NECエレクトロニクス株式会社は28日に記者会見を開催し、2009年度上半期(2009年4月~9月期)の業績と下半期(2009年10月~2010年3月期)の見通しを発表した。同社代表取締役社長の山口純史氏が説明にあたった。
上半期の連結売上高は前年同期比33.9減の2,205億円。そのほとんどを占める半導体の売上高は同33.5%減の2,118億円である。売上高は当初予測(5月11日時点の予測)の2,150億円を上回ったものの営業損益は364億円の赤字で、当初予測の営業赤字250億円を下回った。
売上高が当初予測を上回りながらも営業損益が予測を下回ったのは、最先端製造ライン(300mmウェハライン)の稼働率が予想よりも低かったためだとする。製造ライン(前工程)の稼働率は全社では7割弱だが、300mmウェハラインの稼働率は6割強だとしている。
半導体売上高を主要製品別にみると、SoC(system on a chip)製品が前年同期比35%減の827億円、MCU(マイコン)製品が前年同期比29%減の639億円、個別半導体製品が前年同期比30%減の652億円といずれも大幅減となった。
なおNECエレクトロニクスの製品分類では、SoC製品は150nmプロセスや90nmプロセス、55nmプロセス、40nmプロセスによる高集積LSI(カスタム品や特定用途向け標準品など)、個別半導体製品は成熟したプロセスによるIC(ディスプレイドライバICやミクスドシグナルICなど)とディスクリート(パワーMOS FETや化合物半導体デバイスなど)を意味する。営業損益ではSoCが大幅な赤字、MCUがわずかな赤字、個別半導体が赤字(赤字額そのものは2008年度下半期に比べて半減)という。
上半期の半導体売上高を応用分野別にみると、通信機器が前年同期比14.2%減の280億円、コンピュータおよび周辺機器が同50.1%減の302億円、民生用電子機器が同29.1%減の454億円、自動車および産業機器が同33.9%減の387億円、多目的・多用途ICが同34.9%減の287億円、ディスクリート・光・マイクロ波が同30.3%減の407億円である。
第2四半期(2009年7~9月期)だけでみると売上高は前年同期比29.2%減の1,185億円、半導体の売上高は同28.5%減の1,138億円となった。営業損益は155億円の赤字、純損益は174億円の損失である。前年同期は営業赤字が5億円、純損失が6億円だった。
応用分野別の売半導体上高は通信機器が前年同期比17.4%減の134億円、コンピュータおよび周辺機器が同45.1%減の168億円、民生用電子機器が同29.1%減の226億円、自動車および産業機器が同20.1%減の230億円、多目的・多用途ICが同33.4%減の154億円、ディスクリート・光・マイクロ波が同21.0%減の226億円である。
2009年度(2010年3月期)中間決算の概要 | 四半期ごとの業績推移 |
粗利益率(GP)の推移と製造ライン(前工程)の稼働率推移 | 応用分野別の売上高推移 |
2009年度下半期(2009年10月~2010年3月期)の売上高見通しは2,400億円、半導体の売上高見通しは2,320億円である。当初予測をそれぞれ250億円と230億円、下方修正した。この結果、年間の売上高見通しは当初予測を200億円下回る、4,600億円となる。
営業損益の見通しは当初は250億円の黒字で、上半期の赤字250億円を下半期の同額の黒字で相殺するシナリオだった。しかし300mmウェハラインの稼働率が向上しなかったこととSoC製品の需要減により、このシナリオは大きく崩れた。下半期は黒字どころか、営業損失100億円の赤字予想となった。NECエレクトロニクスはルネサス テクノロジとの経営統合を2010年4月1日(予定)に控えている。統合前に赤字体質をぬぐい去り、黒字体質に転換するという目論みは潰えてしまった。
下半期の主な取り組みは、売上高の拡大と前工程ラインの稼働率向上、前年度比900億円の固定費削減である。MCU製品の受注が好調であることから増産を進めるほか、低い消費電力を武器とする40nm世代の製品などで売り上げを拡大する。また旧世代の前工程ラインを閉鎖し、前工程ラインの生産効率を高める。具体的には、九州と米国ローズビルの6インチ(150mm)ウェハラインをそれぞれ、2010年3月に閉鎖する。
固定費削減では上半期に前年同期比で500億円の固定費を削減した。下半期は上半期に比べて80億円、前年同期に比べて400億円の削減を目指す。
2010年3月期の業績予想 | 2009年度(2010年3月期)下半期の取り組み | 固定費削減の進捗状況 |
NECエレクトロニクスは昨年も、中間決算で年間見通しを下方修正した。今年の5月に開催された決算発表では、2010年3月期における営業黒字達成への決意をにじませていたのだが、中間決算の下方修正であっさりと覆された格好だ。
そもそも上半期は半導体の売上高が当初の予想よりも68億円伸びているのに、そして固定費を500億円も削減しているのに、営業損益は予想を114億円も下回った。そのこと自体が釈然としない。あるいはルネサス テクノロジと統合しない限り、NECエレクトロニクスは赤字体質から抜け出せないままに終わるのだろうか。それではあまりに悲しすぎる。
(2009年 10月 29日)
[Reported by 福田 昭]