Let'snoteの生産にも採用予定のパラレルリンクロボット
~パナソニックが「6軸同時協調制御技術」などで実現

6軸同時協調制御技術を採用したパラレルリンクロボット

10月12日 発表



 パナソニックは、「6軸同時協調制御技術」と「手づたえ教示」により、製造の組立作業の自動化を実現するパラレルリンクロボットを発表した。

 Let'snoteの生産拠点である神戸工場の基板製造ラインにも、11月から導入される予定だ。

●パラレルリンクロボットの仕組み
パラレルリンクロボット

 パラレルリンクロボットには6つのモーターを内蔵し、それぞれのモーターにアームを接続。東北大学と共同開発した制御技術により、モーターを同時にコントロールし、目的の位置や姿勢で動作できる。

 「6つのモーターで6自由度を表現できるため、人による作業のような複雑な動作ができるようになる」(パナソニック高度生産システム開発カンパニー・櫻井邦男プロジェクトリーダー)のが特徴だ。

 製造拠点では、人による作業が一般的だが、その一方で作業のばらつきや、作業効率などの課題がある。

パナソニック高度生産システム開発カンパニー・櫻井邦男プロジェクトリーダーパナソニックの生産革新本部・野村剛本部長

 「海外の生産拠点では作業者の入れ替わりが激しく、日本では請負に委託するという状況にあり、その結果、人手の組立では品質にばらつきがある。組立の加工点をロボット化し、世界同一品質を実現することが可能になり、さらに、新製品の立ち上げ製造時にも品質が安定する」(パナソニックの生産革新本部・野村剛本部長)としている。

 また、人の作業では手間がかかり、不良が発生しやすい工程を自動化できるのも特徴で、これまでは手挿入を行なっていた異型部品の実装や、手作業でのはんだ付け、目視検査を行なっていた工程を自動化。さらにフレキ基板や細かいケーブルの挿入、リード線の配線、レンズの鏡筒への挿入、製品の外観検査など、熟練工が担当していた作業を自動化できるという。

 実装ではPC用の基板のほか、車載用電子機器、電源ユニットなどの実装工程での導入、習熟作業の置換では携帯電話のフレキ挿入工程、蛍光灯配線工程、小型カメラ組立工程、製品外観目視工程などでの導入が見込まれる。

適用事例その1。ハンダ付け適用事例その2、ワイヤ配線適用事例その3、カメラの精密組立

 Let'snoteの基板製造工程では、部品挿入および、はんだ付けの部分をパラレルリンクロボットによって置き換え、1ラインあたり約3人の人員削減と、直行不良で約2分の1という品質向上が期待されるという。

 「リード線の本数が多いコネクタの部品挿入において効果が発揮される」としている。

 パラレルリンクロボットは、神戸工場の基板製造ラインのほかにも、同社のデジタルカメラの組立ライン、蛍光灯の組立ラインにもそれぞれ導入されることになる。

パナソニックの神戸工場現在の生産ライン

 デジタルカメラでは、これまで熟練工が作業していたカメラモジュール4部品の精密組立をパラレルリンクロボットに移行。人員を1人削減するとともに、レンズ圧入作業における不良ゼロを目指す。なお、三洋電機のデジタルカメラ生産ラインへの導入についてはいまのことろ予定はされていない。

 また、蛍光灯のワイヤ配線の部分においての自動化で活用。3人の人員削減とともに、作業不良を2分の1に削減できるとしている。


●パラレルリンクロボットの特徴
パラレルリンクロボットの特徴

 これまでのロボットでは、複雑で多彩な作業を自動化するには技術的にも難しく、組立て手順をロボットに指示するためには専門知識が必要になるといった課題があった。

 今回のパラレルリンクロボットでは、6軸同時協調制御技術と手づたえ教示により、製造現場のオペレーターが、直接、作業のコツを教示することができるのが大きな特徴となっている。

 ダイレクトドライブ駆動方式を採用することで、教示時にサーボとブレーキを解除して、アームをフリー状態にすることで、軽量な操作感で、手づたえ教示を行なうことを可能としており、従来のように重いアームを支えて、モーターの抵抗を受けながら教示を行なうといった手間がない。

 さらに、直径400×150mmという広可動範囲と、各軸周りに±20度という柔軟姿勢をもち、±20μmの高精度位置再現性を実現する。可搬重量は1.5kgとなっている。

 また、モーター、軸受、アームというシンプルな構造に加え、機器構成部品点数の削減により低コスト化を実現しているのも大きな特徴で、駆動源を50%以上省エネ化できるほか、シンプルな構造により、故障などのトラブルも最小化できるという。

 「環境革新企業として、今回のパラレルリンクロボットを、製造工程における環境配慮への取り組み手段の1つに位置づける」(野村本部長)などとした。

ロボット化することで品質を安定させられる。また、作業を手づたえ教示できるパラレルリンクロボットの差別化技術さまざまな自動化要素
【動画】一度熟練工が手で操作すればそれにあわせて同じ動きをする。回転数をあげることもできる
【動画】実際に作業を覚えさせて、操作を行なっている様子

●今後の予定

 パナソニックでは、操作性の向上やロボットのバリエーションの拡大、各種システムアップ開発を続け、2011年以降、パナソニックグループの国内外の工場を中心に展開を図り、将来的には外販も検討していくことになる。

 「生産地によって労働賃金が異なるため、それにあわせて生産地に最適化したパラレルリンクロボットの導入を図る。中国、タイでは、搬送、簡易組立は人手で行ない、熟練組立にパラレルリンクロボットを活用した人とロボットの融合セルを実現し、チェコやメキシコでは簡易組立と熟練組立をパラレルリンクロボットとする工程完結ロボットセルを導入する。日本や欧米などの先進国では労働賃金が高いため、一貫した無人化ラインを実現することに活用していく」などとした。

世界各地における展開今後の展開

(2010年 10月 13日)

[Reported by 大河原 克行]