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ソフトバンクのPepper、Androidでの開発に対応
~SDKは無償ダウンロード可、7月からAndroid対応版を開発者向けに販売
(2016/5/20 20:21)
ソフトバンクロボティクス株式会社とソフトバンク株式会社は19日、ロボット「Pepper」をGoogleのAndroidに対応させると発表し、本社で記者会見を行なった。Pepper本体でAndroidアプリを実行したり、AndroidアプリとPepperを連携させることが可能になる。また、Google Playストア上にロボアプリが並ぶことになるという。
2016年7月からAndroid対応開発者向けモデルを先行販売する。Androidのプラットフォーム上でPepperの「ロボアプリ」の開発が可能になるSDK(ソフトウエア開発キット)「Pepper SDK for Android Studio」ベータ版の提供も公式ホームページ上で始まった。「Pepper SDK for Android Studio」は無償でダウンロードできる。
Android対応版Pepperは本体価格198,000円。基本プラン、保険パックなど込みで3年分では975,600円となる。一般コンシューマ向けには2016年度内に発売予定。従来機種のアップデート予定は未定。
Androidアプリを直接Pepper本体のタブレットで実行可能に
これまでもAndroid端末からPepperを操作することはできた。だが新モデルからはAndroidアプリを直接Pepper本体で実行できるようになる。なお従来のPepperのアプリケーションSDKである「Choregraphe(コレグラフ)」も引き続き提供される。ロボットとしてのPepper自体の制御は従来通り「NAOqi OS」が司っている。そのNAOqiのAPIを使って、胸部タブレットで実行されているAndroidから、Pepper本体のセンサーやアクチュエータを制御する仕組みだ。胸のタブレットは、これまで機能が制限されていたが、今回バージョンアップされて通常のAndroidタブレットとしても使えるようになった。
「Pepper SDK for Android Studio」は通常の「Android Studio」にプラグインする形で使えるので、従来のAndroidアプリ開発者には取っつきやすいという。ロボットの動きや、ポーズの変更もSDK上で行なうことができる。数百個のアニメーションライブラリも用意される。選んだアニメーションをタイムラン上の確認や編集もできる。動きは実物のPepperがなくても、仮想Pepperで再生して確認可能。これらの機能によってAndroidのソフトウェア開発者がPepperのアプリケーションを開発することが容易になり、開発者の数は一気に100倍になる。
ソフトバンクロボティクス株式会社 代表取締役社長の冨澤文秀氏は、今回のAndroid対応は、世界規模での事業拡大に向けたものだと語った。「PepperのプラットフォームとAndroidのプラットフォーム、2つのプラットフォームが組み合わさって価値を上げることができる」という。なお会見は、Googleによる開発者向けイベント「Google I/O 2016」でのPepperとAndroidに関するセッションに先立つ形で行なわれた。
冨澤氏は「ロボットと共生する社会を実現するために、市場と対話しながら開発を続けていきたい」と語り、「オリンピックの時には世界をあっと驚かせたい」と述べた。
同プロダクト本部 本部長の蓮実一隆氏は、「普通にAndroidアプリがPepperで普通に使えるようになる。爆発的に使い勝手が向上すると思って頂いていい。たくさんの開発者が集まってきて、思いもよらないものを作ってもらえることを期待している」と述べた。
Pepperでテレプレゼンス、Google機械学習ライブラリの利用も
続けて蓮実氏は2つのデモを行なった。Pepperを使ったテレプレゼンスと、手の認識機能を使った「ハンドイリュージョン」というアプリだ。
Pepperを使ったテレプレゼンスは、同日、アスラテック株式会社から発表された「VRcon for Pepper」(ブイアールコン・フォー・ペッパー)を利用したもの。スマートフォンを使った簡易VRヘッドセットである「Google Cardboard」を通して覗くと、Pepperの視界を体験できる。首を動かすとPepperがその動きに追従するので、見た方向が見える。動きの生成には、アスラテックのロボット制御技術「V-Sido」(ブシドー)のノウハウが活かされているという。
なお、会見でのデモでは紹介されなかったが、Pepperの声で会話したり、声でモーションを再生するといったこともできる。アスラテック株式会社では、「VRcon for Pepper」をPepperのアプリ開発会社やシステムインテグレータなどに提供して、遠隔操作アプリを開発してもらうことを狙う。
手の形を認識してそれに合わせた動きをPepperが披露する「ハンドイリュージョン」は、Googleのオープンソース機械学習ライブラリ「TensorFlow」を利用したもの。6種類の手の形を認識して、それに合わせた動きができる。デモでは手の認識と、ちょっとしたシナリオを合わせたアプリが紹介されていた。
音声認識についてだが、従来機のPepperの音声認識にはNuanceが使われている。だがAndoridを経由する時にはGoogle音声認識を使うことになるという。人と会話することが多いPepperだけに、実際の使い勝手にも影響してくると思われる。
Pepper導入企業は1,000社超へ
なお、2015年12月から販売された「Pepper for BIz」の導入企業は1,000社を超えており、Pepper Worldの来場者は7,000名を超えたという。業種ごと、業種のファンクションごとにアプリを作りテストマーケを行なっており、どういう業種のどういうアプリが企業に貢献するのか、具体的にコストダウンできるのかを検討中で、中には大きく業務改善できるものも出てきていると冨澤氏は語った。