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「AlphaGoは機械の勝利ではなく、人類が達成した偉業」

~AlphaGo開発者ハサビス氏が李世ドル氏との対戦で学んだこと

デミス・ハサビス氏(左)と李世ドル氏(右)

 先日行なわれた、Googleが開発した人工知能(AI)「AlphaGo」と李世ドル氏との囲碁対戦は大きな注目を集め、結果AlphaGoが勝利した。このことについて、開発の中心人物であるデミス・ハサビス氏がブログを通じて、2つの重要なことを学んだと語っている。

 1つ目は、今回の対戦が、囲碁以外の問題を解決する上でのAIの潜在能力を示す良い前兆となったこと。AlphaGoは、碁盤を全体的に俯瞰し、人間が“やってはいけない”とされていること、あるいは“考えも及ばない”手を打った。

 ハサビス氏によると、5戦行なわれた試合の第2戦の37手でAlphaGoが見せた手を人間が考えつく確率は1万分の1だという。ただし、李九段が第4戦の78手で打った手も、やはり1万回の1回の見事な打ち手であったと言い、結果その試合は李九段がものにした。

 今回AlphaGoは、囲碁の対戦に用いられたが、その深層学習や教科学習の能力は、気候変動や病理診断など幅広い分野での困難な問題を解決することを目的に開発された汎用AIである。

 囲碁においてAlphaGoが見せた結果からハサビス氏は、人類が他の分野では見ないような解決法をAIが見つけ得るだろうという可能性を見出したという。

 2つ目は、今回の試合が「人間対機械」という視点で見られたが、ハサビス氏にとってAlphaGoは「人間が達成した偉業」であるということ。李世ドル氏とAlphaGoのチームは、試合の中で切磋琢磨し、新たな考え、機会、解決法に辿り着いた。つまり、今回の結果は人間と機械が協調、連携して辿り着いた高みであり、長期的な観点で我々に利益をもたらすだろうとハサビス氏は見ている。

 今後ハサビス氏らは、今回の勝負の結果を分析し、他の分野へと応用する方法を模索する。

(若杉 紀彦)