NECエレとルネサス、合併契約を1カ月前倒しで締結

握手するNECエレクトロニクス 山口純史社長(左)とルネサス テクノロジ赤尾泰社長

12月15日 発表



 NECエレクトロニクスとルネサス テクノロジは15日に説明会を開催し、両社が来年(2010年)4月1日に合併する契約を締結したと発表した。

 両社は今年(2009年)9月16日に合併に関する基本契約を締結し、詳細に関する協議を進めてきた。今回の契約締結により、2010年4月1日に事業統合会社「ルネサス エレクトロニクス株式会社(Renesas Electronics Corp.)」が正式に発足することとなった。

 これまで事業統合のプロセスは、当初の日程よりも遅れ気味で進んでいた。2009年4月27日に基本合意書の締結を発表した時点では、基本契約を同年7月末までに締結する予定だった。しかし実際には両社の資産評価に予想よりも時間がかかり、基本契約の締結は9月16日と1カ月半ほど遅れた。ところが合併契約は2010年1月中旬までに締結とされていたのが、1カ月ほど早まった。

 2009年9月16日の基本契約締結で、新会社(ルネサス エレクトロニクス)の骨格は、ぼんやりと見えていた。新会社の社名と会長(NECエレクトロニクス代表取締役社長の山口純史氏が就任予定)、社長(ルネサス テクノロジ代表取締役 取締役社長の赤尾泰氏が就任予定)などが内定していた。

 今回の合併契約締結では、新会社の経営体制がほぼ固まり、代表権を有する取締役(代表取締役)は会長と社長の2名。常勤の取締役は、会長と社長を除くと4名である。NECエレクトロニクスの常勤取締役は3名、ルネサス テクノロジの常勤取締役は11名なので、新会社の常勤取締役が6名というのは事業統合会社として多すぎるとは言えないだろう。なお新会社には非常勤の取締役が5名、選任される予定だ。5名中4名は親会社であるNEC、日立製作所、三菱電機の役員あるいは幹部をつとめている。残り1名は未公表で、ハイテク分野に詳しい有識者と説明された。

新会社「ルネサス エレクトロニクス」の経営体制。常勤取締役6名、非常勤取締役5名で構成される合併前後の増資と、新会社発足時点(増資済み)における親会社の持ち株比率今後の統合スケジュール

 また、事業統合に向けたプロセスが改めて明確になった。ルネサス テクノロジは2010年3月31日までに約717億円の増資を実施し、ルネサス テクノロジの株主は持ち株1株に対して新会社の株式20.5株の新株割り当てを受ける。そして新会社は発足日の2010年4月1日に約1,346億円の第三者割当増資を実行する。その結果、親会社の持ち株比率はNECが33.97%、日立製作所が30.62%、三菱電機が25.05%となる。

 一方でNECエレクトロニクスとルネサス テクノロジは2010年2月に株主総会を開催し、合併の承認を得る。NECエレクトロニクスは株主総会で新役員を選任するとともに、増資を決議する。

 事業統合後の新会社は、マイコン事業、システムLSI事業、個別半導体(アナログおよびパワー)事業を3本柱とする。事業収支では統合初年度(2011年3月期)に営業黒字、統合次年度(2012年3月期)に当期黒字を目指す。

 具体的には統合会社が発足する2010年4月1日から100日以内にプロジェクトを数多く立ち上げ、事業改革を強力かつ速やかに推進する。例えば開発リソースの集中投下、生産拠点の稼働率向上と設備投資抑制、購買規模の拡大によるコスト低減、販売拠点の統合による効率向上、物流ネットワークおよび情報インフラの一本化によるコスト削減、などを挙げていた。

新会社の製品別売り上げ。マイコンとシステムLSI、個別半導体(アナログおよびパワー)で売り上げのほとんどを占める新会社の事業方針と経営目標。統合初年度に営業黒字、次年度に当期黒字を目指す新会社発足後100日以内に、新会社の方針を具体化していく

 NECエレクトロニクスは2009年度上半期(2009年4月~9月期)に364億円の営業赤字を計上した。2009年度通期(2009年4月~2010年3月期)では465億円の営業赤字を見込んでいる。ルネサス テクノロジは2009年度上半期(2009年4月~9月期)に510億円の営業赤字を計上した(売上高は2,835億円、税引き前損失は590億円、当期損失は594億円)。同社は通期の見通しを公表していないが、2009年下半期(2009年10月~2010年3月期)に大幅な営業黒字を計上するとは考えにくく、通期も営業赤字となることは、ほぼ間違いないだろう。

 2009年4月の合併合意時点でNECエレクトロニクスとルネサス テクノロジは、収支を改善して両社ともに収支トントンの状態に持ち込み、事業統合会社をスタートさせるというシナリオを描いていた。しかしそのシナリオは今や、完全に崩壊している。新会社発足の初年度に営業黒字を目指すことになるが、巨額の営業赤字を計上する見通しの2010年3月期から、一気に営業黒字に転換させることには相当な困難が伴うだろう。

 それでも事業統合が、事業再編成を進める最大の機会であることは間違いない。新会社「ルネサス エレクトロニクス」がどのような展開を見せるのか見守りたい。

(2009年 12月 16日)

[Reported by 福田 昭]