MSI AVPのビンセント・ライ氏、2010年の展望を語る
~スローガンは「効能首選 影音極緻」

MSIのビンセント・ライ氏

12月15日 開催



 エムエスアイコンピュータージャパン株式会社は15日、都内でプレス向け説明会を開催。この中で、MSI台湾本社でAssistant Vice Presidentを務めるビンセント・ライ氏が2010年の展望について語った。

 通常、こういった説明会では、今後の製品について語られるが、今回ライ氏は、IT業界全体を俯瞰し、2010年がどのような年になるのかを説明した。その内容を一言でまとめると「より高速なネット接続、より多くのコンテンツ、より大きく、より高精細に」ということになる。

世界の回線速度上位10カ国には、東欧の国が目立つ

 より高速なネット接続とは読んで字のごとくで、従来も年々高速化されてきたネット回線がより高速になっていく。ここで1つ興味深いのが、ライ氏が示した資料によると、ネット回線のバンド幅の世界1位は韓国、2位は日本と、このあたりは周知の事実だが、10位以内に入っている他の国を見てみると、東欧諸国が多くを占めている。新興国というとアジアや南米のイメージが強いが、東欧も発展めざましく、インフラも急速に整備されつつあるという。こういった状況を受けMSIでは、これまで広告費用を紙媒体とネット媒体とで半々にしていたが、2010年以降はネット媒体に9割を割く考えだ。

 より多くのコンテンツというのも、文字通りの意味だが、ライ氏は今後、デバイスを作るメーカーよりも、コンテンツを有する企業が強くなっていくとの考えを示した。その例の1つとしてライ氏は電子ブックリーダの現状について説明した。現在、米国ではソニー、Amazon、Barnes & Nobleといった著名なメーカーが大きなシェアを握っている。一方、EU諸国では、馴染みの薄いIREX、Bookeenというメーカーがシェアを持つ。彼らが成功したのは、電子書籍などのコンテンツを豊富に持っているからだという。Kindleは、さほどデザインが良いわけでもなく、最先端の技術を盛り込んでいるわけでもないが売れているのは、ユーザーはデバイスではなく、そこに載るコンテンツしか気にしていないからだ。台湾でもいくつかのハードウェアメーカーが電子ブックリーダを出しているが、誰もコンテンツを持っていないため、不振が続いているという。

液晶TVの画面サイズの予測

 より大きくというのは、サイズと容量を指す。例えばTVは40型前後が売れ線だが、パネル単価の下落により、さらに大型化が進むという。そしてコンテンツがよりリッチになると、それ自体のサイズやそれを再生するデバイス側のストレージ容量も大きくなっていく。

 より高精細にというのは、コンテンツの解像度のことで、YouTubeが先だってフルHDに対応したように、TVやBDなどさまざまなコンテンツにおいてHD化が進む。さらにこの先には、4k2kといったより高精細な規格も待ち受けている。

 ちなみに、YouTubeに関連してライ氏の話で興味深かったのは、今YouTubeは「検索エンジン」として世界で2番目に頻繁に利用されているという事実。例えば、マザーボードのBIOSをフラッシュしたい時、マニュアルにはそのやり方が書かれているが、文字だけでは分かりにくいところもある。そこで、最近では自分の分からないことのやり方を説明してくれるビデオを求めて、YouTubeで検索を行なうようになりつつあるのだという。

 このほか、ライ氏はOSの将来についても言及。Androidは携帯電話向けだが、PC上でもより速く動き将来性がある。moblin.orgは互換性に問題があるため普及は難しい。Chrome OSはシンプルすぎて、パワーユーザーには向かない。Ubuntuは今後一定のシェアを持ち続けるだろうとの見込みを示した。

 MSIでは、こういった予測に基づき「効能首選 影音極緻」というスローガンを打ち立てて、製品の開発に反映させていくという。このスローガンは、「選りすぐりの性能を持つ製品を創り、ユーザーにエンターテイメントライフを満喫できる環境を提供する」という意味で、2010年初頭にもマザーボードなどで、よりハイエンドな製品を発表していく予定だという。

MSIの2010年のスローガン。ちなみに、これを社外に公開するのは今回が初というライ氏とエムエスアイコンピュータージャパン代表取締役の鄭志明氏(左)

(2009年 12月 16日)

[Reported by 若杉 紀彦]