マイクロソフト、Internet Explorer 9βを解説
~エンジンを高速化してUIを洗練

Internet Explorer 9βによるHTML5のデモ。毛筆で文字が書ける

9月27日 開催



藤本恭史氏

 マイクロソフト株式会社は27日、次期Webブラウザ「Internet Explorer 9β」(以下IE9β)に関する説明会を開催した。

 米国では既に15日(現地時間)で発表されており、既報の通り、高速化にフォーカスしたInternet Explorer 9だが、今回の発表会ではデモを中心に紹介された。

 冒頭では、同社 コンシューマー&オンラインマーケティング統括本部 コンシューマーWindows本部 本部長 兼 ウインドウズライブ本部 本部長の藤本恭史氏が挨拶。IE9βへ期待を紹介し、「Platform Previewを2010年3月にリリースしてから、累計280万、そしてβ提供開始2日間で200万のダウンロードがあった。IE8βは提供開始して5日間で130万だったので、IE9βは大きく注目されている」とした。

 また、IE9βの特設サイトへは900万のビジターや2,600万のプレビューが得られたこと、既に70社以上がパートナーとなってHTML5の対応を検証してもらってることなどを紹介し、注目度と期待度の高さをアピールした。

 一方、16億ものWindowsユーザーのうち、利用時間の57%をWebブラウザが占めているという。しかし、WebブラウザはWebブラウザそのものではなく、その中のWebサービスやコンテンツが、ユーザーが使いたいと思ってるアプリケーションそのものであり、それにフォーカスして開発されたのがIE9であると述べた。

IE9βのローンチまでPlatform Previewを4回行なったIE9βサイトへのアクセス数IE9βの協賛パートナー。「AからZまで揃う」という
このほかの協賛パートナーWebコンテンツそのものが主体の開発志向

●高速、洗練、信頼、相互運用性がテーマ

 続いて、同社コンシューマー&オンラインマーケティング統括本部 コンシューマWindows本部の溝口宗太郎氏が、IE9βの具体的な特徴を紹介した。

 IE9は先述のように、Webサービスやコンテンツが、あたかもWindowsのネイティブアプリケーションであるかのようにユーザーが使えようにするために、開発の焦点を当てた。その目標のテーマが、「高速」、「洗練」、「信頼」、「相互運用性」の4つであるという。

溝口宗太郎氏IE9βの必要システム条件
Windowsユーザーの利用時間の多くはWebブラウジングが占めるネイティブアプリに近づけるための工夫IE9の4つの開発テーマ

 「高速」においては、新しいJavaScriptエンジン「Chakra(チャクラ)」の採用で実現した。マルチコアを活用してコンパイルやネイティブコードの生成を行なうことで待機時間を減らすとともに、従来IEの外部にあってCOM(Component Object Model)で接続していたJavaScriptエンジンを、Webブラウザ内蔵化することで、高速化を図った。これによりIE8と比較して10倍以上高速化したという。

 また、DirectXのAPIに加えて、GPUを活用してHTML5をレンダリングすることで高速化を図ったとしている。

IE9βとほかのWebブラウザの速度比較マルチコアに対応したJavaScriptエンジン「Chakra」
JavaScriptを内包することで高速化を図った
JavaScriptのほかのWebブラウザとの速度比較GPUを用いたレンダリング

 「洗練」においては、Windows 7の要素を取り入れ、ネイティブアプリケーションに見せかけるような仕組みを用意。例えば、タブはドラッグアンドドロップして単独ウィンドウを開くことができるようになったほか、ドラッグアンドドロップ中でも動画再生を続けられ、Aeroスナップも利用できる。さらに、Webサイト側が対応する必要があるが、Aero Peakによるメディアのコントロールや、ジャンプリストによるコントロールなどが可能になるとした。また、「ダウンロードマネージャー」を新たに用意し、ダウンロードファイルを一括管理できるようにした。

使われるUIと使われないUIを調査した。新規タブやお気に入りはあまり使われないが、タスクバーへのピン留めやショートカットは多用されるというURLバーは検索機能も兼ねており、お気に入りなども検索できる
Aeroスナップにより分離したタブを容易に並べて比較できるタブ分離中でも動画の再生は継続される
Twitterのジャンプリストの対応の一例。新規ツイートなどが直接利用できるAero Peakによるプレビューの例。メディアコントロールが表示される

 「信頼」においては、IE8と同様に、SmartScreenフィルターによるWebサイトとダウンロードファイルのチェックを設け、フィッシング詐欺やウィルス感染などから防ぐことができるとしている。

SmartScreenによるフィッシング詐欺対策ダウンロードマネージャーでダウンロードされたファイルを一括管理でき、疑惑のあるファイルはSmartScreenによってシャットアウトされる

 最後に「相互運用性」の面では、HTML5に準拠したレンダリングを行なうことで、開発者は同一のマークアップで異なるブラウザ間でも共通した表示が得られるとした。また、W3C HTML5やCSS3、SVG作業部会に参加し、標準化に注力しているとした。

 ただし、HTML5自体は策定がまだ終了していないため、現状ではほかのWebブラウザと異なる表示結果になる可能性があるとしながらも、「独自のサポートは捨て、HTML5が定める表示に従う」と述べた。

HTML5やCSS3への準拠IE9の特徴

 質疑応答では、正式版のリリース時期についての質問がなされ、溝口氏は、「現状ではまだ何も決まっていない」と答えた。一方、今後のUI関連の変更や改善の可能性について質問したところ「まだβ版なので、今後フィードバックをユーザーからいただければ、変更や改善がされる可能性がある」と述べた。

(2010年 9月 27日)

[Reported by 劉 尭]