームバッファに転送。そのまま内蔵GPUのディスプレイ出力を用いることで実現している。このため、起動中のGPU利用アプリケーションを終了や、再起動をすることなく、ディスクリートGPUとの切り替えを可能にした。

バッテリ駆動時間と性能の両立スイッチャブルグラフィックスの進化従来はMuxを利用して手動で切り替えていた
NVIDIA OptimusはGPUのレンダリング結果を内蔵GPUのフレームバッファにコピーするハードウェアによるコピーエンジンの搭載

 レンダリングに関しては、描画すべき負荷が重い部分のみディスクリートGPUで行ない、そのほかのウィンドウの枠などは内蔵GPUによってレンダリングされる。このため効率的にPCI Expressのバスを利用することができ、遅延を低減できる。NVIDIA OptimusがONになるタイミングは、プロファイルによるアプリケーションの認識のほか、Direct3Dの描画のコールやCUDAのファンクションコールなどによって行なわれているという。

 NVIDIA Optimusを採用したThinkPadの特徴として、レノボ・ジャパン株式会社 ノートブック開発研究所 サブシステム技術 表示技術担当部員の久保田徹氏が説明。ディスクリートGPUのThinkPadへの搭載を遡り、「2007年まではディスクリートGPUの有無で2ラインナップを展開してきたが、ユーザーのニーズに応えるために、2008年9月に手動切り替え方式、そして2010年1月に電池とAC駆動の認識による自動切り替え方式を採用したモデルを投入。そして今回、NVIDIA Optimusの搭載に至り、さまざまなユーザーのニーズに応えられる」と述べた。

 以前のスイッチャブルグラフィックスを採用したモデルについては、ユーザーからの不安の声が多く、「切り替えの仕方がよくわからない、時間がかかる、画面がしばらく出ないのが不安」といった声を得たという。しかし、今回NVIDIA Optimusの採用により、そういった「切り替え方式」の不安の声を払拭できるとともに、電池持続時間を33%、パフォーマンスを70%(内蔵グラフィックス比)向上させられるとした。

 4画面出力の実現方法としては、ドッキングステーションを用いることで、2画面は内蔵GPU、2画面はディスクリートGPUが担当し、出力を行なう仕組みであるとした。

久保田徹氏ディスクリートGPU搭載モデルの進化
スイッチャブルグラフィックスへのユーザーの不安4画面出力の仕組み

 発表会場に展示されたデモ機では、Internet Explorer 9をいったんNVIDIA Optimusのプロファイルから外して、内蔵GPUによるアクセラレーションをした状態で、MicrosoftのWebブラウザの描画ベンチマーク「FishIE Tank」を起動したまま、プロファイルにIE9を追加、さらにディスクリートGPUによるアクセラレーションをした状態でベンチマークが起動できることを演じ、内蔵GPUを利用するアプリケーションを終了することなくディスクリートGPUを利用するアプリケーションを新たに立ち上げられることを見せた。そして、そのベンチマークを左右に並べた状態、約2倍以上の性能差があることが紹介された。

 また、4画面出力を行なうコーナーで、試しにGoogle Earthを起動したまま、NVIDIA Optimusが効いている内蔵GPUによる2画面出力と、ディスクリートGPUによる2画面出力の間の画面2と3をまたいだ表示をしてみたが、問題なくシームレスに動作することが確認できた。

 質疑応答で、旧製品のNVIDIA Optimusへの対応の有無についての質問がなされ、土居氏は、「製品の切り分けや、サポートの問題により、アップデートなどによるサポートはしない」と答えた。

IE9による内蔵GPU利用(左)とディスクリートGPU利用(右)の速度比較。なお、店頭モデルでは現状このようなデモはできない(IE9がベータ版のため)4画面出力のデモ

(2010年 10月 15日)

[Reported by 劉 尭]